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ギャ村で最後の羊飼い・ツェリンさんとのこと~ラダック・ツアー2026年9月旅の日記より

7 時間前
読了時間: 5分

9月12日から8泊9日で、インド北部ラダック地方に”懐かしい未来”エコ・カルチャーツアーを、NPOジュレー・ラダックとナマケモノ倶楽部の共催で開催しました(旅の詳細はこちら)。


日本各地、アメリカ、オランダから、辻信一さんを含め11名が参加、ジュレー・ラダック代表、スカルマ・ギュルメットさん案内のもと、グローバル化の波に押されつつあるラダックの今を自分の目で見て、感じて、学び、遊び楽しむ貴重な時間を共にしました。


旅のメンバーたちの協力のもと、今回は訪問地ごとの日記や旅の感想をランダムに連載していきます。



ギャ村で最後の羊飼い・ツェリンさんとのこと

担当:まき


村で最後の羊飼いのツェリンさんが暮らす家の周りには色とりどりの花が咲いていました。春菊の黄色い花が花壇のように家や畑の周りを囲んでいて、美しかったです。

 

ツェリンさんは12歳くらいの頃に羊飼いだった父親を亡くしました。ツェリンさんは結婚もせず、羊飼いの暮らしを受け継ぎました。昨年大病をし、2か月間何もできず、羊やヤギの世話もできなくなりました。子ヤギたちもいましたが、面倒を見れないので、殺さないことを条件に面倒を見てくれる人に譲ったそうです。無料で子ヤギをあげると言っても、欲しくない人もいます。愛情をもってヤギたちの世話をするのは責任が重く大変なことなのだと感じました。

 

ツェリンさんの弟であるスタンジンさんは、「氷河の羊飼い」の映画監督です。ツェリンさんにとってグローバル化は無縁のようでした。コロナ、何それといった感じです。ツェリンさんにとって日常である羊飼いの暮らしは、外の世界を見てきたスタンジンさんにとって、記録しておかなければならない大切なものです。


 

ツェリンさんの弟、有機農家のウルゲンさんからのお話です。緑の革命で化学肥料が入ってきて、がん患者が続出したそうです。Cancer Train といって、がん患者を運ぶ列車まであったほどです。ラダックは人々がそれぞれ谷に住んでいるので、近隣の人の了承を得られれば有機農業がコミュニティでできると語っていました。


ウルゲンさんは2005年から有機農業をしていますが、有機の認証をとるのは大変です。2019、2020年くらいまで、土壌テストなど様々な検査に時間がかかったそうです。普段33種類程の野菜を育てていますが、ツェリンさんの具合が良くなかったときは畑仕事どころではなく、今年は少なめだそうです。


農家にとって、種が一番のお土産です。ウルゲンさんの畑でとれた種を持ってそれぞれの場所に蒔いたり、それぞれのところから持ってきた種をウルゲンさんの畑に蒔いたり。ツェリンさんが病気の時、助けにボランティアの人が来てくれたそうです。


ボランティアの人も最初はワクワクだけど、2~3日すると、なぜ日曜も休みがないのかなど様々な不平不満が出てくるそうです。羊やヤギの世話に休みはありません。今のところ最大11日間ボランティアした人がいるそうです。ウルゲンさんにとって、村の暮らしに興味をもって話を深く聴いてくれる人が来てくれることがとても嬉しいそうです。



 

ウルゲンさんの娘のパドマさんは大学院に進む予定で、普段は町にいますが休みの期間に帰ってきているそうです。私たちがホームステイさせて頂いたときも、ツェリンさんが暮らす家に帰ってきていて、食事の準備を手伝っていました。


パドマさんは、ツェリンさんも親も年をとってきているので、過酷な羊飼い生活は危険なのでやめてほしいと思っているそうです。ギャ村の標高は約4,300m で、私自身は少し歩いただけで息切れがしました。ツェリンさんが羊やヤギたちを連れていく道を歩くのに必死でした。秋の心地よい気候でしたが山は風が冷たく、マフラーを頭にぐるぐる巻いていても寒さのため耳が痛かったです。ほんの数時間外にいただけなのに、私の体力では羊飼いの仕事は到底できないなと感じました。



4,5年後には半農半遊牧の暮らしが大きく変わっているだろうとのことです。羊飼いまだやっているの、頭がおかしいのではないかと言われるそうです。羊飼いよりも容易にお金になる道路工事や他の仕事の選択肢も出てきているからです。遊牧文化がなくなると、地域の羊毛を使った糸つむぎや織物、絨毯も、ヤギミルクもできなくなり、畑も(家畜の糞は畑の良い肥料になり、特に羊やヤギの糞が良質な肥料になる)在り方が変わっていくでしょう。


伝統文化が消滅しようとするまさに崖っぷち、日本も同じような状況にあると思います。これからどうなるのか、誰にもわかりません。わからない中で、自分はどうありたいか、どこに向かって歩むべきか、一人ひとりが立ち止まって考えるときなのだなと感じました。

 

チベット仏教についてです。昔、人々は教えの内容がよくわからなかったそうですが信仰深かったそうです。今はリンポチェなど教えてくれる人がいるため、儀式の意味や理由など、教えを理解している人は多いそうです。一方で、現代の忙しさのゆえに信仰している場合ではない人もいるそうです。チベット仏教のキーワードとして、愛と慈悲が何度も語られました。人はもっと欲しいと欲が尽きません。ラダックに、心は富で満足できない。海はいくら水を入れてもいっぱいにならない。ということわざがあります。持てる人もそうでない人も、全ては心が満たされているかどうかなのです。

 

私たちがギャ村を出発する朝、ツェリンさんが羊やヤギを連れて山に行くところを見届けることができました。ツェリンさんがヤギたちを連れて山の高い所に上り、私たちの方を見てジュレーと手を振ってくださいました。私たちが谷から見ていると、ツェリンさんは羊やヤギとともに空に吸い込まれていったように見えました。




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