| ナマクラに次のような声が届いています。
「ナマクラの人たちは、なぜ人道援助に反対してるんですか?国際貢献をしている自衛隊が、どうして撤退しなければいけないんですか?」
「最近この会では、「護憲」の方向で活動しているようですね。でも、私は改正するべきだと思っています。自衛隊の派遣も、国際社会の一員として必要なことと考えています。もしも今のナマケモノ倶楽部を初めに目にしていたとしたら、入ろうと思わなかったかもしれません・・・」
ナマクラ会員の方からのこうした声に対して、世話人の一人として「なぜ、自衛隊の撤退が必要だと考えているのか。非暴力の憲法をなぜ世界に広めたいのか」について少し書いてみたいと思います。
人々が、世界の暴力や戦争に関心を持ち続けて、こうした対話が続けられることが、「いのちを大切にする世界」をつくっていくことにつながると思うので。
2003年の11月に私は、スロービジネススクールの設立趣意書で次のように書きました(詳しくはこちら)。読まれた方は、読み飛ばして下さい。
『2003年9月17日、地球の環境悪化による人類存続の危機の度合い示す「環境危機時計」は昨年より10分進み、9時15分で、“滅亡時刻”の12時まで残り2時間45分の過去最悪になったと旭硝子財団が発表しました。地球温暖化、森林破壊・砂漠化・生物多様性の減少、有害化学物質などに対する不安が極めて大きくなっています。(中略)
宇宙の中に奇跡のように誕生した水の惑星、生命の星を現代人は破壊しようとしています。人が人を殺す戦争や武力攻撃も後を絶ちません。そして、その原因と私たちの生き方は無縁ではありません。「こんな生き方はイヤだなあ。限りある人生をもっと大事に生きたいし、もっといのちを大切にする社会に変えたい。」そんな思いを持つ者たちが、「ナマケモノ倶楽部」という環境文化NGOをつくりました。
「ラブ、ピース&ライフ(いのち)」を合言葉とするナマケモノ倶楽部には、文化人類学者と環境運動家と企業経営者の3人の世話人(設立者)がおり、設立当初から「学問と運動とビジネスの融合」を目指してきました。これまで分断されてきた3つの領域をつなぐことが、環境や人のいのちを大切にしない「ファーストな社会」を変えていく大きな力になると考えたからです。こうした思いの中から「スロービジネス」という言葉が生まれました。
多くの市民団体が「運動」によって社会を変えようとしているなかで、ナマケモノ倶楽部は運動だけではなく、個々人の生活と仕事を見直し、「スローライフ」と「スロービジネス」を育てていくことで、社会を変えていこうとしています。
経済という言葉の語源である「経世済民」の意味が、「世の中を治め、人民の苦しみを救うこと」や「世の中を平和にして、人びとを幸せにすること」にあったように、経済を成り立たせるビジネスも本来は魅力的なものだったはずです。
ところが、現在のビジネスの大半は、当然のように自分の会社や自分の国だけの利益を求め、未来世代のことにも配慮してきませんでした。その結果、環境破壊と貧富の差が拡大して、暴力的な世界が広がっています。
こうした世界の根っこには、「独り占め」や「限度を知らない欲望」といったものがあり、それらが生み出す「弱肉強食の社会」が広がるほど、「食われる側」にはなりたくないという意識が強まり、競争が加速して、「ファーストビジネス」が拡大していったのではないでしょうか。
こうした社会のあり方を変え、本来の経済を取り戻すにはどうすればいいのでしょう。そのための重要なキーワードの一つが「独り占め」の対極にある「シェア(分かち合い)」ではないかと思います。(中略)地球環境サミットで、12才のセヴァン・スズキが、大人たちにこう言いました。2日前ここブラジルで、家のないストリートチルドレンと出会い、私たちはショックを受けました。ひとりの子どもが私たちにこう言いました。
『ぼくが金持ちだったらなぁ。もしそうなら、家のない子すべてに、食べ物と、着る物と、薬と、住む場所と、やさしさと愛情をあげるのに』家もなにもない、ひとりの子どもが、分かちあうことを考えているというのに、すべてを持っている私たちがこんなに欲が深いのは、いったいどうしてなんでしょう。
大人は私たちに、世のなかでどうふるまうかを教えてくれます。
たとえば、争いをしないこと
話しあいで解決すること
他人を尊重すること
ちらかしたら自分でかたずけること
ほかの生き物をむやみに傷つけないこと
分かちあうこと そして欲ばらないこと
ならばなぜ、あなたがたは、私たちにするなということをしているんですか
(中略)
しかし、21世紀に入っても戦争や武力攻撃が続けられ、環境の破壊と汚染が進行しています。自国の「国益」を優先して、地球温暖化防止のための京都議定書を離脱した米国は、世界最大の軍需産業を持ち、東西冷戦が終結しても軍事行動を繰り返しています。イラクへの国連による大量破壊兵器の査察を否定し、国際世論を無視して武力攻撃を始めました。その米国を日本の首相や政府与党は支持しました。
「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という憲法を持つ国の首相や政府が、武力による先制攻撃を支持したことになります。その結果、子どもや女性を含む数千人(注:現在は10万人を超えている)の一般市民が犠牲となりました。
米国は、「大量破壊兵器の危険を取り除くために」といって、自分たち自身が大量破壊兵器を使用し、「独裁者からイラクの人びとを助けるために」と言いながら、劣化ウラン弾(「小さな核兵器」ともいわれている兵器)
を大量に使用して、人口密集地まで放射能で汚染しました。
放射能の被害を最も受けやすいのが、細胞分裂の活発な子どもたちです。すでに、湾岸戦争で使用された劣化ウラン弾の影響で、子どもたちに多くの被害者が出ています。この兵器の放射能は寿命が長く、毒性が半分に減るのに45億年もかかるため、今後イラクでは、半永久的に健康被害者が出続けることでしょう。
一方で、米国政府の高官が関わる軍需産業と「戦後復興」を請け負う建設会社は、「好景気」に沸いています。そして、「正義のための戦争」は、石油や天然ガスの利権をももたらしてくれます。(後略)』
この文章を書いて、およそ半年が過ぎました。もう一度、この戦争の経過を振り返りながら、確認してみたいと思います。
1、イラク攻撃の理由は、大量破壊兵器でした。
イラクへの国連による大量破壊兵器の査察が続けられていた2003年3月、米国は武力行使に反対する国際世論を無視して、国連の決議もないまま武力攻撃(先制攻撃)を始めました。日本政府は、いち早くそれを支持しました。米国は「イラクが大量破壊兵器を保有する確かな証拠がある」と断言していました。しかし、大量破壊兵器は、出てきませんでした。
http://www2.asahi.com/special/iraqrecovery/TKY200312190129.html
2、次ぎに言い出した理由は、「独裁者からイラクの民衆を救うため」でした。
「民衆を救うために」米国は、劣化ウラン弾やクラスター爆弾、デージーカッター
http://www.chugoku-np.co.jp/abom/uran/
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/Iraq/cluster_bomb_victims.htm
http://page.freett.com/gpwn/p20020107.htm
などの大量破壊兵器を使用したり、無差別攻撃によって子どもや女性も含む10万人以上の民間人を殺しました。もうすでに、独裁者が殺した数よりも多くのイラク人を米軍は殺しています。そして、劣化ウランの放射能による被害は、未来世代にも永く続きます。
3、戦闘終結宣言のあとも占領を続けています。
2003年5月1日にブッシュ大統領は、主要な戦闘の終結を宣言しました。宣言からまもなく1年が経ちますが、米軍は未だにイラクに居座り続けています。CPA(連合国暫定施政当局)という行政組織を作り、それと併存する形で、JTF7(第7連合統合任務軍)が占領軍としてイラク全土で活動を続けています。CPAやJTF7は、イラク人による自治のための組織ではなく、国連もこれらの組織には全く関与していません。
4、石油利権と軍需産業と戦後復興
戦前に予想された通り、米軍はイラク占領を開始して、真っ先にイラクの石油省を占拠しました。押収した書類をすべて自らの管理下に置いており、復興計画でも、油田関係は他の国に一切タッチさせず、石油利権を独占しています。
また、「戦後復興事業」のほとんどを米企業が独占しています。「復興事業」は米国際開発局(USAID)が取り仕切っており、イラク攻撃を強く支持していた企業が主要な「復興事業」を受注しています。一方で、イラク戦争に反対した国々を排除しています。
http://www.nikkei.co.jp/sp1/nt57/20040108AS2M0801208012004.html
戦争を推進している主要な人と企業との関係(経歴)は、以下の通りです。
ブッシュ大統領 石油企業アルプスト・エネルギー創設、石油企業ハーケン重役
チェイニー副大統領 石油企業ハリバートン会長兼最高経営責任者
(チェイニー夫人) 軍需企業ロッキード・マーチン重役
ラムズフェルド国防長官 ロッキード・マーチンのシンクタンク理事長
エバンズ商務長官 石油企業トム・ブラウン社長
ライス国家安全保障担当補佐官 石油企業シェブロン重役
イングランド海軍長官 軍需企業ゼネラル・ダイナミクス副社長
ロッシュ空軍長官 軍需企業ノースロップ・グラマン副社長
ホワイト陸軍長官 エンロン・エネルギー・サービス副会長
戦争推進者の多くは、石油企業や軍需産業、建設会社などの株式を所有しており、戦争による株価上昇によって、莫大な利益を得ているようです。当然のことですが、軍需産業は、戦争が拡大し兵器が売れるほど株価は上昇します。そして、「戦後復興」を請け負う建設会社は、破壊された建物が多いほど受注が多くなります。
http://www2.asahi.com/special/iraqattack/TKY200304180155.html
http://www.asyura2.com/0311/war44/msg/1405.html
5、誰のための自衛隊派兵なのでしょうか。
小泉首相は、自衛隊の派兵について、次のような発言をしました。「日本にとってアメリカは同盟国であるし、日本もアメリカにとって、信頼に足る同盟国でなければならない」「そういう観点から、日米同盟、信頼関係を構築していくことは、これからも極めて重要なことだ。」
また「国際社会から信頼を得るためにイラクに自衛隊を派遣する」とも言っています。しかし、フランス、ドイツ、ロシア、中国をはじめ、多くの国は米英のイラク戦争に反対し、現在も派兵していません。イラクに派兵をしているのは国連加盟国191カ国のうち39カ国に過ぎず、そのほとんどが、米国と軍事的、経済的に関係の深い国です。
6、自衛隊は法的に占領軍の一員となる
イラクへ派兵された自衛隊は、法的に見た場合「連合国の指図または管理の下にある」部隊として「連合国要員」という位置づけになります。CPAのブレマー行政官から日本政府に宛てて出された、2003年12月12日付書簡には、「自衛隊は連合国要員として、CPA命令第17号に定められたように処遇される」と明記されています。
これは、自衛隊が仮にイラク市民を殺害するようなことがあっても、自衛隊は連合国要員であるから、イラクの法律によって罰せられずイラクで裁判を受けることはない(裁判権の免除)という内容の書簡です。
自衛隊は、占領軍に参加する武装兵士を運ぶ役割を担っています。4月8日、航空自衛隊が、武器を携行する米兵を輸送していたことを航空幕僚長が明らかにしています。
http://www.asahi.com/national/update/0408/018.html
7、自衛隊の「人道復興支援活動」とはイラクへ550人の陸上自衛隊員が派兵され、その内「人道復興支援活動」に従事する自衛隊員はわずか120人にすぎません。「戦争に行くんではないんです。人道復興支援に行くんです。」と小泉首相は言いました。武器を携行する米兵を輸送したのは「人道復興支援活動」なのでしょうか。4月4日以来、わずか10日間でイラク人の死者は約880人となっています。この中には、子どもたちがたくさん含まれています。
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/8CB7C17E-F69E-48A2-8034-DEA425192815.htm
武器を携行する米兵を輸送することを「人道復興支援活動」という日本政府に対して、イラクの人々が「自衛隊は撤退してくれ」というのは、当然なのではないでしょうか。
米軍がイラクで大量に使用した劣化ウラン弾によって白血病、ガンなどに苦しむ子どもたちが後を絶ちません。治療体制がほとんどないため、こうした病気に苦しむ市民に対しても十分な治療ができない状態が続いています。
http://www.mdsweb.jp/doc/772/0772_08a.html
一番早く手をつけなけばならない支援は、こういった子どもたちや市民への医療的支援でしょう。自衛隊が派兵されるサマワ市街地でも劣化ウラン弾が発見されています。
しかし、自衛隊は劣化ウラン弾除去作業を行う予定もなく、被曝治療を支援する予定もありません。しかも、劣化ウランの放射能を検出できないタイプの放射能測定器を持たさられていますから、自分自身が被曝しても分かりません。
http://www.jca.apc.org/stopUSwar/DU/no_du_report10.htm
これまで、多くのイラクの市民から、日本は好感を持たれてきました。ヒロシマ・ナガサキのある国でイラクと同じ「被爆国」であること、中東を一度も侵略していないこと、イラク戦争前から、多くの民間人がイラクで人道支援活動をしてきたことなどが好感を持たれている理由のようです。
バグダッドの病院に医薬品を届けに回ったり、白血病の子どもを日本に招いて治療をし、イラクの青年医師を日本に招いて、白血病治療の研修を受けてもらうなど、民間人によるさまざまな支援が行われてきました。
そのようにして得られてきた信頼が、自衛隊の派兵によって失われようとしています。多くのNGOは、自衛隊がイラクに行くことで、日本人が新たに攻撃の対象となり、自分たちの人道支援活動ができなくなる、として人質事件が起こる前から派兵に反対していました。
2004年2月23日の朝日新聞に以下の記事が掲載されています。
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イラクで医療支援などにあたっている日本のNGO(非政府組織)、日本国際ボランティアセンター(JVC)の熊岡路矢代表理事は22日、約1週間のバグダッド訪問から帰国した。熊岡氏によると、日本の陸上自衛隊のサマワでの活動について、現地で給水活動などにあたるNGOから「非効率だ」「人道支援の中立性が確保できなくなる」などと批判が出ていたという。
JVCは02年9月からバグダッドの病院に医療物資を配布るなどの活動をしている。熊岡氏は15日にバグダッド入りし、現地スタッフと市内の病院を訪問するとともに、現地で復興活動に携わる海外のNGOと協議を行った。
意見を交換したNGOの一つが、98年からバグダッドやサマワで、自衛隊が今回予定しているのと同じ浄水・給水活動を行っているフランスのNGO「ACTED」だ。年間約6000万〜6400万円で、10万人を対象に浄水・給水活動を行っている。(注:「自衛隊派遣」費用は377億円)
現地プログラムの責任者であるエザベス・カンパさんは「浄水・給水ならNGOにまかせてもらったほうがはるかに効率的にできる。自衛隊は人道支援とは別の目的で来ているという印象を受ける」と語ったという。
また、熊岡氏は、100あまりのNGOが参加する「イラクNGO調整委員会」のフィリップ・シュナイダー代表世話人からも、(1)占領軍をはじめとする軍隊が人道支援をやるのは、専門が違い、中立性も確保できない(2)軍隊が人道支援をすると、本来、人道活動をしてきた国連やNGOまで巻き添え攻撃を受ける危険性が増す――などの懸念を表明された。
(後略)
(全文はhttp://www2.asahi.com/special/jieitai/TKY200402230166.html)
書き出したら止まらなくなってしまいました。長文になってすみません。
ナマケモノ倶楽部は、これからもあらゆる暴力を否定し、非暴力の世界を広げていきたい。そして、世界の子どもたちが「生まれてきてよかった」と思えるような、そんな世界をつくる一員でありたいと願っています。
中村隆市
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