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「リジェネラティブ」へ


先日、G E NジャパンのGaia Educationの講座で、「新しい物語を創ろう」と題して話をさせていただいた。そこで、「古くて新しい物語」として、「ガイアという物語」、そして「リジェネラティブ—再生・循環・更新—の物語」を紹介した。


まず、「リジェネラティブ」(そしてその名詞リジェネレーション)という、すでに世界の共通語として、さまざまな分野で使われている、極めて重要な、だが、発音しづらく、訳しにくい言葉について、どう説明し、どう理解してもらうかだ。日本語では、安易に「再生」という、今やあまりに使い古された言葉に訳されることが多いが、それが日本でこの言葉が今ひとつ広まらないことの原因かもしれない。


前回のブログで紹介した、リジェネラティブ農業の実践者である北海道のエップ夫妻とともに、今、このリジェネラティブを日本語にどう訳し、どう活かすかについて、考えているところだ。感覚としては、日本語の「おかげさま」という言葉に近いのだが・・・


まずは、先月日本語版が出たばかりのポール・ホーケン編著の『リジェネレーション 気候危機を今の世代で終わらせる』(山と渓谷社)のなかから、また雑誌『リサージェンス』のなかから、この言葉がどういう意味で使われているのかを示すいくつかの箇所を以下に引用しておこう。


『リジェネレーション』から、ポール・ホーケンの言葉。


「再生(リジェネレーション)」とは、あらゆる行動や決定の中心に、生命を据えることを意味します。これはあらゆる創造物-草地、農地、人間、森林、魚、湿地、沿岸地帯、海洋-に適用されます。そして、家族、コミュニティー、都市、学校、宗教、文化、商業、政府に等しく適用されます。自然と人類は、この上なく複雑な関係性のネットワークで成り立っています。それがなければ、森林、土壌、海洋、人間、国、文化は滅びます。


人間と自然の間で、また自然自体の中で、さらには人々・宗教・政府・商業の間でも、欠くことのできないつながりが分断されている・・・。この分断が、気候危機を引き起こしており、それこそが根源なのです。


自然は決して間違いを犯しません。 人間は間違いを犯します。地球は何が起きようと生き返るでしょう。国、人間、文化はそうではないかもしれません。もし、私たちのあらゆる行動の中心に生命の未来を据えるということが、私たちの目的や文明の中核を成していないのであれば、私たちはなぜここにいるのでしょうか。

                    

次にハーバート・ジラルデットの「持続可能な世界のためのリジェネラティブ経済」(『リサージェンス&エコロジスト』誌March/April 2019 拙訳)から。


「リジェネラティブ」という言葉は、ますます多くの分野や文脈で使われるようになっている。たとえば、リジェネラティブな農業、リジェネラティブな開発、リジェネラティブなデザイン、リジェネラティブな栄養学、リジェネラティブな医療、そしてリジェネラティブな経済、というふうに・・・。

              

今、一つの同意が形成されつつある。それは、「人新世」時代の悪化する地球の状況に対処するために、「リジェネラティブ」を基本とするやりかたが私たちに必要となっている、という同意だ。ますます枯渇と汚染が進む地球環境を、「持続する」だけでは十分ではない。この世界は常に変化するダイナミックな場所だ。たとえば、私たち一人ひとりの身体では、7年ごとに100兆個の細胞が入れ替わっている。生命は、互いにつながり合ったさまざまな力の働きによって絶えず更新(renewed)されているのだ。では、現代の経済もまた、同じように絶えず自らを更新し、再生するようなリジェネラティブなありかたを身につけることは可能なのだろうか。

                

「再生(リジェネレーション)」とは、あらゆる行動や決定の中心に、生命を据えることを意味します。これはあらゆる創造物-草地、農地、人間、森林、魚、湿地、沿岸地帯、海洋-に適用されます。そして、家族、コミュニティー、都市、学校、宗教、文化、商業、政府に等しく適用されます。自然と人類は、この上なく複雑な関係性のネットワークで成り立っています。それがなければ、森林、土壌、海洋、人間、国、文化は滅びます。

              

最後に、上のジラルデットの文章に引用されている、ローマクラブへの報告書「A Finer Future Is Possible」(2016)からの言葉。


「自然界は持続可能性を目指しているわけではない。自然はリジェネラティブであるからこそ、結果として持続可能(サステナブル)なのだ。経済システムが長期的に繁栄するためには、自然界のように、リジェネラティブなものとなる他ない」





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