| <アウキ・ティトゥアニャ>
日本に招聘する黒人舞踏団ベレフの渡航費が足りなくて、アウキ知事の家にお金を借りに来た。
鉱山開発からフニン村を守った、偉大な知事のお家に、借金に。しかも日曜日の午前中。
だけどアウキさんは、そのフニン村から昨晩出て来たばかりで埃まみれの私を、
素敵なパジャマ姿で、でも快く迎えてくれた。
「朝ご飯がまだだから、一緒に食べよう。君は運がいい。子供達が朝五時に起きてとってきた
ごちそうがあるよ!」と嬉しそう。やったあ、しばらくお肉食べてないしな、と思ったのも、つかのま。
3年に一度、だというそのごちそうは,なんと、、、セミの素揚げ。セミの山と取り皿を前に躊躇している
私をみて、アウキさんは「そうか」とつぶやくと、台所の戸棚から、「お箸」を出してきてくれた。
「そうじゃなくって!」と思いながら、付け合わせのトウモロコシ、トウモロコシ、トウモロコシ、トウモロコシ、
トウモロコシ、セミ、トウモロコシ、、、、、。くらいの割合で、いただいたセミは、香ばしくてわりと美味しかった。
3年に一度コタカチにやってくるこのセミは、古代から、キチュア族の人たちにとって貴重なビタミン源なんだそう。
大規模農業で商品作物を輸出しようと農業のあり方が変わっていくなかで、人々の食生活も変わってきている。
在来種の野菜をコミュニティーで育てていくことを応援しているんだと、キクイモのようなものも、出してくれた。
アウキさんのモットーは「多様性の中の団結」。住民なら誰でも、子供も入れる民衆議会を運営するなど、
参加型の政治を通じて、民族間の融和を進めている。
「コタカチには四千メートルの山々に囲まれ、亜熱帯性の気候のなかでは色とりどりのランが咲き乱れます。
わたしたちが誇るのは、自然の多様性だけではありません。キチュアのほかアシュアル、ワオラニなどの
アマゾン先住民、メスティソ、アフリカ系の子孫たちの豊かな文化が息づいています。生態系の保全とは、
民族的、文化的な多様性を認め、保全していくことです」
人間同士の多様性を認め、他の生物との関わりをむすびなおしていくこと。
南米の小国エクアドルからの、このアウキさんの視点が、日本の憲法9条の可能性をひろげる
大事なひとしずくになるに違いないと思う。
アウキさんには、風格がある。言葉をとても大事に話す。真実とずれないように、慎重に話す。
政治家というのは、人々の言葉を聞き、話し合って、言葉で未来を決めるしごと。
言葉を丁寧に使い直すことで、見えてくるものがある。
「進歩というと、前を見つめたり、上を仰ぎ見ることだとふつう考えます。
ちょうど、その逆をやるのです。つまりは、後ろを振り返りながら、下を見つめる――。
後ろを振り返るのは、かつてこの地で先住民がもっていた土地利用の技術を掘り起こすため。
下を見つめるのは、足元の土をしっかりと見つめるということ。
伝統技術と土を保全するなかに、わたしたちの発展の基礎を見い出すのです」
「掘り起こすべき資源は、鉱物ではなく、智恵という人的資源なのです。
自然を破壊する開発ではなく、自然を保全することによってなりたつ発展のための。
たとえば有機農業、エコツーリズム、クリーンエネルギー、伝統文化の振興など・・・」
セミのごちそうを食べ終わると、アウキさんは、皮の水筒ホルダーのサンプルを出してきて言った。
「インタグのカブヤで水筒ホルダーを作っているそうだけど、コタカチは皮産業の街。
こっちの方がずっとかっこいいよ。日本のマーケットにどうかな。」、、、ちょっと微笑ましい。
政治家だけど、ものづくりにも興味がある。そして、やっぱり地元の文化が一番好き。
アウキさんは、好きなものが多いだけでなく、そのことをすぐに話したがる。
詩や絵をかくこと、音楽のこと、市庁舎の知事室の壁には、ゲバラの肖像。
家族と豊かな時間を過ごすこと、好きなものを楽しむこと、政治を通して未来をつくること。
これらのことは、全部つながっている。私の国では、これらが離れていることが、
そもそもの間違いなんじゃないかとアウキさんのようなリーダーをみて思う。 |