ナマケモノ事務局

2020年4月27日4 分

何も恐れることはありませんーまずは大地とつながり直すこと サティシュ・クマール

最終更新: 2020年4月30日

新型コロナウィルスの感染が世界中に広まるのに伴って、恐怖や不安もまるで感染症のように広がっているようです。そのことを深く憂慮するナマケモノ倶楽部会員からの提案で、サティシュ・クマールさんが2009年に築地本願寺で行なった「恐怖と平和」についての講演の映像を、ここに公開することになりました(記事下でご覧いただけます)。そのテキストに、講演時に通訳を務めた辻信一さんが加筆修正を加えた文章も添えておきます。
 

ナマケモノ倶楽部は、多くの困難と悲しみを引き起こすコロナ危機のただ中にあっても、この試練を学びの機会と捉え、その向こう側に開ける新しい世界を信じて、そこで芽生え、育ってゆくものを想像しながら、種まきを続けたいと思います。


何も恐れることはありません
 
ーまずは大地とつながり直すこと

サティシュ・クマール(思想家、イギリス)

翻訳:辻信一

恐怖を越えて、信頼の種をまきましょう

私たちは世界のリーダーたちに「平和を作ってほしい」と要請します。オバマ大統領にも、中国の指導者たちにも、「どうか平和をもたらしてほしい」と。しかし、ブッダはみなさんに問いかけます。「あなたは平和ですか?」と。もしもあなたが平和でなければ、どうして他の人に平和を期待することができるでしょう。
 

 
現代世界は恐怖に満ち満ちています。
 

 
世界の平和に向けての第一歩は、その恐怖を越えること。私たちの心の中に「Seeds of Trust=信頼の種」をまくことです。
 

 
あなた自身を信じて下さい。そしてこの宇宙を信じて下さい。「All shall be well=全てはきっとうまくいく」と。何も恐れる必要はありません。なぜなら、世界は私たちを養うために全力をあげて働いてくれているからです。太陽は私たちを暖めるために輝き続けている。大地は穀物や果物、野菜や花を毎日与え続けてくれている。だから、まずこの大地としっかりとつながり直すことです。自分自身の心の平和のためには、この大地との仲直りが必要なのです。もしも、その代わりに、私たちが自然を、大地を支配し続けようとするならば、世界平和はありません。

対自然戦争の勝利は、同時に私たちの敗北です
 

しかし現実はどうか。まるで人類が自然界を相手に戦争をしているかのようです。雨をもたらす森林を破壊し、海の生きものを過剰に捕り続け、川を汚染し続けている。農薬、化学肥料などの毒を大地に注ぎ続け、動物たちを檻の中に押し込んで、むごたらしい目に合わせる。こんなふうに自然界を痛めつけておいて、世界が平和でありうると思いますか?
 

 
自然は、ただ単に環境として私たちの外にあるもの、山や森や川や生きものなどの集まりではありません。私たち自身もまた大自然なのです。だから、私たちがもし、この自然との戦争に勝利したとすれば、それは、同時に私たちの敗北なのです。
 

 
インドでは「全世界の生きとし生けるものは一つの家族」という言い方をします。空を飛ぶ鳥たちは私たちの兄弟姉妹。森の生き物たちも、木々や草花もまた私たちの兄弟姉妹です。

あなたがピースメーカーです


 
宇宙の全ては、互いに切り離し難くつながり合っています。そして私たち人類の存在は、この大自然に完璧に依存しているのです。この「つながり」という根本的な原理を忘れたがために、私たちは今、様々な大問題を抱え込んでしまいました。地球温暖化や気候変動のような深刻な危機もまた、自然とのつながりが断たれてしまったことの結果です。
 

 
自分自身との関係における平和、自然界との平和を取り戻すことによって、私たちは世界に平和をもたらすことができるでしょう。一つのやり方を世界に押し付ける必要はありません。世界にはたくさんの宗教が、政治体制が、民族が、文化が共存することができるのです。

この平和は、しかし、国の議会や世界の指導者たちが上からもたらしてくれるものではありません。下から、本当のリーダーである私たち民衆から作り上げるものです。それが私たち一人ひとりの責任です。私たち一人ひとりがリーダーです。誰もがリーダーとしての資質をもつ存在なのです。
 

 
リーダーとして共に、世界を平和へと導こうではありませんか。


平和フォーラム2009「おかげさまからつなげる世界」

開催日時:2009年11月21日 於:築地本願寺

トーク︓サティシュ・クマール(環境運動家)、辻信⼀(⽂化⼈類学者)
 
    Yae(半農半歌⼿)、松本智量(延⽴寺住職)
 
⾳楽︓Yae(半農半歌⼿)、松⾕冬太(ソウルシンガー)
 
撮影・編集︓本⽥茂    制作︓ナマケモノ倶楽部(2009年)


サティシュ・クマール

1936 年インド生まれ。9歳で出家しジャイナ教の修行僧となる。18 歳のとき還俗。マハトマ・ガンジーの非暴力と自立の思想に共鳴し、2 年半かけて、核大国の首脳に核兵器の放棄を説く1 万4000 キロの平和巡礼を行う。1973 年から英国に定住。 E.F. シューマッハ―(イギリスの経済学者、『スモール・イズ・ビューティフル』著者)とガンジーの思想を引き継ぎ、 イギリス南西部にスモール・スクールとシューマッハ―・カレッジを創設。

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