はじめまして!ナオキンと申します。敬愛する辻先生の倶楽部の新聞に、私のようなゆっくりゆるゆる、凡愚の者が投稿させていただく機会をいただき誠にありがとうございます。
私からは、現代の日本で忘れられている「地域主義」なるものをテーマにシェアさせていただきます。
オールドニュースで恐縮ですが、「しあわせの経済」に共感されている仲間の皆さんを後押ししてくれる考えでは、と願って投稿します。
第1回は、ルイス・マンフォード(アメリカの哲学者・文明批評家 1895~1990)の地域主義です。
20世紀アメリカを代表する良心的知性と評され米英の最高勲章を授与されている著名な氏の言論が何故、取り上げられないか?それは、巨大都市、技術万能主義、機械的な世界観、宇宙開発など現代日本で主流となっている思潮に対して、真っ向から批判の立場をとっているからでは、と思ってしまいます。
「知の巨人」マンフォードの残した著書と関連本から、氏の主張の一部をご紹介します。
●技術が人類の発達を規定する。
原技術期(水力・風力)旧技術期(石炭)新技術期(電力・石油)、今後は自然エネルギーや生命、生態系の原理に学ぶ「生技術」の時代へ
●人間の家庭生活に必要なすべての家具や調度のほとんどは新石器時代か紀元前一千年頃までにつくられたもの。文明が変貌しても、ベッドメーキング、料理、皿洗い、洗濯など人間が日常生活に必要な多技術を自分でやることは重要。
●中世は停滞の時代とされてきたが、中世こそは都市と農村の共存、緊密な人間関係と相互扶助、農工技術の進歩、五感豊かな中で花開く生活文化など、「輝ける中世都市」として学ぶ点が多い。
●現代は5つのP(動力 Power(技術・エネルギー)、政治権力 Politics 、生産力 Productivity、利潤 Profit 、宣伝活動 Publicity)の権力複合体の時代であり、「権力のペンタゴン=メガマシン」と名付けた。メガマシンの起源はエジプトのピラミッドを人間を部品として造り上げた組織に既に見られ、ガリレオ、デカルト以降の機械的・物理的世界観(有機的なものの見方の排除)、資本主義の全てを抽象的な数量へと還元する思考、巨大技術の進展により現代に復活している。
●「都市の発展と衰退の6段階」
原ポリスポリスメトロポリスメガロポリスティラノポリス(専制都市)ネクロポリス(死者の都市)
メガロポリスから小規模都市の地方分散へ、都市と農村の調和、ハワードの田園都市ネットワーク、近隣住区と協同組織が重要、政治を日常活動に、等の提言(地域主義)
●都市は芸術であり、人々のドラマの劇場。都市の最良のいとなみは「人間の愛護と育成」である。都市は生命をはぐくむ機能、自律活動、共生的結合を回復しなければならない。
●儀式、芸術、詩、劇、音楽、舞踊、哲学、科学、神話、宗教は、いずれも人間にとって日々のパンと同じように本質的なものである。人間の真の生活は、生命を直接維持する仕事の活動だけにあるのではなく、仕事の過程ならびにその最終的産物や成果の両方に意味をあたえる象徴的な活動にある。
●芸術のもつ未来予見性、建築のもつ芸術と技術をつなぐ役割の重視
●金銭経済から生命経済(充足経済・必要経済)へ
●弱肉強食、適者生存の理論でない、生態学の創始者としてのダーウィンの再評価
●機械論的世界像から有機的世界像、「機械の神話」から「生命の神話」へ
●現代の人々の生活はますます自動化され、遠距離操作されるようになって、機械のように精神や感情の働きを失った「後史人」の世界になるのではないかという恐れがある
●LIFE(生命・生活・人生)の復興を展望する
●「人間にまかせよ」「人間はすべて「花の子(フラワーチルドレン)」」「生命のほかに富はない(ラスキンからの引用)」
拙いご紹介ですが、いかがでしたでしょうか?氏がなぜ人類史全体を俯瞰する視点と人間の生を見つめる視点の両方をもち得たかというと、私生児として生まれ、苦学し大学は病気中退、多くの職を経験し経済的に苦労してきた経歴、そして大学には所属せず在野の研究者であったこと、歴史、技術、政治経済、都市、建築、生態学、芸術まであらゆる分野に取り組み精通した「ゼネラリスト」であったことにあるようです。
関心をもっていただいた方へ、氏の著作は代表作「都市の文化」の他にも多数ありますが、多くは分厚くて私もなかなか分かりにくいです。そこで唯一の入門書として「ルイス・マンフォード」(木原武一著 鹿島出版会SD選書)、エッセンスが詰まっていて充実の内容、ここから気になった著作に入られてはいかがでしょうか。私のお勧めは、マンフォード晩年の集大成「権力のペンタゴン~機械の神話第2部」です(文章自体がとても生きていて魅力的でした!)。
私がマンフォードの名前を知ったのは宮本憲一先生の著作から、公害研究の先駆者、日本を代表する環境経済学者にも大きな影響を与えていたようです。私も十分な理解ができていないので今後も氏の著作を読み続けていきたいです。
次回は、日本の地域主義についてお伝えできればと思います。おつきあいありがとうございました!
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