ザック・ブッシュ。臨床医師として活動しながら、科学者として社会・文明批評を展開、有機農業や土壌再生の運動にも取り組むアクティビスト。この一年、オンラインでその言説に度々触れてきたぼくにとって、彼は今や大事な人物だ。。いくつかのポッドキャストでの彼の語り、またホームページには、コロナの時代をよりよく生きるために頼りとなる言葉が満ちている。ホームページのバナーにはこうある。「リジェネラティブ(循環・再生)型の農業と、医学的な知恵を通して、土壌の健康と食の主権回復への道を歩もう」
以下、そのホームページから少し抜粋して訳してみた。
<大いなる蛇行—自己紹介>
私の仕事は、人間と、その家である地球の健康のために尽くすことです。決定的に大事なこと、それは健康や長寿へ向かう道が、まず意識の集合的な覚醒から始まる、ということです。それは、これまでのように自然と闘うという意識ではなく、自然の中でこそ私たち人間の命もまた栄えることができる、という意識です。
内科、内分泌科、終末医療を専門とする医師としての経験、またマイクロバイオーム研究を通して健康、病気、食をめぐる社会システムなどに注目してきた研究者としての経験を土台に、私は、「セラフィック」社という企業を立ち上げ、また、非営利団体「農のフットプリント」を創設してきました。その使命は、健康と環境の危機に対する、対症療法ではない根本的な解決法を見出すことです。
学ぶことへの情熱は、私をさまざまな学問分野へと導いてきました。中でも、土壌や水の生態システムが、人間のゲノム、免疫、腸・脳の健康に対してどういう役割を果たすか、という研究があります。こうした探求を通じて、私は確信するに至りました。私たちは今こそ、従来の化学的農業と医薬システムに別れを告げ、消費者、農民、巨大企業が人間と地球の健康な未来のために共に働けるような道筋を見出さなければならないのです。
<エコロジー>
生物学の一翼を担っているエコロジーは、生命体相互のつながり、生命とそれを取り巻く環境との関係性を扱う学問だ。
それにしても驚くべきことは、人間というものがこれまで、地球上の生命現象を形づくっている生命体と自分たちとのつながりについての無知の上に社会を築いてきてしまった、ということだ。
誕生の瞬間から、私たち人間は自然から切り離される。子宮から手袋をした手で引き出され、消毒された病院の機器、エアコンで調節された空気、プラスチック、カーペット、塗料、車のポリエステル・シート、ペットボトル、ゴム底の靴などでできた世界にやって来る。母なる地球と関わる機会のなんと少ないことだろう。
私たちは全てを想像し直さなければならない。テクノロジー、生産物、家、学校、コミュニティ、交通・・・。全てを自然界の文脈の中に置き直してみるのだ。もしある製品が、私たち人間より前に、まず母なる自然のためにあるものだとしたら、どうだろう? もしテクノロジーと建築が、自然界が与えてくれる型に基づいて設計させるとしたらどうだろう、というふうに。
<農>
ちょっと立ち止まって考えてみよう。1880年に、50%のアメリカ人が食べ物をつくっていた。現在、農業に従事する者は2%に満たない。また違う視点から見ると、1945年に、アメリカの食物の45%は家の裏庭で生産されていた。それが現在は0.1%だ。
私たちは化学的農業による巨大農場の時代を築いてきた。その結果は土壌、水、海、そして人間自身の健康の破壊だった。だが、私たちが破壊してきたその同じ地球上に、過去何千年も続いた緑滴る再生・循環の生態系が蘇ることは可能なのだ。
自らを創造し続ける母なる自然の営みに参加できるよう、驚くべき多様性に満ちた他の生命たちとの共創的な関係を学び直そうではないか。そうすることで、農民と消費者は共に、これまでの歴史上、最も豊かな土壌、生命の繁栄、そして健康な人生に恵まれた新しい時代の証人となることができるのだ。
共に、立ち上がろうではないか。
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