世話人のコーナー
辻信一
中村隆市
アンニャ・ライト
その他のコラム
 
その他

その他のコラム


あわてない あわてない slow is beautiful
金井 重(かない・しげ)

(ナマケモノ会員で世界100カ国以上を旅して歩いている、素敵なおばあさん、金井重さんが辻さんにプレゼントした詩を紹介します。)

乳ガンで退院したばかりの旧友は
「手術も順調 術後も順調 
癌は自分で気がついて 自分で病院に行ってきた
ここまでは 幸運よ でも自分でやれなくなったら」

私はあわてて
「そのとき『今日は死ぬのにもってこいの日』なのよ
ここでひとりだからいいのよ」

彼女は「私もその詩は好きだ」
それにしても 「ここでひとりだからいい」は 我ながら急ぎすぎよ

林住期の林をぬけ遊行期の橋まで来て
まだ20世紀のスピードなのね
私は呪文を唱える
あわてない あわてない slow is beautiful

ハガキが届いた
『今日は死ぬのにもってこいの日』だとシゲは言うけれど
今日のようにほどほどに晴れた日には
花も木も雑草も土も みんな気持ち良さそうにうっとりしている
背高ノッポの電信柱までが デッドッド デッドッドと部落の道を
行進しているようだ

今日は大潮 沖のリーフに白波が立って
そこから幾すじにも 色違いのブルーが 縞模様をつくっている
ぼんやり石に腰かけて、見ていると
ずっと ずっと このまま永遠に ここで呼吸したいと思うよ

遊行期の橋杭に腰かけている友の姿が
『環境が私たちの喜びとなり、私たちが環境の栄光となる』マハリシの絵となる
近代科学 近代文明の誘惑も スピードも この橋には似合わない

私は呪文を唱える
あわてない あわてない slow is beautiful
私はこの橋を歩き出す 

上にもどる
コラムの目次にもどる