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リジェネラティブ(大地再生)とアグロエコロジー マシュピ農園・アレホさんからの報告

エクアドル、マシュピ農園でアレホさん、アグスティーナさん夫妻が手がける「マシュピの森のチョコレート」。カカオが森を育て、森がカカオを含む生物多様性をよみがえらせ、同時に地域のローカルビジネスも元気にしています。地球の反対側から届いたグッド・ニュースに感動し、ナマケモノ倶楽部では「大地再生チョコレート」と愛称をつけ、2017年から日本でも草の根で広めています。


1月26日には、オンラインでアレホさん、アグスティーナさんにリジェネラティブ農とアグロエコロジーへの取り組みを報告してもらうことができました。アレホさんの発言をダイジェストでお送りします。当日の日本語通訳はナマケモノ倶楽部・エクアドル駐在スタッフの和田彩子さんが担当してくれました。(事務局)

 



●アグロエコロジーで森を取り戻す


これはマシュピ農園を始めた直後、2009年の写真です。ほぼ牧草地で奥にちょっとだけ森がある状態です。ぼくたちの前のオーナーはここで酪農を営み、乳牛と食牛を育てていました。たくさんの牛が大地を踏み締めながら歩くので、土はとても硬く、悪い状態でした。


今日の農業は大きく分けると、慣行農業と、これからお話するアグロエコロジーの二つに分けられます。ぼくたちはどう土の状態を改善していこうかと考えたとき、森を取り戻すことにつながるアグロエコロジーでやろうと思いました。



マシュピ農園がある場所の特異性についても話しておきたいと思います。上の地図で黄色のエクアドル北部からコロンビアまでのびている緑色のエリアが「チョコアンディーノ(チョコ雲霧林)」です。バイオリージョン(生命地域)とも呼ばれ、ここにしかいない動植物がたくさん生息している特別なエリアです。しかし現在、近代農業や産業により種の存続の危機に直面している「生物多様性ホットスポット」に指定されています。

これは単一栽培とフードフォレスト(食べものを生みだす森)の違いを示したグラフです。縦軸が生産性、横軸が時間をあらわしています。化学合成肥料などを使う単一栽培は、最初はすごく生産性はいいんですが、だんだん土の状態が悪くなり、生産性が落ちていきます。一方、フードフォーレストは収量が得られるまで時間がかかりますが、大地はその分、水をしっかり貯えることができます。また、その地の小気候も安定してくるので、ある時期を境にゆっくりと生産性が上がり、かつ持続していくことができます。

アグロエコロジーが大規模農業と異なる点は、機械に頼らず、いろいろな人たちを巻き込んでいくことです。写真のように若い人たちもどんどん関わってきています。アグロエコロジーは、森や自然を再生するだけではなく、人と人の関係性もつなぎ直していく活動なんです。私たちはこの点をとても大事に思っています。



●森の生産システムを観察する


カカオにはたくさんの種類があります。大きく分けるとトリニタリオ種、クリオロ種、フォラステロ種の3種、そして「第四のカカオ」と呼ばれる稀少種が、マシュピ農園で育てている「ナシオナル種(アリバ種)」というエクアドル原産の種です。カカオ・ナシオナルの特徴は外皮が黄色く、香り高く、味も様々な要素を含んでいることです。


歴史をひもとくと、エクアドルでは5000年前からカカオが栽培されていました。品質も良く交易品として流通していたのですが、密植が原因で病害が広がり、フードフォレストの森ごと伐採されてしまいました。現在では、カカオ・ナシオナル種が多品目栽培されていた森の80 %が開墾され、CNN 51というカカオのハイブリッド種やパーム椰子の単一栽培、また酪農のための牧場に変わってしまいました。


私たちがアグロエコロジーやリジェネラティブ農業を選ぶ理由、それは自然の再生もそうですが、遺伝子的な財産としてエクアドル固有のカカオを守りたいという強い思いがあるからです。


アグロエコロジーやリジェネラティブ農で大事な視点は、カカオが植物や動物、微生物を含むいろんな多様性に支えられて育っていること、また、他の植物たちと同様、カカオも森の生産システムの一つになっていることです。そのビジョンのもとにカカオや他の植物を育てています。

背の高い樹種を植えるときには、どのくらいの光が森に届くのかにも注意を払います。この森にはチョコレートにいろんなフレーバーを与えてくれる果樹や植物もあり、とても大事な役割を果たしてくれています。


慣行農業は大きな機材や農薬で植物たちの働きを代用しようとしますが、私たちのアグロエコロジーはその真逆です。植物たちがどうやったらそれぞれ相互に作用し合い、うまくまとまっていくのかをいつも念頭に置き、森に学びながら、いろんなことを試しています。

この写真はマシュピ農園を空から撮影したものです。カカオ以外にもバナナや柑橘類、ヤシの木が見えますね。木々が葉を広げ、適度な日陰をつくっています。たくさんの種類の植物を育てることによって、森のエコシステムが持続可能になります。


マシュピ農園では1ヘクタール当たり約500本のカカオと1500本の他の樹木が植わっています。その多様性によって光が適度に入り、大地が水を蓄え、また、受粉を促してくれるハチや鳥たちがフンを地面に落とし、土中では病害を防いでくれるいろんなバクテリアが活動してくれます。


私たちが大切にしていることはエコシステムにおけるバランスです。どうしたらシステムがより持続可能になるか、どうしたら植物や木々が栄養をたくさん得ることができるかを大事に作業しています。



●すべてが互いに助けあっている


森林農業においては、植物だけではなく森に暮らす動物たちもとても大事です。ぼくは森林農業を始めた頃から鳥の調査を通じて、生態系の質をはかっています。なぜ鳥を指標にしているかというと、色が綺麗だし、歌うので、目立つから見つけやすいのです。

上のグラフでは2009年に54種類とありますが、実際には町でも見られる鳥が多かったです。2014年には156種類。このころには大きなくちばしをもったオニオオハシやオウム、ハチドリなどもたくさん見られるようになりました。そして、2019年には201種類! これはぼくたちにとってすごく嬉しい結果でした。自分たちがやってきたアグロエコロジーがうまく機能しているんだ、生態系が豊かになっていくシステムを自分たちは作れているんだと実感できました。


鳥たちの7割は虫を食べる種の鳥類で、森にとって虫による被害を減らしてくれる大事な役割を担っています。高いところにいる鳥、中低木を好む鳥とかいろんな鳥がいます。鳥たちはお腹がいっぱいな状態では飛べないので、飛ぶ前にフンを落とします。野生の鳥たちのフンには森の豊かな滋養が含まれているので、大地にとっては最高の肥料となり、カカオもその中で育っていきます。




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