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アカアマ・リビングファクトリー~2026.02北部タイツアーレポート・5日目

ナマケモノ俱楽部では、「リジェネラティブ&ローカル・ツアーin 北部タイ」で、2026年2月18日~23日に、カレン民族のコミュニティを訪れました。自給的な暮らしを営む人びとの日常を体験させていただきながら、アグロフォレストリーについて、循環型伝統農業について、先住民族の若い世代がとりくむローカルビジネスについて、五感で学ぶフィールドワークの旅です。


頭だけでなく、身体、心を「今、ここ」に置き、現地の自然や人びとと共に時間を過ごしながら得た、かけがえのない学び遊びの時間を、ツアーに参加したメンバーたちが分担して報告レポートにまとめました。ハイライトを連載形式で紹介していきます。


Day5・その1:アカアマ・リビングファクトリー

しばやす(柴田靖子)


大きなシティーホテルにアパレルみたいにキメキメの内装のAGRI CHAPTER: ART FARMERでのおしゃれなディナー。ホテルの朝食では目を離した好きに鳩にトーストを奪われるし、昨夕、チェンマイ市内に降りてきたとたん、いきなり現実に引き戻されてしまったようで少し寂しい(だが気持ちとは裏腹に朝から久しぶりに良いお通じがあり身体のほうはすこぶる調子がいい)。

 

アカアマって覚えのある名前だけれど「生活工房」とあるからクラフト関係かな?…などと旅仲間と話をしていたのだけど、前日に馬場さんが送ってくださったLINEで「明日注文するものの事前アンケート」はコーヒーほか飲みものだったし…。

 

アヒルの行列と霊木という趣きのウエルカムツリー(でもきっとこの木もきっと年下…40歳くらいなのでしょう?)に迎えられた、木造りの美しい教会のような建物の中にカフェを認め「あ!やっぱりあのアカアマだ!」と分かった。

 

一昨年、東京でのSCAJに出展していたブースに立ち寄ったとき、たくさんの生産者の顔が描かれた小さなパッケージが並んでいて、それが「描かれている顔の生産者のごくわずかなコーヒー豆だけが入っている商品」だと教えてもらい、素敵なアイデアに笑い「究極のシングルオリジンだ!」と感銘を受けたのだった。

 

ショップでまず目を引いたのは、冷蔵庫の中の瓶に入った水出しコーヒー(ペットボトル出現前に飲料に主流だった、おそらくは透明なリユース瓶。白抜きでアカアマコーヒーのロゴが入っていてかっこいい。それ以前にアイデア自体がスマート)。それから、ああ、生産者のお顔が描かれているパッケージもある。韓流スターのような爽やかな青年のものもある。


 

2階に上がって“ストロングなエスプレッソ“をぺろぺろしていると、旅仲間(とにかく旅仲“たちがどこかから選抜されてここにいるのではないかというくらい、みなさん強烈に面白いかたばかりで)が「コーヒーの花茶」と書かれた小瓶を仕入れてきていて「アッ!ティプヌーさんが振る舞ってくれて、生まれて初めて飲んだ美味しいやつだッ。商品化してるんだ!」と、慌てて買いに1階に戻る。

 

やがてみな席につき、辻さんの(進行兼解説兼)通訳で「いかにしてアカアマコーヒーはこうなったか」代表のアユさんのお話をきく。

 

最初にアユさんが、オシさんとは、中高生時代、寮生として同じ学校に通った仲間だと聞いたとき「レイジーマン物語(テキスト)」の中でスウェさんが紹介していた子どもの学校の試験問題「森林破壊の原因は何か?(正解は「部族」)」のことを思い出して、また、昔から今、自分の身近なところの語りから世界のあちこちの文字面しか知らないものまで含めて、残酷で現代の人権感覚にもとる、いわゆる同化教育の事例が次々に心に浮かんできて胃がギュッとなった。

 

「SNSもない時代だから一度は離れ離れになったけれどまたこうして一緒になにかできる縁があることがとても嬉しい」とにこやかに話されたけれど、この後、お話の中で「教育」という言葉が出るたびに「わたしがいう教育とは、学校制度の教育だけのことを言っているのではなく、生まれ育ったコミュニティからの教えとかそういうものが集まったもののことです」と、念を押すように繰り返していらした。

 

「先住民…自分の仲間をどうやって助けるか、というのが自分の人生の一貫したテーマだと思います」というところからアカアマストーリーが始まった。

 

アユさんは学校を卒業すると村を離れ「チャイルド・ドリーム」という先住民を対象にした福祉団体で働いた。おそらくはソーシャルワーカーとして、そこで「とにかくすべての人の異なる思いをもらさず聞く」ということを何百回もくり返すうち、それがやがて自分の習慣(くせ?)になっていった、という。

 

やがて、村がとても恋しくて帰りたくなったとき、アユさんは「自分が村に帰る理由は?」「自分が村に帰って何が出来る?」という二つの問いを立てた。前者は「村を出たからだ」とすぐ答えられた。後者は「自分が外で見聞きしてきたことを村のために活かすことだ」というのは、問いを立てる以前に分かっていたことだったが、具体的に「どうやって?」という答えが出ない。出ないまま、とにかく帰って答えを見つけようということにした。

 

1年のリサーチを経て、分かったことがあった。そのころの親は、子どもが村を出て行こうとするのを止めなかったが、心の奥底ではそばで暮らしたいと思わない人はいなかった。ただ「より良い教育、より良い経済、そして差別されず平等に扱ってもらえるような人になってほしい」「そのためには外に出してそういうふうに育ってもらう」というしか方法がなかったのだ。

 

そう分かったとき、二番目の問いの「具体的にどうやって?」に答えが出た。コミュニティの、いろんな人たち、世代の違う人たちの異なる声をもらさず聞く。それが「コミュニティの夢」をかたちづくる。

 

そして「アカアマ」というフレームワークを作った。アカは自分たちのルーツ。アマは母(自然・大地はじめすべてのものの母なるものという意味)。この二つが融合していくということを考えた。とても時間がかかることだが、焦らずにすべてを汲みながら、コミュニティを再創造するプロジェクト。

 

年配の人たちのニーズは文化的な活動を一緒にやってほしいとか、とにかく若者たちと一緒にいること。若い人たちのニーズは教えられるだけではなく、自分たちをどう育てるか、必要な勉強とか。あとはトレンドなど外からの刺激を持ち込むこと。

 

あとは持っているものと持っていないもの(問題)のリストアップ。ローテーション農業はじめ、飢えないため、生きるための知恵はものすごい蓄積を持っている。いっぽうで直面している貧困をどうしたらいいのか術を持っていない。


ここで「コーヒー」が浮かび上がってきた。「コーヒー」を考えたとき、「貧困」・「無知であること」、そしてその二つの結果としての「環境」という三つの領域がみえた。たとえば、コーンやジンジャーなど錬金作物をどんどんやって土をだめにしてしまうという悪循環とか。

 

また、かつてのロイヤルプロジェクトや政府の高地農業プログラムなど「すでにあった」コーヒーは巨大企業のものでお金にならない。これをコミュニティに取り戻してくれば、全て好転していくのではないかということが見えた。…

 

インタビュー風景
インタビュー風景

なんという合理的で淀みないスキのない思考だろう!と聞いている私は、痛快な思いで膝を打つばかり。これほど完璧な理由は、これがアユさんか誰か個人の思考回路やそれに賛成反対多数決で選抜した、というようなものでなく、無数の異なる声を、生で個がたったまま慎重に丁寧に漏らさず集めた結果の「コミュニティの思考」だからなのだと思う。つくづく自分が、こういう「本当は可能だけれど不可能や奇跡だと思いこまされていること」をすっ飛ばした世界に生きてきたものだなあ、とも感じる。

 

さて、このときからアユさんたちアカアマチームのコーヒーについての猛勉強が始まったが、じつはこのときアユさんはコーヒーを飲んだことがなかったという。

 

「コーヒーが好きだったからではありません。コーヒーをやりたかったわけではない。コミュニティがコーヒーを選んだのです」。「教育」という言葉の定義と同じくらい、アユさんは、このことについて何度も念を押されていたように思う。

 

ちなみに「コーヒーをやりたかったわけではない」というのは、わたしもここ数年ヘンテコなコーヒー活動をやる中でよく口をついてくるなじみのある言葉なので、畏れながら出るたびに少しほくそ笑む。

 

1階に降りて、立派な焙煎器の説明を受けた。以前は焙煎していたが、もう早稲田のお店に焙煎器があるので生豆で輸出しているとのこと。そう、神楽坂と早稲田に出店しているのだ。ちっとも知らなかった。チェンマイの次、初めての海外出店が東京だったとのこと。

 

それぞれ生産者のお名前が書かれたペール缶に保管されている収穫・精製された生豆を前に「前払いにしろ、投資にしろ、とにかく生産者に借り入れ利子払いの負担が少ないように支援する」という説明とともに「価格を決めるのは生産者です」というアユさんの晴れやかで自信に満ちた様子に、胸をすく思いがした。

 

昼食に寄ったレストランは、まるでディズニーリゾートにあるような建物。テーブルやランチプレートはお花でセンスよく飾られていて、美味しくて素敵。でも、またしても「これじゃもう目黒のナイスなお店でオフ会しているみたいじゃないか…」と、寂しさが込み上げてきてしかたがなかった(直後、中座したトイレから席に戻る道に迷い、まあ、旅人気分に引き戻されたのだが)。もうすぐ、旅は終わりだ。

 

前列左端はアユさんの奥様ジェニーさん
前列左端はアユさんの奥様ジェニーさん

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