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助産院で、産んでみました  イノユリ



みなさん、こんにちは。イノユリです。辻ゼミを卒業し、12年前に生まれ育った東京から鹿児島へ移住して、のほほんと暮らしています。九州のスローな話題をざっくばらんにお届けします。


さて、鹿児島生活、というより人生で一番のbigでgoodな出来事といえば、今のところ、出産です。

ニュースどころか、ずっと昔から、この瞬間も、世界中で起き続けている奇跡、お産。誰もが、“産まれる”体験を持っていて、“産む”ことは、母だけでなくそれを支える全ての人に関わる営みでもあります。


個々の出産体験はプライベートでセンシティブなもので、あえて語るものではないという認識もあります。ただ、お産をめぐる状況を変えるために母親の声を上げる必要があるという思いもあり、二度の出産経験で私が感じたことをお伝えしてみます。



お産は喜びである


お産には、大きなメリットがあります。自然とのつながりを感じることができ、自分の生き方を見つめ直し、心身の健康につながります。この感覚を得るには様々な方法がありますが、私は妊婦になることで半強制的にこの境地に入りました。


妊娠〜授乳期に、私が気をつけていたポイントのひとつは、「きれいな血液を全身に巡らせる」こと。胎盤に集まった母親の血液は、臍帯を通って胎児の体内に流れて巡り、また母親の身体に戻っていきます。ちなみに母乳も元は血です。


サラサラと流れて、たくさんの酸素や栄養を含んだ血液を、全身に隈なく巡らせる状態を意識することで、胎児の成長と同時に、母体も健康に保つようにします。体調や時期によって多少異なりますが、例えば、旬の安全な食材で作るバランスの取れた質素な食事、散歩やヨガなど適度な呼吸・体操・瞑想を実践できる簡単な運動。頭寒足熱、早寝早起きなど。


それから極力ストレスのない生活を心がけること。精神的バランスが崩れると体もこわばってしまうので、血だけでなく、気の巡りにも意識を向けます。


やがて出産が近くなると、“しないこと”が増えてきます。例えば、新聞や本を読んでも頭に入らなかったり、計算ができなくなったり。周りの喧騒や争いごとを避けて、心穏やかにゆっくりと過ごしたくてたまらなくなります。食事もそこそこにひたすら眠ったりします。(辛い悪阻も、断食でデトックスの時期なのかも、と今は思えます。)


いよいよ出産。すると産後の数ヶ月は、パワー全開でお肌もスベスベ、五感が研ぎ澄まされて思考も冴え渡り、ほぼ不眠不休でもテキパキと子守に励めてしまう、不思議な現象が起こります。産んだ側なのに、こちらまで産まれ変わったような気分です。


身体の変化と同時に、魂に響くような体験もあります。自分の中に突如現れた、全く新しい別の何か。それはひとつの意志を持っていながら、自分と繋がって響き合い、喜びや悲しみも一体となっている感じ。この存在は、どこからきて、どこへ向かおうとしているのか。答えのない問いをぼんやり考えていると、宇宙の中に放り込まれたような、不思議で懐かしい感覚になります。


そして、産まれ落ちたその身体を受け止めるとき、初めて対面する我が子は、見た目以上の存在感で、あたたかくて、ずっしりと重く、命を授かった喜びと責任を噛みしめる瞬間となります。


もちろん、数々の苦痛も味わいますが、出産にまつわる辛い記憶は、その後やってくる怒涛の日々もあり、いつの間にか薄れていきます。それもメリットの一つでしょうか。というわけで、私にとって出産は、いいことずくめの幸せな体験でした。



産まれる力を信じる


学生時代、アンニャ・ライトの出産にまつわる逸話や、三砂ちづるの著書に触れていたからか、いつしか“自然なお産”を望んでいた私は、出産の場所として、友人のあいだで評判の「鹿児島中央助産院」を選びました。


▶鹿児島中央助産院 https://osan.kagoshima.jp (鹿児島中央助産院ウェブサイト)


▶助産院を紹介する動画 https://www.youtube.com/watch?v=PIlys-LyX3U

(私は妊婦のお腹モデル、子どもは胎児モデルとして、ちょっとだけ出演しています)


院長の北村さんは、幼い頃から家族の出産育児を手伝い、ラオスでの助産経験も持つ、異色の助産師です。院長をはじめ、助産院で教えてもらったことは、私のお産を喜びに変える大きな力となりました。


北村さんは、お産を“山登り”に例えます。助産師と、夫を始め家族は、出産という頂上に無事辿り着くまで苦楽を共に歩むチーム。主役は妊婦、そしてお腹の中の赤ちゃん。検診のときも、助産院では胎児をひとりの人として扱い、語りかけてくれます。


「妊婦は患者じゃないのにね。」という言葉も印象的でした。妊娠は病気ではなく健康の証し。患いではなく喜ばしいこと。そう考えたとき、それまで感じていた後ろめたさは一切なくなり、心が晴れやかになって、自分の内から誇りと自信が沸き起こってきて、身体がポカポカとあたたかくなったようでした。


「赤ちゃんは自分で産まれてくるから。」という言葉も、大きな気付きでした。母親には産む力が、赤ちゃんには産まれる力が本来備わっている。その力を引き出すための様々な方法を教えてもらい、自分と赤ちゃんを信じて、お産に臨むことができました。


月夜の晩に、薄暗い和室のお布団の上で、家族に見守られながら、我が子を産む。それは思い描いたとおりの、とても愛おしくて豊かな時間でした。



自然なお産を取り戻す


このような経験ができたのは、とても幸運なことです。助産院での出産を選ぶ母親たちの中には、病院や産婦人科での経験に違和感を覚え、調べてみて初めて、助産院の存在を知った、という人も少なくありません。また、様々な理由で、望んだ場所での出産が叶わないことも多々あります。


もちろん、助産院が一番良い、ということではなく、産む場所や方法を決める基準は、人それぞれです。そして結果的にどこであろうと、無事に産まれてくれれば、それで良い。ただ、選ぶための情報や条件が限られていて、さらに今、日本中で、助産院の閉鎖を余儀なくされている状況もあります。この現状を何とかしたいと、全国のお母さんが立ち上がろうとしていて、鹿児島でも、12月にお産シンポジウムを開催しようと、有志が集まっています。来年の1月には、シンポジウムの報告ができればいいなと思っています。」


産後は三週間毎日こんなごはんを食べてました

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