top of page

伝統に学び、つくる工程を楽しむー北部タイ、自然染色家・アティさん

更新日:7月3日

ーーコミュニティと生態系の再生に取り組む人びとに出会い、 その暮らしや文化を体験しよう。この旅を通じて、自分の中に眠っていた可能性を再発見し、世界を見る新しい視点を見出し、これからの生き方に活かしていこう。ナマケモノ俱楽部ーー


2025年2月中旬、4泊5日の「リジェネラティブ&ローカル・ツアー in 北部タイ~ 森の民が紡ぎ出す“懐かしい未来”を体験する旅」を実施しました(旅程はこちら)。北は青森から南は神戸と日本全国から職種も年齢(20代~70代)、そしてツアー参加の目的も人それぞれの19名が集いました。濃厚な旅から日本に戻って4カ月。参加者から募った編集チームの尽力により報告集が完成しました。インタビューを中心に「ナマケモノしんぶん」で旅の記録と感想をシェアしていきます。

Atittaya Natural Indigo

アティさんの染色工房


チェンマイ空港から西に1時間強。ノンタオ村に向かう手前の山中の道で車は止まり、少し歩き始めた先にアティさんの染織工房がありました。高台で眺めもとてもいいところ。お話を伺う前にアティさん、友人のモニカさん、スタッフのブンさんたちが用意してくれたランチをいただきました。


色とりどりの料理。肉料理も魚料理もあり、デザートのフルーツもいっぱいありました。バナナの皮を使って机もいい感じにレイアウトされています。バナナの皮でくるんだ包みもあり、中身をあけるとそれは黒米の入ったごはんでした。これらはほとんどが畑でとれたり、地元から調達した食材とのこと。どれもおいしくて、大満足でした。


午後には、工房で染色を見せてもらいました。日本の藍染の原料はタデ科の草を使いますが、この時は、黒檀(エボニー)という実を使い、つぶした後の汁は日本の藍のすくも液と同じで生のまま使ったり、発酵させたりして触媒によって色も変わってくるそうです。綿の小さな布をもらい、私たちもミョウバンを使った染色体験をさせてもらいました。思い思いに輪ゴムをぐるぐる巻いたものをアティさんが染めてくれました。



アティさんのお話


子どものころから糸紡ぎや草木染めを手伝っていました。それらは私にとって特別なものでなく、生活の一部として当たり前のことでした。17年前、子どもが生まれた時、できるだけ自然のもので育てたいと思いました。しかし、夫と別れたことで、子どもを育てるためにお金を稼ぐ必要がありました。バンコクに出て、縫製工場で10年働きました。


7年前にこの村に移り住みました。今は毎日自分の本当にやりたいことをしています。毎日が聖なる時間(ホリデイ)です。バンコクで過ごした経験があったからこそ、余計にここでの幸せを感じます。雨季には米を作り、夏には動物たちを連れて山に入り畑仕事。もちろん綿も育てます。冬には収穫した綿から糸を紡ぎ、糸を染めます。


ブンが来てくれたおかげで、家作りや綿の栽培、畑仕事など何でもできるようになりました。みなさんが今いるこの建物は、もみ殻を混ぜた日干しレンガを自分たちで作り、そこに土壁を塗って建てたものです。


バンコクの縫製工場では何も学べませんでした。細分化されたプロセスの単純な仕事だけをこなすのです。一方、伝統からはすべてが学べます。祖母や母から種まきから始まってすべてのプロセスを学びました。早く効率よくすることではなく、その作る工程を楽しむことを教わりました。


布から服を作るときも、先にデザインがあるわけではなく、できた布にあったデザインを考えていきます。できるだけ布のムダを出さないように考え、どうしても使えないところが出た場合もそれをムダにすることはありません。


私は、お金儲けのために地球を汚したくないのです。化学的なものは、わが子にとって良くないだけでなく、誰かに害を与えます。自然のものは、誰にでも調和します。


生活できるかどうかは結果でしかありません。私は自身の心に従ってやっているので、精霊たちも応援してくれていると思います。私の今の暮らしは、子どものころからしていたことであり、私の体の中にしみこんでいることです。すべての人に可能性はあると思います。まずは、やろうとする気持ちから始まると思うのです。



アティさんは、染色の技術的なことも説明してくれましたが、心に響いたことはアティさんの生き方です。バンコクでのつらい10年があったからこそ伝統的な暮らしの大切さに気付き、アティさんは大事なことを学んでいったと思います。それは自然に、大地にしっかり根づいた生き方でした。


今の私たちの暮らしは、一見豊かに便利に見えますが、大切なことを忘れてどこか根なし草のようだと感じました。初日早々、働くとは何か、豊かさとは何かを考えさせられました。(ともえ)

Comentarios


c) theslothclub 2022

bottom of page