世話人のコーナー
辻信一
中村隆市
アンニャ・ライト
その他のコラム
小さな種
ふらふら旅ある記
その他
ナマケモノ倶楽部理事
、
スローウォーターカフェ代表
の藤岡亜美による、
カルチャークリエイティブな
日々の日記、
ナマケモノクロール!
●Vol
.
9 Peace Walk
(絵:藤岡亜美(母))
(作:渡邉むすび(娘))
※チョコレートのタグで折り紙していたのを持ってきてくれました。「かあちゃんがむーちゃんをだっこしているところ」だそう。ちゃんと2つ重なってます。
朝、SWCに顔を出してミーティング。今日はむすびと一緒にいる一日。同じビルの中に自宅と会社があることと、実家が両家とも地元亀戸なこと、理解のあるスタッフのみんなとパートナーにも甘えて、3歳まではお金を払ってあづけるというのはしないと決めている。どんなに意味深い仕事でも、子どもと向き合う時間を削っ てまでやるべきことはないんじゃないかと、今はそう思って、工夫することにしている。
一日の流れを確認して、書類に目を通し、お待ちかねの公園へ。ボール遊びにあきてきたら、近所によい魚屋さんがあるので向かう。向かう、といってもむすびと歩いているとたいてい、「どこに向かっているのか」は分からなくなる。散歩中の2匹の犬と遊び、立ち止まってトラックに描かれた牛の絵に手を振り、いつも会う近所のおじさんと立ち話し、なんでもないスタンドを「これなあに」と遊んだり、路地に入っていって隠れたり、旗に手を触れてみたりするうちに目的地を見失う。
だけど、おかげで私も、大きな木の根っこが実はウサギの形をしていたことに気づいたり、「こんど通るときは咲いているかね」と、気づかなかった植木の蕾を眺めてあとで名前を調べたり、むすびに便乗して、蝋梅の黄色い色にわあーと叫ぶことだってできて、一人で歩くときと到底同じ世界とは思えない、ディープなご近所半径300メート ルを楽しんでいる。本来、せっかちな性格だから、それが「修行」に感じられるときも、もちろんあるのだけれど。
こんな風に、ぶらぶらとあるいていると、通り過ぎた角から、白衣に長靴のおじさんが自転車をまたいで出てきた。一本入った路地に気の利いた食事処が数件あるから、料理屋さんだろうか。隣にはカートをひいたおばあさん。2人の間隔や会話の様子で、すぐに飲食店の板前さんとそのお母さんだと分かる。ご近所だけど知らないひと、というのもまだまだいるなあ。
おばあさんは、カートを引きながら、前方をくねくねと歩くむすびを見つけた。同じ道をはしゃぎながら歩く様子をみて、随分うれしそう。そして近づいてきては、私とつないでいるのと反対の手をとると、「あらまあニコニコして。ごきげんないい子だね。ばあちゃんとも一緒に歩こう。」とゆっくりと言った。
3人で手をつないで、 2月のひんやりした風をきる。おばあさんの腰のまがった背の高さが、2歳の娘にもちょうどよい。板前さんは自転車のチェーンをからからと鳴らしながら、私たちに合わせてゆっくり左側を進む。むすびはいつになくまっすぐと、でも自分のペースで歩いた。しばらく一緒に歩くあいだ、私は、知らない「親子」とこんなにも自然 に一緒に歩けることが嬉しくて、その気分を楽しんだ。方向が違うので分かれると、カートをひいているはずのおばあさんの足取りは意外に軽く、あっという間に小さくなってしまった。背中を見送りながら、おばあさんの一日がいいものになるように、自然に祈っていた。
東京っていい街だな、世界は素敵なところだなと思うことは、子どもができてから多くなった。
だけど、その反対に感じることも、もちろんある。
イスラエル軍がガザを攻撃して、かなりの日数が経ち、多くの子どもを含んだ死者がどんどん増えているというニュースが流れた。ガザというのは、世界で有数の人口密集地と聞く。そこに白リン弾を落としているんだという。密集というのはきっとここ東京の下町みたいな感じなんだろうとは思うけど、正直、どんなところなのかについても、ガザのひとがどんな風に暮らしているかも、今まで深く興味を持ったことはない。
それでもとにかく、地球の何処だか違うところで、子どもや私たちと同じような生活者が、爆撃におびえているという現状を、世界を作っている一人の大人としてなんとかしたい、と思った。
きっと誰もがそういう思いで、戦争反対のデモに参加するんだと思う。できることがあるならと、私も参加したことがある。自分は反対なんだと示すことで、何もできない罪悪感は少し軽くなったし、人が沢山あつまってニュースになれば、国際社会に伝えることができる。日常で何もできずに悶々としているより、そこに出てみれば何かになる、という希望はある。
でも、そこを歩くことで、歩いている私たちと、街にいるひとたちのあいだに、見えない境界のようなものが生まれている気がした。
そのあと友だちに、印象深い話を聞いた。3月20日のイラク攻撃のとき、パーカッショニストの辻コースケさん(phatというグループに参加しているかっこいいCDを私ももっている)が、仲間や、パーカッションを教えているひとたちを誘って、攻撃反対のデモに参加した。彼は、散々考えた末に、パレードには参加せず、沿道に座って、デモが通る方を向いてパーカッションをたたき続けたんだそうだ。デモに参加する人を応援するのと同じように、沿道を歩く、一般の人を応援することができるように。
おばあさんとむすびが手をつないで、2人のPeaceがつながる。歩くなかですれ違う、様々な人たちの平和を応援する。そんな風に自然に、地球のほかの場所に居る知らない人たちの平和を祈るには、どうしたらいいかな。まずは、コースケさんが沿道に座ってパーカッションを叩いたように、自分にできることを丁寧に探したい。そして、毎日のPeaceWalkが、戦争のない世界へとつながるように、暮らしと仕事を手作りしてゆこう。
ピースキャンドル
上にもどる
[PR]
懸賞