ナマケモノたちの糸島遠足ー水源の森とローカリゼーション運動の現場を歩く
- ナマケモノ事務局
- 4月26日
- 読了時間: 7分

事務局の馬場です。4月中旬、ナマケモノ理事でNPOいとなみ代表をつとめる藤井芳広さん(ふじいもん)の案内で、福岡県糸島エリアの森の再生活動のフィールドを見学する「糸島遠足」を実施しました。平日にも関わらず、7人のナマケモノメンバーが集まりました。
ひさびさの対面企画!
当日はあいにくの雨。集合時間には小雨になったものの、当初予定していたみかん山での甘夏収穫体験は、急斜面なことから断念することに。きっとそれはまた企画してくださいね、という自然の采配なのでしょう(と思うことにしました)。
集合地点の加茂ゆらりんこ駐車場にて、まずは自己紹介。遠くは東京(事務局・馬場)、徳島から、福岡県内でも糸島市内をはじめ、福岡市、宗像市、久留米市、筑紫野市など各地からの参加です。
ふじいもんからは、糸島が「伊都国(いとこく)」に由来していること、中国の『魏志倭人伝』にもその名前が記されいて、古くから稲作で栄えた土地であったことが紹介されました。駐車場からは(雨ではありましたが)眼下に玄界灘が広がり、振り返ればこんもりとした二丈岳が見えます。森と海、そのあいだに流れる加茂川、そして森と川、海からの恵みをいただいて人が暮らす里。駐車場の地図看板で説明してくれるふじいもんの話を聞きながら、「生命地域(バイオリージョン)」という言葉が浮かんできます。

木の時間、いのちの時間に寄り添うーー水源の森にて
車に乗り込み、林道をしばらく走って一行が最初に向かったのは、水源の森。入口ではふじいもんが間伐材から彫ったへびのアートが私たちを出迎えてくれました。「森を再生すると同時に、森と人との関係性、精神性(スピリチュアリティ)も取り戻していきたい」と常々語るふじいもんらしさが感じられます。「森に入らせていただきます」とそれぞれ手を合わせたり、ご挨拶をして、落葉した杉の葉でふかふかする大地を感じながらすすんでいきます。
ここはふじいもんがお子さんの誕生をきっかけに「子どもに何を残したいか?」と夫婦で話し合い、個人で購入した森。皮むき間伐のワークショップも定期的に開催されています。「皮むき間伐」とは、チェーンソーなどで木を根元から伐採するのではなく、木の外皮を小さな道具と人力ではがし、ゆっくりと立ち枯れさせていく間伐の方法です。間伐が目的なので、外皮はぐるっとすべてはがします。残す木を先に決めてから、間引く木を決めるのだそうです。
>>ふじいもんの「森の再生」への思いはこちら


いのちとしての役割は終え、立ったままゆっくりゆっくり乾燥していく木。2、3年後には水分が抜けて軽くなり、女性や子どもでも数人で運ぶことができるのだとか。お金をかけずに森のお手入れができ、運び出した間伐材を板材として地域で活用していく事例もすでに広がりつつあると聞き、そっか、私たちと森はこうやって距離を縮めて、つながり直していくことができるんだと「私にできること」が見つかり、うれしくなります。
皮むき間伐で森に光が入り、背の高さの違う、別の植物もいろいろ生えてきていました。近くには川が流れ、鳥たちのさえずりも聞こえます。でも、森が本格的に再生していくにはもっと時間がかかるとふじいもん。だんだん森の目線での時間軸が浮かびあがってきます。
「人間の言葉を話すのをやめて、それぞれ一人になってみませんか?」5分ぐらいでしょうか、メンバーがそれぞれ気になるところに座ったり、木をハグしたり、呼吸に意識を向けてみたり。ちょうど雨もやみ、森のなかにいるわたし、わたしという身体の境界線がどんどんのびて森のなかのいのちの音とからみあっていくような感覚?(人それぞれなので、あくまで私の場合です)。頭を動かさず、各々が感じる時間。ピースフルなひとときでした。
雨予報でみかん山でのお弁当タイムが叶わなかったため、急遽、ふじいもんがお昼を食べる場所をアレンジしてくれました。向かったのは「danza padella(ダンザパデーラ)」。糸島市内から届く、旬を迎えた栄養価の高いお野菜をふんだんに使ったビュッフェレストランです。天井の高い、開放的な店内。40種類以上の、素材がわかる彩り豊かなメニューに、身体もあたたまり、会話も弾みます。店名は「踊るフライパン」という意味だそうで、帰り際にはマスターに直接感想をお伝えすることもできました!
>>danza padellaウェブサイト(こちら)
地域の森と水を守り、いのちの平和を願うーー龍国寺にて
午後は二丈波呂にある龍国寺を訪問させていただきました。美しい里山に囲まれた大きなお寺は800年以上の歴史があり、現在のご住職は31代目にあたられます。田んぼコンサートや上映会など、地域に開かれたお寺として、檀家さんだけでなく、移住者にとってもよりどころとなっています。
ご多忙ななか、副住職の甘蔗(かんしゃ)健仁さん、住職お連れ合いの珠恵子(たえこ)さんがご対応くださり、奥の座敷にてお話を聞かせていただく場をもつことができました。珠恵子さんは、1986年のチェルノブイリ原発事故に大きなショックを受け、母の視点で、いのちの大切さ、原子力依存のあり方を問う長い手紙を書きました。その手紙は『まだ、まにあうのならーわたしの書いたいちばん長い手紙』(地湧社)として書籍化され、現在も子をもつ母たちに、いのちの大切を願う多くの市民に読み継がれています。(詳細はこちら)
原子力発電所がかかえる危険性について3.11に学んでいない、私たちはあのときすべての原発が停止された中で暮らせていたのに、と原発回帰の現状を憂う珠恵子さん。地域の人々に寄り添い、人々が暮らす根っこである水、森と人々の関係性を守ることに心を砕いてきたお寺のあり方は、歴代のご住職が実践されてきたものだそうです。現在のご住職もお寺の目の前に広がる田んぼを企業誘致から守り、また様々な開発計画がもちあがった際にも地域の視点にたって言葉を発せられてきたと伺いました。
広い本堂も境内も手入れが尽くされていて、全国各地にあるお寺は地域の人々によって交流の場であり、喜び・悲しみをわかちあう場であることを改めて感じました。




子どもも大人も集える場ーーノドカフェにて
本日の遠足を締めくくるのにふさわしい最後の訪問地は、気になるお店が軒を連ねる前原商店街に2017年より営業するノドカフェ。建物の2Fにあがると、手前にリラクゼーションスペース、カウンターを横に奥にはブックカフェが広がります。ナマケモノ書籍をはじめ、環境・社会・世界をみつめ直す視点につながる本がセレクトされていて、ドリンクを片手に読書時間を楽しむこともできます。また定期的にcinemo上映会や海底湧水塩のワークショップなども企画されていて、メンバ-の中にはイベントやワークショップに通っている方もいました。
>>ノドカフェ ブックカフェ&リラクゼーション https://www.instagram.com/nodocafe313/
本来は定休日のところを、ナマケモノたちの遠足企画ならと、ふじいもんのリクエストに快く応じてくださった坂本強美さん・敏幸さんご夫妻(ありがとうございます!)。コーヒーや自家製ジンジャードリンクをいただきながら、半日の振り返りをみなでしました。

実際に顔をあわせて、それぞれの歩幅で歩き、道中、おしゃべりを通じて共通の関心領域にうれしくなったり、車窓からみえたサルにテンションがあがったり、時間・体験を共有できることの素晴らしさ・楽しさに触れた感想が多かったです。森の再生についても現場をみれて、ふじいもんの話や質疑応答からも理解が深まった、みかん山に行けなかったのは本当に残念、収穫体験に別途申し込みます!、ナマケモノ会員を長くやっていてようやくこういう場に来れてうれしい、など様々な感想が聞かれました。
ふじいもんからは「ナマケモノ福岡」としてゆるーく定期的に集まりましょうというお誘いもありました。地域コミュニティのもつ懐の広さ、地域の自然へのリスペクトを感じた今回の「糸島遠足」。別の地域でも、ナマケモノメンバーたちと学び遊び(まなそび)の企画を呼びかけたいです。
Comments