[new-slothml:749] 電気を消して、スローな夜を。キャンドルナイト夏至2022~東京・港区より 川井美奈子

韓国のあゆみさんからバトンをうけとり、東京の港区からお送りします。 暗闇に光る眼の話、やんちゃなキャンドルナイトの話、そんな素敵な~と思いながら、暗闇や、キャンドルの思い出を辿るつらつら巡る楽しみ、私もやってみました。 幼い頃のキャンドルの話と、大人になって出くわした暗闇の話をします。 昭和の間は、特に大災害でなくても雷や地震、それ以外ひょんなことでも停電は時々あって、そうなれば父と母が声をかけあってろうそくが出てきて、ちょっと心もとない火を囲んでの食事になります。だからろうそくは身近でも、大人が扱ってくれていたのですが、自分が火を扱ってドキドキだったのは幼稚園のクリスマス行事です。

キリスト誕生の劇が終わった後だか、もう覚えていないけれど、とにかく1人に1本ろうそくが渡され、火が灯される。マッチを擦って火をつけたのか思い出せませんが、子供だけが席に並んでいて、火のついたろうそくを持ってる。こんなあぶないのあり?と感じています。そしてタイミングが来たら銀紙で作ったキャップをかぶせて消すのです。自分がやるなんて不安なのだけれど、先生はかぶせれば消える、と言うだけです。仕方ないから火にえいっとキャップをかぶせると、まあ、消える。


この心落ち着かない練習が2回くらいあって当日にもやはりその段が来ました。厳かなクリスマスの行事の最後、暗い中に灯が並んでいる。ちょっと特別な光景です。が、自分の手にはろうそくの火が揺らめいていて、銀紙キャップをえいっとかぶせて、無事、煙たなびいた、その一連の感じが、長いこと印象に残っていました。


・ ・ ・  大人になって、勤め先が移転したオフィスはガラス張りで夜まで灯が見えて不夜城みたいでした。ある時から消し忘れ対策と帰宅促進のため夜間は定時に一斉消灯が始まりました。放送で予告が入ってばしゃっと電気が落ちると、即座に若めの社員が壁のスイッチに走っていってぱちぱちばちっと付けなおす、という変なスタイルができました。が、うっかりその時間にトイレにいた事があります。


一斉消灯がそれほに怖くなかったのは、普通の執務フロアには非常口のサインの電気が残っていたからだと気付きました。トイレの中は違います。個室から壁を伝って出たものの、パウダールームから廊下が分からなくて出られません。仕方なく、辛うじてウォシュレットの時間表示が灯っている個室に戻って気を取り直し、もう一度真っ暗なパウダールームに出て、そこから壁を伝っていれば切れ目から当然出られると思うのに、なぜか一周してしまいます。


大して広くない、行きつけのトイレの何が記憶と違うのでしょうか。地下鉄の駅のトイレで寝込み、目覚めた時には終電が終わって駅が消灯されており、朝まで駅から出られなかった友人の武勇伝が頭をよぎりました。何度目かの壁伝いで、忘れていた扉の存在にようやく気付いて廊下に脱出し、時間だけちょっと経ったいつもの残業フロアに戻ったのでした。


東日本大震災の日の晩、怖くて出かけられなかった話です。


11年前の3月11日、東京都心は震度5、日常体験しない揺れとなり、電車やエレベータ類は止まりました。夕方、勤め先のビルの42階からくるくるくるくる階段を下りて、たまたまヒールのパンプスでなくしっかりしたブーツを履いていて、家に向かって歩き出す路上で不思議と夫に合流して、似たような街の人と道路一杯になり1時間以上歩いたら帰宅できました。家の電気とガスを復旧して食事をしましたが、部活で学校に行っていて地下鉄が止まり帰宅し損ねた次男のお迎え問題が登場しました。学校ではいくつかの部活の生徒が帰れなくなり、たまたま出勤していた先生方と一応無事でいることが確認できていました。


深夜になって地下鉄が一つまた一つ動き出したので、迎えに行くべきか迷ったのです。中学一年生の息子は出先で安でしょうし、突然、担任でもない、その日学校に来ていた生徒と過ごすことになった先生の元から、一人でも生徒を減らしたい。けれど、地下鉄を途中で乗り換えないと着かないので、いつ余震が起きるか分からない状況では、私まで避難者、救助対象者になりかねません。真冬の深夜にサバイバル外出着に着替えるか、寝て早朝お迎えにするか、迷ったうえ、後者にしました。体験しないで済みましたが、地下鉄で真っ暗、を想像して気が小さくなった晩です。 写真は日本酒の空き瓶を切ったものに詰めて作られたろうそくと、それを売っていた会場です。エコ・バザーを思い立った青年が自分でチクチク縫った三角旗が飾られて、モノレールの駅がなかなか輝いていました。 さて、次は宮貴子さんにバトンを渡します。何のお話が出るでしょう。 そして、ナマケモノのみなさまもどうぞお好きなタイミングでバトンを受け、スローに好きなことを語って渡していってくださいませ。

川井美奈子

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