辻信一です。今日の朝日新聞のBe欄はロハスの大特集です。
いつも聞かれることなのでちょっとロハスについて書いておきたいと思います。このことば(LOHAS=Lifestyles of Health and Sustainability)について知らない人にはなんのことやら・・・でしょうけど。
経過をまず押さえておけば、ぼくの知る限り、このロハスの源は、アメリカのポール・レイとシェリ・アンダーソンの『カルチュラル・クリエイティブズ』(2000年)という本です。「アメリカの真ん中にフランスほどの規模の、全くこれまでのアメリカとは異なる価値観をもったもうひとつの国が出現しているとしたら・・・」で始まるこの本はアメリカでは当初結構すごいインパクトをもっていたんだけど、多分ぼくの推測では2001年の9・11事件で、一度冷水を浴びせられた格好になったんだと思う。カルチャー・クリエイティブのことを日本に紹介したのはぼくの知る限り、地域通貨の世界的な権威として知られるベルナルド・リエターです。彼のあまり読まれなかった方の本、『マネー』(2001年、ダイヤモンド社)は興味の尽きない本で、今でもロハスについて考えるには大事な本です。ぼくはありがたいことにこのリエターに会って、親しいお付き合いをさせてもらいました。彼の言うCC(カルチャークリエイティブ)とか、陽の経済と陰の経済、陽のお金と陰のお金は、ぼくたちが言ってきたスローという概念と見事なくらい響きあうものだったわけです。
2003年のはじめには、ぼくはアメリカ、コロラド州のボウルダー(雑誌LOHASの発祥の地!)に彼を訪ね、本を一緒に書くつもりで一週間合宿をしました。これはぼくにとってとてもすばらしい経験だったのですが、ぼくがナマケモノのせいで、本はおろか、その報告もちゃんとしていません。この滞在中に電話で彼の友人であるポール・レイと話し合いました。ポールによると日本にも、ベルナルドを通じて何人かの個人がCCについて興味をもち、CC的な社会意識調査をしなければならないと考えているということでした。環境型ビジネスの先頭にいる木内孝さんやピーター・ピーターゼンさんたちだったと思います。
CCについてはぼくもいろんなところで触れてきました。2003年の夏に出た『スローライフ100のキーワード』(弘文堂)には、100のうちのひとつのキーワードとして「カルチャー・クリエイティブ」を紹介してあります。また『スロー快楽主義宣言!』ではもっと詳しくCC及びロハスをとりあげています。
2002年にはこんなことがありました。ぼくが雑誌『ソトコト』に対談連載をしていることはご存知の方が多いと思いますが、その発行者であり編集者である小黒さんの依頼で、某大企業の広告を手がける某広告会社の方々にレクチャーをしたことがあり、その時に、ぼくがしたのがCCやロハスの話だったのです。小黒さんはこの話をすごく喜んでくれていましたが、今思うと、あの時の話をヒントにして、その後、ソトコトなどを背景にロハスブームの仕掛け人として活躍されるわけで、スローフードの時と同様、彼の勘の鋭さには脱帽です。その点、専門の広告屋さんの方が鈍いようですね。
なんでこんなことをぼくが書いているかといえば、それは、ブームの波にもまれて我々の運動がおぼれてしまわないように、概念的な整理をしておいたほうがいいと思うからです。スローライフ・ブームの時に、ぼくたちが何度も「スローとは」と振り返ってみたのと同様です。特に地域通貨などの「もうひとつのお金、もうひとつの経済」観という点を通じたロハスとナマクラ運動との類縁関係を押さえておくことが大事だと思えます。
ロハスでやはり気になるのは、それがスローフードとちがって、アメリカから来ていることです。ご存知のようにスローフードの大きな魅力は「グローバリズム」への反発や「アメリカニズム」への違和感が根強くあることです。LOHASがもともと商業的な雑誌の名前だ、というのも気になります。しかもこの雑誌、ニューエイジ風で薄っぺらいエキゾチズム、オリエンタリズム、精神主義に満ちていて、ぼくの個人的な好みには合いません。またロハスという言葉ははじめから、マーケティングの用語として、つまり「ロハス戦略」として成立したということも知っておいたほうがいいでしょう。ポール・レイらが描いたCCから、多くのエッセンスを意識的に抜き取った後に、ビジネスマンがつくり直したという感じがします。だからこそ、商業主義や大企業にとってスローよりさらに使いやすく、だからこそ日本のビジネスが今その周囲に群がっている、ともいえるでしょう。ちなみに、ロハスという言葉はアメリカではほとんど知られていないようです。
どちらにしてもアメリカの方を向くよりは、ぼくらとしてはアジア的な、日本的なロハスやCCというものを探していきたいところです。ボウルダーで宣伝されているヨガより、ブータンのGNHのがかっこいいですよね。その辺はぜひ『スロー快楽主義宣言!』を参照してください。
でもまあ、ブームとか流行というのは所詮そういうもんだといわれれば、それはそうかもしれません。スローライフもそうですが、目くじらをたてて、ロハスとは本来こういうもの、などという議論をする気はありません。ナマクラはロハスだと、大きな声でいう必要もないでしょうが、ナマクラはロハスですか、といわれたら、否定する必要もないのです。なぜならナマクラはCCやロハスということばが生まれる前からのCCであり、ロハスなんですから。ぼくらが取り組んできたライフスタイルの転換(スローダウン)を目指す運動を淡々と進めていきましょう。
最後に、ロハスはもちろんスロービジネスにとってもビジネスチャンスです。「ロハスマーケット」でのSBS、ナマクラ関連企業の皆さんの活躍を期待しています。
ぼくの以上の話をたたき台として皆さんもロハスについて考えるところがあればぜひ教えてください。
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