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執筆者の写真辻信一

SOSAプロジェクト訪問

6月4日から5日、不思議なご縁に導かれて、千葉・九十九里地域の匝瑳(そうさ)を訪ねた。出迎えてくれたのは、SOSAプロジェクト代表で『減速して生きる:ダウンシフターズ』著者の高坂勝くん。

彼に田んぼやソーラーシェアリングなどローカリゼーションの現場を案内してもらい、午後には、お話会と映画「君の根は。」上映会も企画してくれ、多くの人が集まってくれた。夜は、高坂さんが自ら手直した農家民宿「Lazy Farmer's Inn」で遅くまで話し込んだ。



ぼく自身の報告はまたゆっくり記すとして、そのでお会いした中田哲也さんの匝瑳訪問記のブログが素晴らしいので、ご本人の了解を経て、以下、紹介させていただく。


中田さんは、農林水産省で長年、食・農に取り組み、定年退職された現在もライフワークとして「フード・マイレージ」の研究・普及に取り組んでいる。


■フード・マイレージ資料室ーより豊かな未来の食のためにー

 

(下記は文章の転載のみ。ぜひ中田さんのブログで写真と全文を読んでいただきたい)



【ブログ】次の時代を先に生きる人々(千葉・匝瑳)


池袋でオーガニック・バー「たまにはTSUKIでも眺めましょ」を経営されていた髙坂 勝(こうさか・まさる)さんが、千葉・匝瑳(そうさ)市に本格移住されてたのが2018年。  それ以前からも取り組んでこられた米作りの場づくりのほか、古民家農泊、ソーラーシェアリング等の幅広い活動の現場を見学したいと熱望しつつ、コロナ禍もあって実現できていなかったのですが、2023年6月4日(日)、ようやくその機会が訪れました。  辻信一先生のトークショ/上映会も開催されるとのことです。 午前中に町内自治会の一斉清掃を終えてから、自宅を出発。  12時過ぎにJR千葉駅前でレンタカーを借り、途中、和風レストランで海鮮丼の昼食(なかなか豪華で美味。さすが千葉?)を頂き、匝瑳に到着したのは15時頃。  山道に入り、恐る恐る狭い道を進んでいくと(私は車の運転は得意ではありません)、髙坂さんの講演等で何度も見せてもらっていた谷津田の風景が、眼の前に広がりました。  心地よい風が通ります。 この日は「My 田んぼ」(SOSA PROJECT)の作業日(草取り)だったようで、あちらこちらに子どもを連れた家族やグループの姿。  作業を終えて戻ってくる人たちの長靴や服装は泥だらけ。表情は輝いています。 16時前に近隣の豊和コミュニティセンターへ。  17時からの辻信一先生のトーク/上映会を準備している髙坂さんと(リアルでは久々の)再会。辻先生を紹介して下ったので挨拶させて頂き、ご新著『ナマケモノ教授のムダのてつがく』(2023.1、さくら舎)にサインも頂きました。 イベントは2部構成。80名以上の参加者は会場に入りきれず、廊下にまで溢れています。  前半(A面)の辻先生のトークに先立ち、髙坂さんと石田大介さん(長崎・五島在住)によるギター演奏と歌。内田ボブさん作の楽曲が心に沁みます。 髙坂さんがマイクを取られました。  「せっかく辻先生が匝瑳に来て下さるのに、私が独り占めするのはもったいないので、急遽、トークと映画上映会を企画したところ、快く引き受けて下さった」と、辻先生を紹介。へ。  辻先生からは  「田んぼの活動を見学させてもらいに来ただけなのに、このような企画を立てて頂いたことは望外の喜び。私も何度もたまTSUKIに伺った。不思議な場所で懐かしい」との言葉。  続いて、この日のために準備されたスライド(「ムダ活のすすめ-『役に立つ』から自由になればみんな元気になる」)を映写しながら、概要、以下のようにお話して下さいました(文責・中田)。 「私たちはこんなに頑張ってきたのに、豊かになっていない。『不要不急』という言葉が広がるなどムダに対する風当たりが強まり、生きづらい世の中になっている」  「ムダについて考えることがますます重要になっている。ムダはよくないという常識を疑い、『役に立つ』という見方そのものを疑わなければならない。これは、合理性や功利性への挑戦でもある」  「精神科医・作家の帚木蓬生が紹介されている『ネガティブケイパビリティ』とは、答えの出ない事態に耐える能力のこと。現代は、生半可な知識に基づく「わかったつもり」がふんぞり返っている」  「平安時代末期の『梁塵秘抄』には『遊びをせんとや生まれけむ』とある。遊びとは、のびのびとムダな時を過ごすこと。  ただ時間をムダにしているだけ」と歌うオーティス・レディングの『ドック・オブ・ベイ』は、ぼくの人生のテーマソングの一つ」 「サン・テグジュペリ『星の王子様』は有名な作品だが、あまり知られていないエピソードがある。友だちになった王子と別れる時がきたキツネは『小麦畑を見るたびに金髪の君のことを思い出し、幸せを感じることができる』と語る。時間をただ共に過ごしたからこそ、得られる大切なものがある」  「スローとはムダな時間を過ごすこと。愛とは、惜しげなく相手のために時間を使うこと。そもそも、あなたは効率的に愛されたいですか」と、最後に問いかけられました。 後半(B面)は、ドキュメンタリ映画『君の根は。大地再生にいどむ人びと』の上映です。  アメリカで不耕起農法やカバークロップの栽培に取り組む若い農家、昆布を養殖する漁師たちへのインタビュー。アフリカでの実践例も紹介されます。

仲間で放映権を買い取り、タイトルや字幕をつけて、上映運動をされている辻先生からは、  「本作のキーワードはリジェネラティブ。分かりにくいので、友人と相談して『大地再生』と訳している。肝心なことは、大地(生命)そのものは自らを更新し続けるということ。ここに希望がある」  「農業や漁業に関わりのない人は、この映画にはあまり興味を持たないだろうと思っていたが、現在も、自主上映会はブームのように全国で続いている。これほど人気が出るとは思わなかった」との説明。

上映後、辻先生からの  「馴染みのないアメリカ等の風景に違和感を覚えた人もいると思う。農場の規模も全く違う。ぜひ皆さんの率直な意見や感想を聞きたい」との言葉を受け、何人もの方から手が挙がりました。 匝瑳で有機農業を始めて7年目という女性からは、  「アメリカ等の環境とは全く異なるが、匝瑳で有機農業に取り組んでいる。一人でできることは限界があるが、わざわざ足を運んで買いに来てくれる人が増えている」との発言。  スローフード関係の活動をされている女性からは「現実には事務作業等でなかなか自分のゆっくりとした時間がとれない」との話も。  先の統一地方選挙でトップ当選されたという農家の方(男性)は、17haの水田を経営されているそうです。  「コミュニティガーデンに取り組んでみたい」という女性の言葉には、髙坂さんから  「都会から人口を散らすのが私のミッション。その上で都会も田舎化する。コミュニティガーデンは全国で増えている」との話。 私も指名を頂き、トークと映画の感想などを述べさせて頂きました(辻先生が大切にされる「問い」はうまく立てられませんでした。アドリブは苦手なのです)。

さらに髙坂さんからは、  「政治はまやかしばかりで絶望感を覚えることもある。しかし、現実にローカルで行動している人たちが周りにいることは希望。オーガニック学校給食にも取り組んでいきたい」等との発言。  辻先生からは、スリランカのクーマラスワリの言葉を踏まえて  「アクティビストとは特別な人のことではない、すべての人が特別なアクティビスト。ここに集まった皆さんは、暇なのかもしれないが(笑)、みんなアクティビスト」との発言も。  時折り笑いも混じる和やかな会は、20時30分頃に終了。  特に「My田んぼ」から参加されている人には、長い、充実した一日だったことと思います。 会場の片付けの手伝いもしないまま、スタッフの方に、髙坂さんが隣の多古町で運営する古民家農泊「Re」まで案内して頂きました。街灯もなく暗いなか、月が輝いています。  高坂さんが仲間とともにリノベーションし、「再び」「新たに」と名付けられた一棟貸しの古民家は、妻と二人には贅沢過ぎる広さでした。

翌日は6時過ぎに起床。  改めて明るい中で「Re」をみると、外観も内装も素敵です。囲炉裏が切られ、薪ストーブも置かれています。  周辺を散策。すぐ近くには由緒ある古城址等もありました(別掲のブログで紹介します)。 やがて、高坂さんが辻先生と学生さんを案内して来られました。  「Re」の施設や備品、リノベーションの経緯、さらには周辺地域の様子を説明して下さいました。  この地域(多古町島)は、中世から交通の要衝だったそうです。

続いて、大規模ソーラーシェアリング施設を案内して下さいました。  現地には、匝瑳ソーラーシェアリング株式会社の椿 茂雄さんが待って下さっていました。 もともと40年前に山を切り崩して農地開発した場所だそうで、土質は関東ローム層で肥沃とは言えないとのこと。

 太陽光パネルの幅は一般のものよりも狭く、トラクターも入れる高さが確保されています。  新しく建築した施設では、今後、有機野菜の栽培を予定しているそうです。  11時過ぎ、椿代表は慌ただしく会議に向かわれました(お忙しいところ有難うございました)。  ここで髙坂さん、辻先生一行ともお別れです。

 貴重な、濃密な時間を過ごさせて頂きました。高坂さん、辻先生、椿代表、トーク/映写会の参加者の皆さま、有難うございました。


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