カレンなシャツ、私のシャツ~~2026.02北部タイツアー、テーマ別日記 中川ゆか&よしき
ナマケモノ俱楽部では、「リジェネラティブ&ローカル・ツアーin 北部タイ」で、2026年2月18日~23日に、カレン民族のコミュニティを訪れました。自給的な暮らしを営む人びとの日常を体験させていただきながら、アグロフォレストリーについて、循環型伝統農業について、先住民族の若い世代がとりくむローカルビジネスについて、五感で学ぶフィールドワークの旅です。
頭だけでなく、身体、心を「今、ここ」に置き、現地の自然や人びとと共に時間を過ごしながら得た、かけがえのない学び遊びの時間を、ツアーに参加したメンバーたちが分担して報告レポートにまとめました。連載形式で紹介していきます。
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カレンなシャツ、私のシャツ
中川ゆか&よしき
みなさんこんにちは。埼玉で暮らすナマケモノ(会員)の中川ゆかとナマコ(子ども)のよしきです。
私とよしきは今年2月、親子でタイの山岳民族カレン族の村にホームステイしました。自然とともにある暮らしと仕事を体感した旅でした。その体験を「シャツ」という身近な服を通して振り返ってみたいと思います。

旅のきっかけーアジアの叡知に触れたい
タイへの旅を決めたのは、布作家の早川ユミさんの服作りの本を読んだことがきっかけでした。早川さんは小さい子どもを連れてアジアを旅し、山岳民族の布を集め、服の作り方を教わったそうです。
現代の日本は、食も暮らしも教育も仕事もどんどん西洋化しています。戦後の長い時間を「西洋への憧れ」で走ってきたとも言えます。でも、アジアにはアジアの良さがあり、受け継がれてきた叡知があります。どこか懐かしく、肌なじみの良いそれに触れたいし、子どもにも感じてほしいと思いました。
早川さんの服作りは、型紙を使わず、ざくざく布を切り、ちくちく縫うという、工作のように自由な方法。有機的にゆらぐ線を愛そう、楽しもうというおおらかな精神があります。
私は当時、前職に行き詰まりを感じていて、「お金がなくても生きていく方法はないか」、「服を買わずに自分で作れないか」と模索していた時期でした。きっちりした型紙が苦手だった私にとって、「工作のように自由でいい」という考え方は目からウロコでした。これなら自分の服を自分で作れるかもしれない。そんな希望が生まれました。
アジアの服の魅力―自分を表す、布を無駄にしないデザイン
世界中どこでも、工場で作られた服を買うことが当たり前になりましたが、アジアには、自分たちで作った服を着る文化が残っている地域もあります。
ブータンの村を訪れるドキュメンタリー『タシデレ! 祈りはブータンの空に』では、ブータンの人びとが日常的に民族衣装を着る様子が映し出されています。登場するブータンの男性が言いました。「僕がTシャツとジーンズでアメリカにいたら、どの国の人かわからないでしょう。」
たしかにそのとおりです。便利なTシャツは、時にその人のルーツを見えにくくしてしまいます。服は着やすさだけではなく、自分の背景を表すものでもある。そのことに気づいた瞬間でした。
モン族、アカ族、リス族、カレン族。タイの山岳民族では、民族ごとに布の織り模様や服の作り方が違います。だから、山の中で遠くからみても、着ている服でどの民族なのかわかるのだとか。カレン族の着る「カレンシャツ」は、幅30センチくらいの布を切らずにそのまま縫い合わせて作ります。
布を無駄にしない、布の形を生かすデザイン。自分たちで種から育て、紡ぎ、織った布を大切に使う文化が息づいています。
ドイチャン・パぺ村でのホームステイ
タイの旅の1日目、カレン族の暮らすドイチャン・パぺ村を訪れました。木でできた高床式住居が並び、夜は満天の星が輝く美しい村です。

ドイチャン・パぺ村の写真です。やかんを囲んで丸くなっている犬たちがかわいいですね。手前のカレン族の男の子が着ているのがカレンシャツです。それぞれの家庭には織り機があり、家で女性たちが布を織り、服に仕立てるそうです。
村では、子どもも大人もカレンシャツを着ています。チェンマイの都市部では差別を受けることもある山岳民族の人びとが、日常で民族衣装を着ることは、「自分たちを誇りに思う」という強い意志の表れでもあります。
よしきがホームステイ先の家で休んでいると、「寒いんじゃない?これを着て」と男の子のお下がりのカレンシャツをもらいました。伝統的な手織りの服。自然と調和した文化の美しさと手作りのあたたかさを感じる、とても嬉しいプレゼントでした。
藍染工房での服づくり
旅の4日目、藍染工房を訪れました。畑で育てた綿を糸にして、藍で染め、織り機で布にする。気の遠くなるような作業ですが、工房をつくったアティさんは楽しそうに布を織っていきます。アティさんの生まれ育った村は、水が不足していたそうです。だから、水が豊かなこの地域では不自由を感じないそう。「水があれば何でもできる」と朗らかに笑っていました。
服作りが、野菜づくりや料理のように身近にある暮らし。たしかに、服作りに使う綿も藍も、土と種と水があれば育ちます。服を工場だけのものにせず、地域の土で種から育てる。自分で紡ぎ、織り、仕立てる。土や風、雨の記憶を持った服を作り、自分や大切な人が着ること。服ってこんなふうに作り、身にまとうことができるんだと思うと、すごく安心で、あたたかくて、豊かだと感じました。

日本に帰って―カレンシャツを着るということ
日本に帰国後、よしきは、もらったカレンシャツをなかなか着てくれません。保育園の友達はみんなTシャツだから、違う服だと気になるようです。幼児でも周りの雰囲気をよく見ています。
早川ユミさんの本を見て、カレンシャツ風の肌着や、子どもサイズの貫頭衣、モンペ風のズボンも手作りしました。よしきは布選びや布へのお絵描きは楽しんでくれるのに、出来上がった服をなかなか着てくれません。せっかく手をかけて作ったんだからもっと着てほしい!……とはいえ私も自分の手作りの服はタンクトップ風の肌着くらいしか着ていないので、あまり子どもにばかり理想を押し付けられませんね。
そんな中、ようやくよしきが日本でカレンシャツを着る日が来ました。2月のタイツアーで訪問したカレン族が育てたコーヒー豆を使うTOKIコーヒーというカフェを営むTOKIさんが、7月に日本に来ました。旅のメンバーとともにTOKIさんと過ごす日は、よしきも久しぶりにカレンシャツを着てくれました。前日にカフェスローで開かれたTOKIさんのコーヒーに関するトークの夜、TOKIさんたちがカレンシャツを着ている写真を見せたからです。そして、雷門前で待ち合わせたとき、Tシャツ姿だったTOKIさんはよしきのカレンシャツを見ると、さっと自分の赤いカレンシャツを取り出して着てくれました。
浅草の街でカレン族のペアルック。TOKIさんの赤いシャツが浅草の赤に映えて、カレンの文化の美しさやあたたかさを、日本の江戸の風景の中で感じられる楽しい時間でした。

浅草神社の夏詣の雰囲気を楽しむTOKIさんとよしき
伝統の服、手作りの服をもっと日常に
自分を表し、日常に豊かさをくれる伝統の服や手作りの服。でも、気後れしてしまってなかなか着られないこともあります。伝統的な服や手作りの服を日常で楽しむコツは3つあると思います。
1:「着ていいよ」という場を作る。
パーティーなどの集まりを「民族衣装歓迎」とすると、気軽に着られます。花見会や月見会など、季節に合わせたピクニックも伝統衣装で過ごすと、地球のリズムを感じるよい時間となりそうです。浴衣や着物、旅先で買った民族衣装など、どんどん楽しみたいですね。
2:下着や部屋着にする。
人に見えないところから取り入れるとハードルが下がります。
3:旅先の着替えに使う。
いつもと違う場所では、いつもと違うことに挑戦しやすいです。普段と違うおしゃれを楽しみましょう。
服を手作りするいいことは、できた服を勲章のように着ることができることです。手作りの服は袖を通すたび、「私が作った服だ。自分で作れたんだ」と達成感を味わえます。一針一針の縫い目に、かけた手間と時間の愛おしさを感じます。

左がもらった手織りのカレンシャツ。右は、鉄道好きなよしきのために縫った鉄道プリントガーゼのカレンシャツ風肌着。右下は、早川ユミさんの服づくりの本です。色んな布の端切れがかわいい表紙です。
スローに手縫いされた服、スローに手織りされた服。スローな服には、人の思い、暮らし、文化が詰まっています。伝統の服も、手作りの服も、もっと自由に、もっとゆっくり、楽しんでいきたいですね。





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