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執筆者の写真ナマケモノ事務局

新年のご挨拶にかえてーーエコロジカルな智慧としての牛。ヴァンダナ・シヴァの言葉から



2021年がはじまりました。コロナ禍で、国境を越えて人々の生活様式が大きく変わらざるを得なかった中、昨年も多くのみなさまにご支援・ご参加いただき、ありがとうございました。本年も、スローを掲げ、小さく、シンプルな生活の中に、美しさ・豊かさを見出していきます。森や海とつながり直すための運動を、土に触れ、食を通じ、暮らしに結び付く文化運動に取り組みます。ユーモアも大切に、国内外のローカルなつながりを大事にしていきます。


干支では牛年です。牛と聞いて思いつくのが、世界的な環境運動家のヴァンダナ・シヴァさん、辻信一さんとつくったDVD「ヴァンダナ・シヴァの いのちの種を抱きしめて」の中でヴァンダナさんが語ってくださったメッセージです。


新年のご挨拶にかえて、DVDブックの中から、今、みなさんと共有したいヴァンダナさんの言葉を抜粋してご紹介させていただきます。あたらしい年が、みなさんにとって「ローカルという希望」を耕せる一年となりますように…。(事務局)

 


■この美しい生き物に、すべての環境問題の答えがある


牛とは、インドの世界観によれば、宇宙そのもの。牛には私たちがずっと生きていくために必要なものが、すべて揃っているから。


栄養たっぷりのミルク、そして牛糞。それさえあれば、大地は肥沃であり続ける。牛糞はバイオガスとして使える。天然の良薬、断熱性のある建材にもなる。


牛は今も重要なエネルギー源。牛さえいれば石油は不要。石油戦争も気候変動もなくなる。この美しい生き物に、すべての環境問題の答えがある。


その牛が私たちに頼むのは、ただ世話をすること、食べ物を分かち合うこと。有機農業を進めるうちに、いかに牛が重要かを思い知らされた。


インドで牛が神聖なのは、迷信ではなく、エコロジカルな知恵だったの。



■ローカルの本質は、多様な者たちの間の「つながり」


経済、民主主義、文化を甦らせるための新しい道です。複雑に絡み合う現代世界のローカル経済は、他地域の人への深い理解と連帯意識の上に作られる。


ローカルとは自分が属する場所。どこであろうと、それは命の場所。

多様な人間が、多様な動植物が生きている場所。


ローカル経済には、大工さんが必要。床屋さんも学校の先生も服を作る人も必要ね。

つまり、ローカルの本質は、多様な者たちの間の「つながり」なのです。



■地球家族として、希望を紡ぎ直そう


酸素がなければ呼吸ができない。だから私たちには木が必要。木は私たち自身だと言ってもいい。太陽なしには私たちは生きられない。生物多様性も必要。私たちは皆、生命の織物の一部なのだから。つまり、アース・デモクラシーとは、地球上の全生命の民主主義を意味します。


インドにはこんな美しい言葉があるの。「Vasudhaiva Kutumbakam(地球家族)」

この考え方と共に私たちは育ったの。


アース・デモクラシーは、地球全体に拡がるコミュニティのあり方です。

アース・デモクラシーとは、本当の自由を理解すること。


「生きる」とは「自由に生きる」ことに他ならない。

「パンか自由か」ではない。「自由のパン」を私たちは食べる。

自分でパンを作る自由、自分の種を持つ自由。「あれかこれか」ではないんです。


アース・デモクラシーは、ローカルであると同時に地球的な生き方です。

反自然、反生命、そして使い捨て文化の時代に、私たちは希望を紡ぎ直すのです。


残された道は、一人ひとりが互いに思いやり、分かち合う役割を引き受けること。

それを通じて新しい意味や可能性や能力へと互いを高め合うのです。



>>美しい映像と音楽、インタビューで綴られたDVDブック

「ヴァンダナ・シヴァの いのちの種を抱きしめて with辻信一」ご注文はこちら



ヴァンダナ・シヴァ (Vandana Shiva)

環境活動家、科学哲学博士。有機農業や種子の保存を提唱し、森林や水、遺伝子組み換え技術などに関する環境問題、社会問題の研究と実践活動に携わる。有機農法の研究と実践、普及のための拠点として、NPO「ナヴダーニャ(9つの種)」を設立。これまでに300を超える専門的論文を発表し、多数の本を著者・共著者として出版。それぞれ多くの言語に翻訳されている。「ライト・ライブリーフッド賞」など受賞多数。www.navdanya.org/


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