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どんぐり成長記2019-2023  田島俊介

秋、どんぐりが落ちる季節ですね。みなさんはどんぐり集めてますか?

3年前、このナマケモノブログで「下を向いて歩こう~どんぐりを拾って育てる楽しみ~」という記事を書きました。


そこでは、どんぐりの育て方をご紹介しました。2019年の冬にまいたどんぐりが2020年の春に芽吹くまでの様子をご紹介しました。


そのどんぐり、その後どうなったかのか!? 今回は、僕のお気に入りのコナラにスポットを当てて、あれから3年の成長をご紹介します。

 

まずは、振り返って、これがコナラのどんぐりです。大きさはわずか2cmほどです。


コナラのどんぐり

秋・冬に苗床で寝かせておいて、2020年春に出てきた芽がこれ。生まれたてホヤホヤの0歳です。



1年半経って、2021年10月、どれくらい成長したかというと次の写真。1歳半です。すごい成長!



さらに、1年経って、2022年11月の写真(可愛いくて、町のイベントに連れていった時の写真)。

2歳半です。コナラは落葉広葉樹なので、この時は少し黄葉していました。



そして、さらに1年経って、2023年10月現在の写真。3歳半です。この頃になると、もうこの植木鉢では小さくなってきて、そろそろ森でのびのびと育ってもらいたい頃となりました。でも、かわいくて、なかなか子離れできない心境にもなっています。


それにしても目覚ましい成長だと思いませんか。

たった2cmのどんぐりが、今や1m以上になっています。50倍伸びました。


 

さて、このどんぐりをこんなにも成長させているものは何でしょうか?

それは土です。前のブログに書きましたが、この土は落ち葉や枯れ枝で作った腐葉土をメインに、竹炭、もみがらくん炭を混ぜたものになります。


ポットの中はどうなっているでしょうか?

ここに、コナラのポット(1歳半くらいの時)の中を覗いてみた写真があります。こんな感じです。


拡大してみます。


ヤスデ(真ん中の少し左上)やダンゴムシ(右下)がいます。ヤスデやダンゴムシは落ち葉を食べて育ちます。糞をして、それが良い土になります。さらに、彼らの幼虫は土中に穴を掘って住んでいますが、その穴が土壌の通気性、透水性を良くしてくれて、なんと木の根っこが成長しやすい環境を作ってくれているのです。すごい!


写真をよく見ると、ダンゴムシのすぐ左側に根っこが伸びていて、さらにその根から細根が無数の小さい穴に伸びているのが分かります。


さらに下の方を見てみます。


底の方が白くなっています。よく見ると根っこの周りに多くみられます。これは何でしょう?

菌根菌(きんこんきん)から伸びる菌糸(きんし)です。


菌根菌とは、樹木の根と共生する菌類です。菌根菌は樹木から光合成産物である糖やアミノ酸などの栄養をもらいます。そのお礼に、土中の水、窒素、リンなどを集めて樹木に必要な栄養を与えます。

まさに共生!


菌根菌は樹木から栄養をもらって菌糸を伸ばしながら拡大していきます。それを追うように木の根っこも伸びて成長していきます。


菌糸は地面の中の小さい穴を網の目のように張り巡っていきます(=菌糸ネットワークの構成。近年Wood Wide Webと言われる)。菌糸により小さい穴は保たれ、つまり水と空気が動く環境が保たれます。菌糸自体もホースのようになっていて養水分が動きます。


雨が降らない日が続いても、樹木が枯れないのは、この土中の網の目や菌糸の中を縦横無尽に養水分が動いているからです。


菌糸ネットワークについて、以下のBBC放送の動画(Youtube)がユニークでわかりやすいです。


菌糸のネットワークのことはカナダの森林生態学者 スザンヌ・シマードさんが第一人者で研究発表しています。今年、著書『マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険』が日本でも発売されました。スザンヌ・シマードさんがTEDでスピーチした時のyoutube動画と訳を、辻信一さんが、このブログでも書いています。


森の木々はどうやって話すのか 前編・後編 スザンヌ・シマード


このように、木の成長には土の中の環境がとても大事なんだとわかります。


ということで、3年間のどんぐりの成長とその土の中の変化についての記録でした。

皆さんもぜひこの秋にどんぐりを拾って育ててみてください!



参考文献:

書籍「マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険(スザンヌ・シマード 著)」

書籍「土中環境(高田宏臣 著)」

書籍「樹木土壌学の基礎知識(堀大才 著)」


参考URL:

有機農業をはじめよう!「大食漢―ヤスデのはたらき」 https://yuki-hajimeru.net/?p=293



■田島俊介(たっしー)


森と共に生きる木こり。ナマケモノ倶楽部会員。2009年、これからはローカルの時代だと思い、サラリーマンを辞め、千葉県長南町へ移住、林業に従事。その後、ただ木を切ったり、植えたり「表面的なこと」をするだけでは良い森にはならないことに気づく。

現在は「土中環境」に目を向けた森づくり、人工林の再生、里山整備を学びながら実践する日々を送っている。



長南町多様性の森プロジェクト https://note.com/chonan_forestry/

オススメ書籍 『千葉県長南町 里山ぐらしの今昔』 https://chonan-bunko.jimdofree.com/


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