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巻頭コラム27 | |||
ウィンドファーム創立20周年、おめでとう! ぼくがウィンドファームとお付き合いし始めてから、まだ10年も経っていないけど、なんか、20年も前から親しくさせていただいているような感慨を覚えます。 ウィンドファームは日本におけるフェアトレードのパイオニアです。今でこそ、世界に広がったフェアトレードですが、社長の中村隆市さんはフェアトレードという外来語を知る前から、独自のやり方で公正なビジネスを模索してきました。すごい会社だな、とつくづく思います。そういう会社と組んで環境運動をやってこられたことを、ぼくは誇りに思います。特に、中村さんとはナマケモノ倶楽部をつくるなど、いろんなことを一緒にやってきました。カナダ、エクアドル、ブラジル、ビルマ、メキシコ・・・、いろんなところを共に旅して歩きました。彼と過ごす時間はいつも楽しいものだったし、ぼくの人生をますます意義深いものにしてくれました。 でも、9年のお付き合いの中で、今ほど、ウィンドファームの素晴らしさを痛感し、中村さんを同志として誇りに思ったことはありません。それは、ついこの2週間くらい前に南米エクアドルのインタグ地方の森から届いた報せのせいなんです。鉱山開発に反対して森を守ろうとする住民たちの意思を受けて、エクアドル政府はついに鉱山会社に退去を命じました。それは、もう9年も、ぼくたちが待ちに待った報せでした。 アンデス山脈の中腹にあるインタグ地方は、世界有数の生物多様性を誇る雲霧林に覆われています。その貴重な森林を伐採して鉱山をつくろうとするグローバル企業と、外貨獲得のためにそれを後押しする政府に対して、現地の住民は森を守るために闘い続けてきました。グローバル経済の観点からすれば鉱山開発はまさに「豊かさ」への近道でした。企業は札束をちらつかせてコミュニティの分断を図り、他方では暴力的な手段をも駆使して人々を力で屈服させようとしました。しかし住民たちは、その「豊かさ」を拒否し、それとはちがうもうひとつの豊かさを選びました。それは森の豊かさです。森と引きかえに一時的な富を手にすることより、自分たちの生存を保障してくれる森を子どもたちやそのまた子どもたちに残すことを選んだのです。 ぼくと中村さんを結びつけたのは、そのインタグの森でした。1999年の初めにぼくたちはそこを訪れ、現地の農民やNGOや自治体のリーダーたちと会って話し合いました。 中村さんは当時を振り返って、こう言っています。 「当初、鉱山開発を進めようとしていたのは、日系企業でした。現地の住民のほとんどがそれを食い止めたいと思ったわけです。でも、その地域は住民の9割が国連のいう貧困ライン以下で、ただ開発反対というだけでは運動を維持することはできなかった。自然破壊型の開発に代わる地域発展のヴィジョンを示す必要があったわけです。で、その核として森を守る農業、つまりアグロフォレストリーがあったわけです。つまり、地域自給的な農業に、有機コーヒーのような商品作物、エコツーリズム、地域の民芸品などによる現金収入を組み合わせてやっていきたいという地元の人々の熱意に動かされて、私はコーヒーのフェアトレードを始めました」 数日の滞在の後、ぼくは中村さんが現地のコーヒー生産者たちを前に、「わかりました。ここでとれたコーヒーはすべて私が買いとります」と言い切るのを見て、彼の思い切った決断に感動しながらも、心の片隅では、「大変なことになった、大丈夫だろうか・・・」という不安を感じたものです。今思えばそれはひとつの歴史的な瞬間でした。フェアトレードの最良の形が生まれたこの瞬間に立ち会った者たちは、間もなく中村さんを中心に新しい環境=文化運動「ナマケモノ倶楽部」を生み出しました。 帰国後、ぼくたちは早速、インタグのコーヒーを日本に広めるための活動を開始しました。数年のうちにウィンドファームとナマケモノ倶楽部の周りに、仲間たちが「スロー」、「カフェスロー」、「スローウォーターカフェ」などの会社を次々に起こしました。どれもインタグの森と、そこに住む人々の暮らしを守ることを目標に掲げる会社です。 インタグのあるコタカチ郡のアウキ知事夫妻から、燃えている森に水のしずくを運ぶあのハチドリのお話をぼくが聞いたのも、中村さんと一緒の時でした。インタグの闘いのリーダー、カルロス・ソリージャによれば、彼が買いとって守っている森だけでも、その中に住むハチドリの種類は、北米大陸全体に棲息するハチドリの種類よりも多いのだそうです。彼がそう誇らしげに言うのを聞いたときも、ぼくと中村さんは一緒でした。ハチドリはもちろん、多くの鳥が集まる楽園のようなソリージャ家の庭を眺めながら、ぼくたちはカルロスが、闘いに勝利して心おきなく好きな芸術や科学に打ち込める日の夢を語るのを聞いたものです。 インタグのコーヒーのことを、ぼくたちは「森を守り、つくるコーヒー」と呼んできました。それが単なる空疎な宣伝文句でないことが、今誰の目にも明らかになりました。フェアトレードという言葉の本当の意味が、そこにクッキリと現れています。 改めて、インタグの森を守り抜いてきた現地の方々にお祝いの言葉を贈るとともに、彼らを日本から支えてきた中村さんはじめウィンドファームの皆さん、そしてまたそれに連なる、消費者を含むすべての皆さんに敬意を表したいと思います。 Viva Intag, viva! |
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