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世話人・中村隆市のコラム


コーヒー生産地視察報告(メキシコ、コロンビア、ブラジル、エクアドル)

皆さん、お元気ですか。大事なときにフラフラと旅をする不良世話人の中村です。
激動の中南米をまわる「2001年ナマケモノの旅」から無事帰国しました。
中南米のナマクラ会員やナマケモノコーヒー、ナマクラグッズの生産者、関係者の近況を報告させていただきます。


(メキシコ)

1月下旬、旅の初めに訪問したメキシコでは、友人でナマクラ会員でもあるパトリシア・モグエル(メキシコ自治大学教授)と共に2つの先住民(ナウワットとチナンテコス)グループの伝統的な多品目栽培「コーヒー園」を見学してきた。アグロフォレストリー(森林農業)研究の第一人者であるパトリシアが注目しているだけあって、その生物多様性には目を見張るものがあった。コーヒー以外に、バナナ、オレンジ、アボガド、グアバ、マンゴなどの果樹と、豆科作物で窒素肥料を供給するインガやセクロピア、マホガニー、ブルセラなどの樹木を合計すると24種類に及ぶ。

このような生物多様性に優れた農業は、コーヒーやバナナだけを単作する近代農業に比べて病害虫の繁殖が少なく、殺虫剤や殺菌剤などの農薬を使う必要がない。また、外部から肥料を多量に供給しなくても、落ち葉や豆科作物が肥料を供給して土壌を豊かにする。農業の「近代化」は森林を減少させている一因だが、山間部に位置するこれらの地域は傾斜が急なため、森がなくなると表土が流失し、地滑りが起こりやすくなる。そうなると雨水が土壌に吸収されにくくなり、一気に川に流れ込み、洪水が多発する。ナマクラ会員のパトリシアは先住民の伝統的な森林農業の意義と「農業近代化の愚かさ」を新聞や雑誌を通して積極的に発言している。

この2つの先住民グループに共通する文化は「協力する」「分かち合う」という精神を大切にしていることだ。「分かち合う」のなかには未来世代との自然環境の分かち合いも含まれている。ナウワット族のグループ名は「トセパン・ティタタニスケ」といい、それは「協力し、共に一生懸命働くこと。それが皆が幸せに暮らすためのたった一つの道である」という意味だ。実は、パトリシア自身にもナウアット族の血が流れている。

トセパンのメンバーは約5800人で、グループ内には農業生産だけでなく女性グル−プが運営する生協のような日用品の店、民芸品の店、パンやトルティーヤ(トウモロコシ粉をこねて薄く円形に焼いたパン)の店などさまざまな活動がある。興味深いのはトセパン・トミン(「お金は皆のもの=共有」という意味)という金融機関を作り、グループで店を始めるときの開店費用や家屋の改築、コーヒー豆の天日乾燥場などを作る資金を融資している。

山間地での持続可能な発展を目指すエクアドルのインタグ地域にとっては、とても参考になる農業形態と地域活動である。来年のエクアドルでの有機コーヒー国際会議の次は、2004年にメキシコで開催することを決めてきた。


(エクアドル)

メキシコの後に、今回の旅のメインであるエクアドルを訪問した。ナマクラ会員の渡辺由里佳、伊藤ファミリー、ブラジル会員のクラウジオ(ウインドファーム・ブラジル事務所所長)と2月3日に合流したが、ちょうどこの時、エクアドルでは国を揺るがす民衆運動が展開されていて、主要な道路は民衆によって封鎖されていた。

ことの発端は、ドル化に加えて、IMF(国際通貨基金)の圧力で大統領がガソリン、ガス、運送品などを値上げしたことに民衆が反発、先住民や小農民など、弱い者ほど苦しくなる政策に怒りが爆発した形だ。先住民と大統領との関係が悪化して話し合いができない状況の中で、その間にアウキ知事が立って「話し合いで解決しよう」としていた。私たちは予定を変更して飛行機でバイア州に飛び、ナマクラ仲間であるパトリシオ親子が取り組んでいるエコクラブ(難民の子どもたち)の植林活動や建設中の校舎などを見学したり、有機エビのエコロジカル養殖場を視察した。エコクラブの子どもたちは、昨年辻さんたちが寄付したお金でセイボ(バオバブ)の木の苗をたくさん育てていた。子どもたちの表情が年々明るくなっているようだ。

バイアの次は、環境保護団体DECOIN(デコイン)副会長であるソーニャの案内で普段はほとんど通らない裏道や山道を通って、インタグコーヒーの産地にたどり着いた。裏道といわれるだけあって大変な悪路で、途中雨が降らなかったのが幸いだった。

インタグ地区の精神的リーダーで、有機コーヒー生産者であり、デコイン会長でもあるカルロス・ソリージャとフィエスタ・エクアドルや環境保護と持続可能な発展について、じっくり話し合った。銅山開発反対運動へのナマクラの協力に対しとても感謝していた。デコインメンバーとの話し合いでは、植林活動、小規模水力発電、環境教育、エコツアーなどのプロジェクトが担当者から熱く語られた。いずれも環境を守っていくためには大事な取り組みだ。

インタグ滞在中は有機コーヒー農園をたくさん視察し、協会役員や地域リーダーと来年開催する有機コーヒー国際会議などについて長時間の話し合いを持った。協会メンバーは現在、約250名で、来年は300名になるだろうと予測されている。また、会員のほとんどが有機コーヒーのフェアトレードに期待して、たくさんの苗を育てているため2〜3年後には、今の3〜5倍のコーヒーが生産されるだろう。カブヤのバッグを製作している女性グループもナマクラがたくさん購入してくれることを期待している。インタグ地域の取り組みが成功するかどうかは、ナマクラの肩に大きくかかっている。そういう意味でも、東京の府中にオープンするナマクラショップ&カフェは大変重要になってきている。

アウキ知事の活躍で先住民と大統領側の話し合いがまとまり、道路封鎖が解かれてようやく、そのアウキさんに会いに行けるようになった。コタカチで私たちをいつもの笑顔で出迎えたアンニャは、半月後に出産をひかえているとは思えないほど動き回って私たちをハラハラさせた。(3月2日に女の子パチャ・リナを自宅で出産。母子ともに元気でホッとした)日本でのフィエスタには赤ん坊も連れていくと張り切っている。

今回の先住民を中心とした民衆運動で重要な役割を担ったアウキ知事は、隣国コロンビアでも「平和を招く男」「次期大統領候補」として新聞に大きく取り上げられていた。そのアウキさんが、内外からの多くの取材依頼を後回しにして、私たちとのミーティングに時間を割いてくれた。来年のコタカチでの有機コーヒー国際会議は、コタカチ市が全面的に協力してくれることになった。フィエスタ・エクアドルにも何とか来日できそうだ。


(コロンビア)

コロンビアでは、友人でナマクラ会員でもある国際有機農業センターのラモン・スルアガ所長が、勝手にコロンビアのナマクラ代表に就任し、私を案内したリサラルダ州の庁舎でいきなりコロンビアで唯一人の女性州知事、エルサ・グラディスを会員にしてしまった。先住民の国会議員ガブリエル・ムジュイも会員になりそうだ。ラモンは兄弟や姪、そして80才のお母さんまで会員にしてしまった。さらに兄弟で経営しているエコロジー幼稚園の園児まで会員にしたいと言い出す始末だ。また、有機砂糖を生産している農場にも案内してくれたが、その農場の生産者ヘルマンも会員にしてしまった。 翌日聞いた話では、この農場の森には、なんとミツユビナマケモノが棲息しているとのこと。


(ブラジル)

メキシコ、エクアドル、コロンビアの旅を終えて、最後に訪問したのがブラジル。

いつものようにジャカランダ農場のカルロスさんに会いに行き、消費者からのメッセージを渡す。手紙や色紙、FAXもある。ナマクラ会員からのメッセージもたくさん伝えた。73才のカルロスさんが微笑む、私はその笑顔を見るだけで幸せな気持ちになる。「この仕事をやっててよかったなあ」と思わせてくれる瞬間だ。

昨年5月、エコシティとして知られているクリチバ市にブラジル初の有機コーヒーカフェテリア(ナマクラカフェ、TERRA VERDI=緑の大地、緑の地球)をオープンした。半年ほどは苦戦をしたが、その後クラウジオファミリーの努力とマスコミの報道と口コミとでじわじわとお客さんが増え、経営が軌道に乗りつつある。

そして、店舗の拡大計画やクリチバ空港への出店の話も出てきている。また、サンパウロのカフェテリアが、ジャカランダ農場とカルロスさんの写真を掲げて、有機コーヒーを飲ませ始めたのもこのナマクラカフェの影響である。地元の有機農業生産者との協力関係も強まりコーヒー以外に牛乳、砂糖、パン、バナナ、ジャム、ジュースなども有機栽培のものを出している。有機農業生産者にとっては、消費者への情報発信の拠点となっている。


*ジャカランダ農場のカルロスさんから「ナマクラの皆さんによろしく伝えてください」「メッセージを送って下さった皆さんにありがとうと伝えて下さい」とのことで した。 (中村隆市)

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