| チェルノブイリ原発事故から15年が過ぎ、私自身が原発事故の被害者支援に関わり始めて11年になります。1000万人規模の被ばく者を出し、あまりの被害の大きさに、ベラルーシやウクライナは自国の力だけでは被害に対応できず、外国からの支援に頼ってきました。しかし、15年経っても被害がいっこうに収まらない中で、世界の関心は年ごとに薄れ、支援が年々減少しています。原発には何の責任もない多くの子どもたちが甲状腺ガンを患い、手術を受けています。彼らは一生、ホルモン剤を飲み続けなければ死んでしまいますが、そのホルモン剤でさえも不足しているのが現状です。そうした状況を少しでも多くの人に知っていただきいと思いますが、今日この紙面で皆さんにお伝えしたいことは、脱原発のための一つの方法です。
現在、世界中で脱原発や地球温暖化対策のために再生可能エネルギーや燃料電池の開発が進められていますが、私が提案するのは、原子力や石油に代わるエネルギーを見つけることではありません。電気自体をなるべく消費しないようにするために「電化製品を減らしていこう」という運動です。それは「非電化製品」を増やしていくことでもあります。
「非電化」という言葉は、ナマケモノ倶楽部が「環境発明家」と呼んでいる藤村靖之さんの造語です。息子さんを突然襲ったアレルギーをキッカケにして、環境問題に取り組んできた藤村さんは、環境問題を引き起こしている大きな原因は、化学物質とエネルギーの使いすぎだと考え、それらを使用しない「非電化製品」の研究開発に取り組んできました。電=エネルギー、化=化学物質、これらを使わない製品という意味です。現在、既に電気を使わない掃除機、洗濯機、除湿器、冷蔵庫、エアコンなどを発明(試作)されています。しかし、藤村さんは「日本では普及しない」と考えていました。なぜなら、今の電化製品より少し不便になるため「便利さに慣れた日本人には受け入れられないだろう」というわけです。もともと非電化製品を発明した理由は
、途上国がこれ以上、工業先進国の後追いをして電化製品を使い始めたら地球がもたないと考え、途上国向けに発明されたそうです。しかし、私はこの話を聞いて「いや、藤村さん、非電化製品はエネルギーを多量に消費している先進国にこそ必要だし、少々不便でも電気の消費量を減らしたい人は多いので、日本でも普及する可能性があると思います。私はチェルノブイリ支援や脱原発、再生可能エネルギーの普及、地球温暖化防止などの市民運動に関わる中で、エネルギーの消費を減らしていくことの重要性を感じている人が増えていることを実感しています。ぜひ日本でも、非電化運動を進めましょう」と提案しました。そして、藤村さんと一緒にNGOや消費者団体に非電化運動の話をし始めました。
一般に、電化製品などの工業製品は大企業でなければ作れないと考えられてきました。確かに、資金面でも、製造、販売面でも、今まで通りのやり方では難しいでしょう。そこで、私が考えたのが、有機農業を生産者と消費者が提携して育ててきたように「有機工業」を生産者(発明家)と消費者が提携して育てられないか、ということです。
25年以上も前に、農薬の問題に気づいた一握りの生産者と消費者とが手を結び、手探りで育ててきた有機農産物の産直運動が、現在、農業全体を無農薬栽培や減農薬栽培に向かわせつつあるのと同じことをエネルギーの問題でも展開できないでしょうか。つまり、生産者(発明家)と消費者とが手を結んで賛同者を募り、一緒に非電化製品を作っていく運動です。こうなると消費者は「ただ、消費するだけの人」ではなくなり、生産者側にも立つことになります。
問題は、非電化製品を製造するための資金ですが、工業製品は生産する数が多くなるほど、1台あたりの生産コストが安くなります。一方、たくさん作るためには、多額の資金が必要になります。そのことがネックで、これまで工業製品は、大企業にしか作れないと思われてきました。しかし、生産者と消費者とが手を結ぶ「有機工業運動」=「非電化製品の共同生産、共同購入運動」なら、その壁を突き崩すことが可能です。例えば、非電化製品の除湿器なら1000人、洗濯機で3000人、エアコンでも1万人程度の購入希望者がいれば、手頃な価格で商品化できます。それ以上に購入者が増えるほど製造コストが安くなります。一般的な電化製品の製造コストは、小売価格の10〜20%程度ですから、「共同生産」「共同購入」に取り組めば、たと
え2倍の製造コストがかかったとしても、購入可能な小売価格で販売できるでしょう。それだけ、一般では宣伝費や流通経費が大きいわけです。必要な資金も購入希望者リストがあれば、融資を受けられます。
最大の問題は、今より少し「不便」になることをどのくらいの人が受け入れられるかということです。試作品の非電化除湿器を例に取ると、湿気を吸収した除湿器を「布団を干すように」太陽にさらす手間がかかります。しかし、それをすれば、繰り返し除湿能力が回復して、半永久的に利用できます。非電化浄水器の場合も、浄水装置をお湯で簡単にクリーニングすれば、カートリッジを交換する必要がありません。
一般家庭では、掃除機、洗濯機、冷蔵庫、エアコン、待機電力だけで、総電気消費量の約70%を使用しています。また、照明なども太陽光を利用したものが可能ですし、家庭だけでなく、オフィスや工場などでも非電化や「減電化」が普及していけば、大幅に電力消費量を削減できるでしょう。
さて、ここまで読まれてきた皆さんが一番気になっていることは「ホントに電気を必要としない掃除機や洗濯機、冷蔵庫などができるのか、どの程度の不便さなのか」といったことでしょう。非電化製品の分かりやすい一例が、1995年に英国のおじさんが発明した「ぜんまいラジオ」です。このラジオは20秒ゼンマイを巻けば40分ラジオを聞くことができます。この発明のキッカケは、「エイズ撲滅の第一歩として予防知識を広めようとしたが、第三世界は貧しく、知識や情報を伝えるラジオの電池さえ買えない人が多い」と聞いたことでした。非電化製品を望む人が増えれば増えるほど、その研究開発に取り組む人が増えます。将来、世界の各地で、さまざまな非電化運動が広がっていくことを期待しています。
できれば今年中に、何か一つ手頃な価格の「非電化製品の共同生産、共同購入」を実現したいと思っています。この夢のような話に興味を持たれた方は、非電化運動ネットワーク事務局に連絡していただければ、秋頃までに、具体的な非電化製品関連情報をお送りします。ネットワーク事務局が関わる非電化製品には、小売価格に1%の上乗せをし、その1%をウラン採掘地で被害を受けた住民、原発の被ばく労働者、原発事故被害者などの核被災者への医療支援として活用したいと思っています。
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