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小規模だからこそ信頼と顔の見える関係が続くー北部タイ、カレン民族のスウェさんとレイジーマンコーヒーの森を歩く

ーーコミュニティと生態系の再生に取り組む人びとに出会い、 その暮らしや文化を体験しよう。この旅を通じて、自分の中に眠っていた可能性を再発見し、世界を見る新しい視点を見出し、これからの生き方に活かしていこう。ナマケモノ俱楽部ーー


2025年2月中旬、4泊5日の「リジェネラティブ&ローカル・ツアー in 北部タイ~ 森の民が紡ぎ出す“懐かしい未来”を体験する旅」を実施しました(旅程はこちら)。北は青森から南は神戸と日本全国から職種も年齢(20代~70代)、そしてツアー参加の目的も人それぞれの19名が集いました。濃厚な旅から日本に戻って4カ月。参加者から募った編集チームの尽力により報告集が完成しました。インタビューを中心に「ナマケモノしんぶん」で旅の記録と感想をシェアしていきます。

森歩きの途中から「レイジーマン・テラス」を望む
森歩きの途中から「レイジーマン・テラス」を望む
レイジーマン・テラス(2Fはゲストハウス、1Fはカフェ/ミーティングスペース)
レイジーマン・テラス(2Fはゲストハウス、1Fはカフェ/ミーティングスペース)

ノンタオ村の朝


念願のノンタオ村滞在で迎えた朝。私と同世代でもあるスウェさん(カレン族、レイジーマングループのリーダー)たちがDIYでしつらえてきた「レイジーマン・テラス(作業場、研修所、ゲストハウスのような機能があります)」にて、鳥の声で目覚めました。透き通る空気に柔らかな風、木々の揺らめきの中、鳥が行きかい、牛が草を食む様子、すべてが美しく不思議と懐かしさを覚える場所にようやく来たんだなと実感しました。


すぐにスウェさんとご家族が自宅から来てくださり、朝食の準備と、笑顔で森の香りに満ちるコーヒーを淹れてくれました。まさに原風景の里山を眺めながらの朝ごはんは慈愛に満ちる安らぐ味でした。同部屋の参加者ヒロ君ともゆっくりとした分かち合いの時間に(ヒロ君は2泊とも半外のスペースで就寝した強者です)。


スウェさんは、自宅に泊まったゲストのために早朝コーヒーを淹れてからレイジーマン・テラスに泊まる私たちのお世話に来てくれたとのこと。その後すぐにスウェさんの仲間たちが家を建てる作業を手際よく、トンカントンカンと始める様子。レイジーマンは実は働き者だと感心しました。


レイジーマン・テラスは、村の中心部からゆっくり歩いて15分ほど、里山へと続く場所にあります。段々畑と谷に広がる畑は一期作で、休耕期に入っていました。牛を放してあり、あちこちに牛の糞がありました。


多機能的なレイジーマン・テラスの建物には焙煎機や豆を天日乾燥させるビニールハウス、さらには建設中の建物もあります。ここを織物や染色、料理のワークショップができる場にしていきたいと、スウェさんは話してくれました。


アグロフォレストリー(森林農業)の森歩き

ジョクさん(中央の青いシャツ男性)、スウェさん(右)の案内で森へ
ジョクさん(中央の青いシャツ男性)、スウェさん(右)の案内で森へ

いよいよアグロフォレストリーの森に入っていきます。スウェさんと、この森の森林農法を長年手がけているジョクさん(68歳)がガイドしてくれました。


ノンタオ村周辺では、かつては、他のカレン民族と同様、焼き畑をしながら作物を育てる「ローテーション・ファーミング」(7年周期で焼く場所、作物を育てる場所をローテーションしていく)が伝統的に行われてきました。焼き畑は植物を焼き尽くすのではなく、刺激を与え、生態系の中のエネルギーの対流を促したり、巡りをよくするような目的で行われているそうです(麦踏みにも似ている)。チェンマイに近いノンタオでは、60年ほど前にその伝統は失われてしまい、今は「新しいやり方」と彼らが呼ぶ、水田と畑がメインです。(里山での陸稲栽培が「古い=伝統的なやり方」)


レイジーマン・テラスから山道を上りはじめ、どんどん森が深くなりました。上の方にも畑が広がっています。その畑のエリアに入ると一番初めにコーヒーの木々が目に飛び込んで来ました。高い木の下にコーヒーの木があります。よく見るとまだ赤い実がついていました。収穫は大体終わったそうですが、まだ摘まれてない実もあり、みなで収穫体験をさせてもらいました。


森林農法の現場は斜面が大半で、足場はあまりよくありません。そのため手作業が基本であり、収穫もゆっくり丁寧にしていきます。実際に体験してみて、効率は良いとは言えず、かなりの重労働だと思いました。ただその作業の時間は、身体全体でやさしく森を感じられ、生き返るようでした。赤く熟したコーヒーの実はおいしく、特に少し黒ずんだ方が甘くて、中の種は当たり前ですが、コーヒー豆の形でした。

 

また、コーヒーの木の回りには、バナナの木をはじめ、低木から高木の様々な木が混植され(コーヒーは低木層に)、豊かな森が形成されています。こうした作業の営みは村人同士、結い的に協力し合い、助け合っているとのこと。これは森林農法に限らず、生活全体の在り方のようです。

(下は短い動画です、画面をクリックしてください)

コーヒーの収穫体験をする参加者たち

スウェさんのお話


コーヒーにはブルボン種やアラビカ種がありますが、ここではアラビカ種を育てています。5月には白い花が咲きます。その時期の1、2週間は本当にいい香りがします。ハリナシミツバチが受粉を促し、クモが害虫を防いでくれます。高木の間の光を取ろうとしてコーヒーの木は上へ上へと伸びようとします。コーヒーの木は15年で2メートルまで成長します。20年ぐらいで伐採し、更新していきます。


平地で育てたコーヒーの実は、短期間に一斉に収穫をしなければなりません。しかし、森の中では木によって日照条件が違います。この森では収穫作業の7~8割が終わっていますが、残された実の成熟具合を見極めながら、さらに収穫していきます。収穫時期がずれることによって、少人数でも長期間にわたって丁寧な収穫ができるのです。


単一栽培で育てるコーヒーは多くのストレスを抱えています。1日中カンカン照りの太陽の下に晒され続けたコーヒーの実は、それだけ早く成長しますが、過剰なストレスによって味も不味くなってしまいます。私たちのコーヒーは、山の斜面の木陰で育てるため、少量の日光と土からの多量の栄養分によって、1つひとつの豆からしっかり味がして、美味しくなります。コーヒーの実も赤くて大きく、元気そう。


かつてタイ政府が、イギリスの商人たちに伐採権を与えたことで、森林がものすごいスピードで破壊されました。それに対して父(ジョニさん)たちの世代が森を守らなくてはと農民組織をつくり、立ち上がりました。この30年間、そのことで私たちカレン民族はタイ政府と闘い続けています。


タイ政府は私たちを少数民族、山岳民族と呼びますが、先住民族とは認めていません。この森もカレン民族の土地として認められていません。法律上は国の土地です。


タイ政府は「そこには誰も住んでいない」と言います。世界の多くの環境保護派は「森だけを守れ」と言います。しかし、このグレーゾーンの森は、伝統的な暮らしの営みによって、私たちが守ってきたのです。

 コーヒーの実を摘み終わり、みんなで急な斜面での記念撮影
 コーヒーの実を摘み終わり、みんなで急な斜面での記念撮影

コーヒー豆の乾燥・焙煎プロセスを見学する


ジョクさんの息子さんが建てたログハウスでホストファミリーお手製のお弁当(ノープラスチック!バナナの皮でごはんやおかずを包み、竹ひもで縛ってくれました)を食べた後、ちょうどぐるっと一周する形でレイジーマン・テラスに戻ってきました。

 

スウェさんからコーヒー豆の乾燥の仕方や焙煎の様子を見せてもらいました。コーヒーの実は、ビニールハウスの中で乾燥させていました。レイジーマンコーヒーの乾燥方法は大きく3種類でした。


 

〈乾燥方法〉

①  ナチュラル(天日式)

ナチュラルプロセスの実(色付きの実)。

コーヒーの実をそのまま1ヶ月乾燥させる。

2~3時間ごとにかき混ぜるなど、大変手間がかかる。


②  ウォーター(水洗式)

ウェットプロセスの実(白色の実)。

奥の白いコーヒー豆は、果肉と外皮を取り除き水に入れて発酵させてから乾燥させている。


③  バンブープロセス(竹の筒に入れて発酵させる)

果肉だけを取り除いて乾燥させるハニープロセスに近いような方法。

 

発酵の匂いがただようハウスの中の干し台(村内に4か所こうした場所があるそうです)に並べられたコーヒーの実。真っ赤な実からやや黒ずんだ実が一面に干されていました。そして見慣れた形の生豆の白の美しさは圧巻でした。

 

〈焙煎方法〉

煎り方で味が変わります。浅煎り、中煎り、深煎りとあり、浅煎りは酸味が引き立ち、深煎りは苦みが引き立ち、よく煎るほどカフェインの量は減っていきます。


ノンタオ村の今年はコーヒー豆が豊作だそうです。その収穫量は4.5トンとのこと。これが多いのか少ないのかちょうど良いかは、人それぞれの感じ方です。その在り方は、スローにスモールにシンプルだなあと思いました。その後、スウェさんが手際よく焙煎をしてくれる様子も見せてくれました。「Lazyman Coffee」のクールなロゴが刻印された3キロの焙煎釜(自分も欲しい調度よいサイズ)は最新の機械でした。

 

栽培、乾燥、焙煎、抽出まで全部やっているスウェさんがとてもまぶしくカッコよく、しかもそれをみんなの幸せのためにやっていることに尊敬の念があふれます。それを伝えると「自分はコーヒー屋じゃないよ、ファーマーなんだ」という言葉が返ってきたことがとても印象的でした。言い換えれば、自分は専門家ではなく百姓なんだという感覚に誇りを感じます。


 <コーヒー生産者の組織化>

スウェさんは、自分が暮らすノンタオ村以外、ドイ・インタノン山の周りに暮らす3つの郡にわたるコーヒー農家からも、農薬を使わないコーヒーを集めて「レイジーマンコーヒー」ブランドとして出荷しています。乾燥豆の状態で1つの村で1000キロから3000キロ生産できるようになりました。小規模ではありますが、それでも貴重な現金収入となり、若い世代の村での仕事づくりにつながっています。


以下はスウェさんのお話から。

「レイジーマンコーヒーに参画する家族数が多いので、まとめるのも大変です。ある家族はほんのちょっとのコーヒーしか作れない。それでいいんです。それぞれの家を訪ねて、コーヒー豆や暮らしの状況を直接見て、なるべくフェアなお金を払うようにしています。


組織化をして11、12年になりますが、「いいクオリティのコーヒーを作ったら、必ずそれに相応しい対価をもらえる」という信頼関係ができ、今はそれぞれの農家がコーヒーの品質向上に努力するようになりました。昨日もお話しましたが、コーヒー「だけ」を作らないよう、お金に頼りすぎない暮らし、遺伝子組み換え農業に加担しないことの意義も伝えています。


小規模であることが大事です。規模を拡大しようとするから問題が起きる。小規模だからこそ信頼が続き顔の見える関係が続きます」

レイジーマンコーヒーをレイジーマン・テラスで淹れる


森でのコーヒー栽培から乾燥、焙煎、パッケージまでのプロセスを聞き、日本へのお土産用コーヒーの注文もし終わったところで、レイジーマンコーヒータイム。なぜか、コーヒーを生業としている三休さん(@schole_coffee)と自分(@oichomanstyle) が淹れることに。


スウェさん焙煎のレイジーマンコーヒーは、植物としての果実感があふれ、やさしく香ばしい香りを引き出す浅め焙煎。美味しく淹れられたかは分かりませんが、コーヒー屋冥利につきる嬉しいひと時でした。(OICHO)

スウェさんが焙煎した豆をハンドドリップするOICHOさん
スウェさんが焙煎した豆をハンドドリップするOICHOさん

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