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エクアドル:シントロピック農法を始めてみた。< 1 >

 森のカカオを生産するマシュピ農園を訪問したのは昨年の8月。そこで「シントロピック農法」なるものの存在を知りました。

まぁ、この農法の斬新なこと、そして豊かさといったら!特に外から肥料を持ってきたりするのではなく、森のようにそこで肥料を自然に自給してもらうというのは願ったり叶ったりだなぁと思っていた私。今までずっと農業を齧ってきた身としてはいいなぁ、うらやましいなぁと思わずにはいられません。でも、マシュピは、アンデスのふもとの標高500mの熱帯雨林地方にあり、1年を通して平均温度は18〜23℃、年間降水量3000 mm、と高温多湿な地域です。一方、私の住む地域は、同じアンデスでも標高2400mと中腹にあり、乾燥していて、年間平均気温は9〜22℃(昼夜で温度差があるが、年間通じてはだいたい一定)という環境で、マシュピのような森は望めないと思っていました。


 しかしある日、マシュピのアグスティーナさんが、「私たちはアンデスの高地でもこの農法が実践できるか試してみたいと思っているの。うまくいくかどうかわからないけれど、アヤ、一緒にやってみない?」と言ってくれたのです!うほーーー!やるやる!!とよくわからずもひとつ返事した私。実は彼らがやっている、エクアドル各地で(うち以上に乾燥している砂漠のような地域も含め)この農法を用いて小さなフードフォレストを作るというプロジェクトがあり、そのプロジェクトに我が家も加えていただくことになったのです。マシュピのアグスティーナさんが陣頭を取り、ミンガ(エクアドルの方言で、みんなでやる協働作業のこと。)形式で、各地で地域の人々とゼロから作り上げる小さなフードフォレストを作るプロジェクトです。


 そして私の思惑には、こんなこともありました。私たちも世界中に見られる気候変動とは無関係でいられない。数年前から雨季には通常以上の雨が降り、土は流され、畑が沼地のようになってしまうと思えば、逆に乾季には、からっからになり、灌漑用水を使って水をやってもやっても間に合わない。それを繰り返していると、土はどんどん疲弊していく。単純に、化学合成肥料や農薬を使わず、自家製の肥料をやっているだけでは間に合わない。全部のシステムを変えなければ、私たちは生き残れない。今でも作業はいっぱいいっぱいだけど、このシントロピック農法だったら、森のような土のシステムを作れば、気候変動にもしなやかに対応でき、尚且つ雑草とりと肥料やりが少し楽になるのではないか…。


ものすごい雨が連日降っている。近所の小川は氾濫し、道はぐしゃぐしゃ。
ものすごい雨が連日降っている。近所の小川は氾濫し、道はぐしゃぐしゃ。

 まずは作るフードフォレストに当たって、中心となる作物は何にするか。現在私たちは野菜作りを主にやっています。ですが生の野菜というのは、有機でどれだけ高い値をつけようとも、どうしても作業に見合うだけの価格がつけられない。だからもっと加工に力を入れていかないと、収入としてカウントできないのです。それに、このまま今のような野菜を中心としていく農業は年をとると体力的に難しくなっていくことを痛感しています。私が住むところは冬がなく、年間通して、気温もあんまり変わらないので、農閑期なるものがありません。ずうっっっっと一年中畑を耕し、種を植え、雑草を刈り、収穫するというのを繰り返しています。体力的にこの先ずっと続けていけるものではない。だから、果樹にシフトして、加工できるものは加工して売っていきたいと思うようになりました。その中で、一番使えるのではないかと思っているのが、トマト、黄桃、セイヨウスモモ、りんごです。トマトは、外で育てると、ランチャという病気にすぐかかってしまうので、ビニールハウスで育てています。となると、ターゲットは、黄桃、セイヨウスモモ、りんごです。これを中心に、デザインしていくことになりました。これらは現在も育てているのですが、まるでダメ。、植えてから、雑草を刈り、肥料をやり、の繰り返しですが、病気もあるし、鳥の被害もすごく、なんともお粗末な状況なのです。


なんとなくフルーツできてます!的に撮ったけれど、

実は実がなっているところしか焦点を当てていないし、鳥の被害や病気も。


 次は、私のうちの土地を詳しく分析。コタカチの中心地からだいたい2kmくらいのアンデスの先住民族の村に位置しています。周囲に森といえる場所は全くなく、とうもろこしや豆類、じゃがいもを育てている農村部ですが、元々は大きな大農園(アシエンダ)の一部だったところで、100年くらい前に植えられたユーカリもたくさんあります。そのため、水資源はどんどん乏しくなっていっているという地域です。


 下の写真は、うちの土地の航空写真です。面積はだいたい1.5ヘクタールくらいで、西から東へ(写真で言うと、左端から右端に)いくにしたがって、少しずつ標高が下がっていく、少しの傾斜がある土地です。乾季は北東から強い風が吹きつけてくるため、北東からの風の対角線上に防風用の木を植えていかます。母屋が土地の中心にあって、それをぐるっと囲む形で野菜や果実を育てています。貯水池から少し遠めに野菜の区画がありますが、これは高低差を利用した灌漑用のスプリンクラーをつけているからです。ただ、野菜1とあるところは、公道に面していて、かつてこの公道を広げる村のプロジェクトがあって、公道沿いに植えていた木々を全部切り落とす羽目になりました。風がこの公道側から吹きつけてくるせいか、あまり野菜が育たないのです。

一応パーカカルチャー的デザインにしてみたが…。
一応パーカカルチャー的デザインにしてみたが…。

とういことで、写真の黄色く印をつけたところに20m✖️20mの小さなフードフォレストを作ることになりました。


(続く)



 
 
 

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