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巻頭コラム43 | |
![]() 山の途中から見下ろしたチモン (撮影:辻信一) |
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ブータンから戻りました。ぼくにとって5回目となる今回は、前半、念願の東部ブータン奥地への個人的な旅を行い、後半にナマクラが企画したGNHツアーのツアーリーダーとして、20数名の方々と中部から西部を回りました。(ツアーについての報告はいずれ、ナマクラ事務局の方からさせてもらいます。)
ぼくが行った東部の村は、ペマガツェル県のチモンです。首都のティンプーから車で丸4日、そこから歩いて一日半。日本のぼくの家からだと約一週間。これが片道ですから、ただ行って帰って来るだけでも2週間。スローツアーとはこのことでしょうか(!?) チモンはぼくの友人であり、ぼくのブータンへの一連の旅のガイドであるペマ・ギャルポの生まれ故郷です。ペマによればぼくと彼とは前世は兄弟同士だったので、ぼくはいわば、まだ見ぬ家族や親戚に会いに行くような感じです。やっと車を降りて、つり橋を渡り、迎えに来てくれた村人たちや馬たちとともに、いよいよ山道へと踏み入った時、異次元の世界へと向かうタイムトンネルの中に入るような不思議な感慨を覚えました。 この旅を終え、ぼくはいまこうして日本の日常にたち戻っています。理性は確かにチモン村がちゃんと同じ地球上のある場所をしめて、現に存在していることや、ここと同じ時間が、あそこにも流れていることを知っているのですが、それでも、あの山越えの間にタイムスリップしてしまったという「アリス的」(あるいは「おむすびころりん的」)実感もまた、ぼくのうちに生き生きとリアルに残っているのです。 山の上からはるか下方に村を見下ろした時の感動は忘れません。昔々、その場所は岩で塞がれていてそこから先には誰もいけなかったそうです。ある聖人がはるばるやってきたときにも、目の前に広がる雲海を見て、海だと思い、ここが地の果てだと考えて引き返した、と。その後やってきた他の聖人によって岩戸が開かれ、今では、村へと降りてゆく道がつくられています。 天然の要塞とはこのことでしょう。村は三方を急峻な山が壁のように多い、一方は、崖となって急勾配ではるか下に流れる急流まで一気に落ち込んでいます。隠れ里とはこのことでしょう。高い山を越えて、木々の間から真下を覗き込むまでは、誰も村の気配すら感じることができないのです。ぼくがチモン村に足を踏み入れる最初の外国人になるはずでしたが、調べてみるとすでに一人、西洋人が訪れたことがあるそうで、ぼくは今のところ、二人目の外国人です。 (続く) |
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