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執筆者の写真ナマケモノ事務局

「どうぶつ会議」と「人類裁判」 ナオキン

こんにちは!ナオキンです。いつも駆け出し記者の拙い文章をご覧いただき感謝です!地域主義の10回目は、クリスマス間近ということで、一冊の絵本をきっかけに思うことをそのままに!




●「どうぶつ会議」について


日曜の午前、車を運転している時はよくFM東京系のラジオ番組「メロディアス・ライブラリー」を聴きます。小説家の小川洋子さんが毎回、一冊の本を読書愛をこめて深い視点から紹介してくださ

います。時々、どきりとしたり、鳥肌ものの感動の時があるのですが、12月4日の回もそうでした。

ケストナー作、トリアー画の可愛らしい絵本「どうぶつ会議」、買ってしまいました!(自分のために絵本を買ったのは、大昔、いわむらかずおさんの14匹シリーズ以来です)


あらすじはこうです。人間たちがいつも対立して戦争や貧困のごたごたをひきおこして数百年、86回目を数える人間の会議も失敗つづき。

「しようがない人間どもだ」

ゾウのオスカーは仲間のライオンのアロイス、キリンのレオポルトとともに、世界中のすべての動物達、生きもの達を集めて最初で最後の「どうぶつ会議」を開催します。クジラ、シロクマからワニ、カンガルー、ハチドリ、カブトムシ、ガにミミズ、絵本のミッキーマウスまで!会議場の絵の中には、われらがナマケモノ君らしい動物もいますので探してみて!

そこでは人間たちに戦争や貧困を二度と起こさないこと、そのために国境や制服、書類をなくすことを要求しますが受け入れられません。ついには世界中の子どもたちがいなくなってしまいます(ハーメルンの物語か現代の少子化の喩えのよう!)

でも心配御無用、ハッピーエンドの絵本です。ラストの方の、子ども達とどうぶつ達が遊ぶ場面が最高にいきいき、楽しそうです!


ラジオで聴いていて私が一番心動かされたのは(多くの愛読者もそうだと思いますが)、このどうぶつ会議の目的が「子どものために」、人間のこどもたちのために集まってくれたことです。オスカーは言います。「わしは、子どもたちがかわいそうなんだ」

現実の世界でも、自然や動物達には言葉はありませんが、人間たちが生きていけるようにいつもギフト、プレゼントを与え続けてくれています。生物絶滅の危機を引き起こしている今こそ、声なき声に耳を傾けて、問題を直視し、人類が、今の大人達が、あらゆる種の生物多様性と生態系の保全のために行動する番でしょう!!


戦争は最大の環境破壊。この物語が世に出たのは第二次世界大戦後まもなくの1949年、可愛い絵本の中に、ケストナーさん自らの戦争体験からの痛切な思いと批判、平和な未来への希望のメッセージを強く強く感じました。


●「人類裁判」について


「どうぶつ会議」を読んでいてなぜか小生の頭に思い浮かんだのは、日本のSFの巨匠 小松左京の短編「人類裁判」のことでした。

ストーリーはこうです。


人類が太陽系外へ進出始めた頃、突然宇宙からの知的生命体達が来訪、人類は裁判にかけられます。他の星での環境破壊や生物への残虐な行為についての証言、さらには、過去の地球上での生命に対する負の歴史について、戦争被害者、先住民、野生動物、家畜等が次々に証言に立ち、ついには仏陀まで召還されて事実が明らかにされますが、最後に証言に立った嫌気性バクテリアの人類を擁護する発言に異星人達は心を動かされます。

果たして判決は・・・?!


著者の小松左京先生(1931~2011)は博覧強記の「知の巨人」、SFのあらゆるジャンルにわたる膨大な作品群を生み出し、昭和生まれ世代の私達を楽しませてくれました。1970年大阪万博のプロデュースでは岡本太郎を起用、「人類の進歩と調和」のテーマを超越した縄文土偶風の「太陽の塔」(内部には「生命の樹」)を屋根を破って建立した立て役者の一人です。最近では「日本沈没」(1973年刊)で巨大災害、「復活の日」(1964年刊)で地球規模の感染症危機、さらにはAIを超えるAE(人工実存)まで、予言成就的な作品で再び注目され新たに作品集が発刊されています。

氏の真骨頂は壮大なスケールでの思索であり、宇宙とは、生命とは、人間とは、知性とは、文明とは、といった根源的なテーマに近づく材料を、数々の小説を通じて私達に提供してくれた現代の偉大な小説家だと思います。

いよいよ未来が不透明な現在、小松左京の言葉が響きます。

「SFとは思考実験である。SFとはホラ話である。SFとは文明論である。(中略・・・)SFとは文学の中の文学である。そして、SFは希望である、と。」(「宇宙にとって人間とは何か~小松左京箴言集」より)

私も小松左京読み直してみたいです。ちなみに、近年のSFについては小生全く疎いです・・・。



●フューチャーデザイン(FD)と未来世代法について


もうひとつ触れさせて頂きたいのが、2か月ほど前にオンラインの講座で教えて頂いた内容についてです。

まずフューチャーデザイン、高知工科大学の西條辰義教授の発案された手法で、一般市民が「(仮想)将来世代」(例えば50年後の住民)になってみる、当事者になったワークショップで未来から現在を考えることで、人の認識や行動の変容を促しビジョンづくりや社会デザインに役立てること、とのことです。そしてこの手法は人間以外の生きものの立場等についても応用が可能とのことです。地方自治体では既に、矢巾町(岩手県)、宇治市(京都府)、松本市(長野県)等で取り組まれているそうです。

未来世代法は、政府・地方自治体が未来世代の利益への配慮を義務づけるもので、英ウェールズで2015年世界で初めて施行、明日香壽川東北大教授により日本に紹介され、現在日本でも野党で法案づくりが進められているそうです。

両方ともに、未来世代の事を考える新しい手法として注目に値する動き、もし詳しい方がいらしたら教えてくださいね。


●まとめに


上記に共通して思ったことは「視点を変えて」現状を見直してみる重要性です。人間の視点から生きもの(や、異星人、神様まで?)の視点に、現在の視点から過去の御先祖様や未来世代の視点に、そして、日常生活から文明論の視点に。日常の忙しい日々を送る私達にとってなかなか難しいですが、大きな視座から社会の動きをみたり、時には童心に還って絵本を開いたり、想像の翼を広げたりしたいものです。(エンデ「ネバーエンディングストーリー」の映画の、白竜に乗った主人公の少年をいつも思い出します。「どうぶつ会議」や「人類裁判」、ジブリや新海誠監督のような上質の日本アニメで映画化していただけるとインパクト大きいのでは?という妄想も!)


ご覧いただきありがとうございました!



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