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巻頭コラム05

オリンピックなまけます

59年目の夏。暑いですね。蝉しぐれが、読経のように聴こえます。 皆さんいかがお過ごしですか。 またオリンピックだそうですね。あまり暑いので少し「水を差し」たくなります。 アメリカや日本は以前、確か、ソ連のアフガニスタン侵略を糾弾してモスクワ五輪を ボイコットした。今度はアメリカのアフガニスタンやイラク侵略に抗議してボイコッ トという話を聞かない。BBCの記者がおとり調査で組織委員会の相変わらずの腐敗体 質を暴露した。招聘のための賄賂工作ばかりでなく、スポーツに名を借りた「公共事 業」と大規模な自然環境破壊破壊という点でも、長野冬季五輪は五輪史上に汚点を残 した。1968年のメキシコオリンピックといえば、日本人は「サッカーで銅メダル をとった大会」ぐらいしか覚えていない人が多いが、その直前には、オリンピック関 連施設をめぐる政権がらみの汚職に抗議する市民・学生の素手のデモ隊に対して、こ れを開会までになんとか沈静化させようとする政府が暴力的な弾圧に乗り出して、最 大300人とも言われる死者を出した。(参考:週刊金曜日no.519)

永田町周辺には今、改憲気分が高揚しているという。今日の朝日新聞の「改憲という 気分」という記事によると、これと呼応するかのように「日本人よ自信を持とう!」 というメッセージがはんらんしている。自民党の広報部が「今年は五輪もあり、国が 強く意識される。日本をテーマに」と、広告会社に注文を出したのだそうだ。「未来 憲法」というタイトルの憲法私案をつくったある官僚は「経済が落ち込み暗いご時世 だから、元気が出る憲法をつくるべきだ」。「日露戦争に学ぶ会」の発足を提案した 民主党の松原議員は、若々しくまっすぐだった明治時代の日本人のように、「今、日 本人はリフレッシュして頑張らないといけない」と言う。そして、「憲法を改正して 毅然と海外にものを言えるようにならないと問題は解決しない」と。

そういえば「元気をもらう」という表現をよく聞く。ぼくはそれをきくとちょっと居 心地が悪くなる。やっぱりオリンピックは憂うつだ。五輪に元気をもらおうと、人々 はまたテレビに群がるのだろう。永田町の「旧快楽主義者」たちはも盛り上がって、 元気の出る憲法をつくって、元気に海外へ進出してゆくつもりだ。

皆さん、この夏はくれぐれも「元気」にご注意を。

ところで来年は万博。うんざり。

さて、改憲の空元気の毒にあてられている人に、「9パン」の高木みのりさんが思い 出させてくれたホピ民族の「平和宣言」を贈ります。ここにまぎれもなく息づいてい る「9」のエネルギーで「リフレッシュ」してください。 辻信一
(注:これは北山耕平さんの訳なのですが、ぼくの訳を( )の中に入れておきます。また、北山さんは英語のfightに 「戦う」という字を使っていますが、ぼくは「闘う」の方がいいと感じる。興味のある 人は北山さんのHPを見てください)

ホピ平和宣言 起草者 
トーマス・バニヤッカ(Thomas Banyacya)

本当のホピの人々には、この地球で真に平和を求めるすべ ての人々の頭と魂をひとつにするだけの力が、あたえられ ている。

「ホピ」とは「平和に満ちた人々」を意味する。そして、 真に最も偉大なる力とは、平和の力であり、それこそが偉 大なる精霊の意志である。

だが、本当のホピの人々が戦うことをしないのは、偉大な る精霊からけっして武器を取ってはならないといわれてい るからだとばかり考えてはならない。 (辻訳:しかし、だ。偉大なる精霊からけっして武器を取ってはならないといわれて い るからといって、本当のホピの人々が闘わないと思わないでほしい。)

生命の正しい道と信じるもののためには、われわれは死ぬ ことさへもいとわない。 殺したり、傷つけたりすることなく戦う方法を、本当のホ ピの人々は知っている。

偉大なる精霊の光のなか、真理と建設的な力を用いて戦う すべを、本当のホピの人々は知っている。

生き残るためのただひとつの道である質素でスピリチュア ルな生き方を求めるすべての人たちの頭と心にさわるよう に、働きかけ、伝えていくことで、どうやって世界中の子 供たちに真の生きる道の手本をしめせばよいのかを、本当 のホピの人々は知っている。

本当のホピの人々は、地球のうえでいかに生きるかについ ての聖なる知識を守っている。なぜなら本当のホピの人々 は、この地球が、一人の、生きて成長しつつある人であり、 そのうえにあるいっさいのものが、彼女の子供たちである ことを、知っているからだ。

聞く耳をもち、見る目をもち、これらのことを理解するハ ートをもった世界中のすべての人々に、生命の正しい道を しめしてみせるそのやり方を、本当のホピの人々は知って いる。

すべての真の地球の子供たちの頭とスピリットとをつなぎ あわせるにたるじゅうぶんな力を呼び起こして、それを建 設的な力と、さらに偉大なる精霊とむすびあわせることで、 この世界の苦しめるすべての場所で、苦しみと迫害に終止 符を打つことができるかもしれないことを、本当のホピの 人々は知っている。

本当のホピの人々は、ここに、このホピの力こそが、世界 を変える原動力であることを、宣言する。

われわれは、すべてのものが生きており、われわれの言葉 を聞き、われわれを理解していることを、信ずる。

ホピは不毛の大地に暮らしているが、われわれは、われわ れが「マーサウ」と呼ぶスピリットによってそこに導かれ たと信じているのだ。われわれの役割は、ある種の知識を、 全人類のために守り続けることである。この知識は、すべ ての(先住民の)国々を理解し存続させ続けるために必要 なものである。
トーマス・バニヤッカ       
伝統的ホピ一族通詞         

-------------------------(注 1) 一族に伝わる精神的な教えと平和のメッセージを世界に伝えるホピのスポーク スマンだったトーマス・バニヤッカさんは、1999年2月7日に亡くなりました。 89歳とも91歳とも92歳ともいわれています。バニヤッカさんは1948年に伝統 的ホピの長老たちによって選び出された四人の通詞の一人です。「ホピの予言」 といまではいわれるようになった古代からホピ一族に伝わる教えを国連などを つうじて世界に広めることに貢献しました。彼が広めた教えの核にあるものは、 1940年代からはじまっているさまざまな地球規模の出来事が彼ら一族の教え に照らしてみたところ、「浄化の日」のはじまりに合致していたこともあり、 いまこそホピ族が何世紀にも渡って保ってきた伝統的な平和でスピリチュアル な教えに全人類がもう一度帰るべきだというものでした。ホピの教えを広める ために彼は世界中を旅して回り、日本列島にも1988年に訪れて足跡を残し、8 月8日に八ヶ岳山麓にて開かれた「いのちの祭り」で講演をおこなっています。

(注 2) 「ホピ平和宣言」は、宮田雪製作監督になるドキュメンタリー映画『ホピの予 言』(1987年の第12回アメリカン・インディアン・フィルム・フェスティバ ルにおいて最優秀ドキュメンタリー賞受賞)のために、監督からの要請を受け て北山耕平が第一稿を翻訳しました。その後この「ホピ平和宣言」は、堀越由 美子さんの企画監修、スタジオ・リーフが製作販売した「人間家族」という雑 誌の別冊『夜明けへの道−−はじまりの500年に寄せて アメリカ先住民族は 語る』(1992)に収録されました。北山耕平はこの間、いつかこの平和宣言 を新しく翻訳しなおしたいと思い続けましたし、セイクリッド・ランの日本代 表でもある堀越由美子さんからも、同様の要請がありました。初めてこれを翻 訳したときに、その言葉の重みにとらわれて、そして小生が余りにも若かった ことも手伝って、うまく表現しきれなかった部分があったのです。最初にこれ を翻訳した際に監督の宮田さんから渡された平和宣言の原文は、今回ここに再 録するものの最後の二節が欠けていました。宣言文としてはその方がふさわし いと、英語版の編集者がカットしたものでしょう。今年になってそのカット部 分が収録されている原典とも呼べるようなものが手に入ったために、もう一度 腰をすえて翻訳しなおすことにしました。ご覧のものは、したがってこれまで 日本語で発表されている「ホピ平和宣言」とは異なっています。ホピの精神が 少しでもあなたに伝わることを祈りつつ。     北山耕平 1999年6月8日