スロービジネスの「航海」に出よう!人生を「後悔」しないために。

2017年04月10日

中村 隆市

ゆっくり堂「公開」役員会 “こんな人を雇いたい”
スロービジネスの「航海」に出よう!人生を「後悔」しないために。

4月17日(月)夜に、横浜市戸塚の善了寺にて開催される「ゆっくり堂”こんな人を雇いたい”公開役員会」(詳細こちら)に先立ち、社長の中村隆市さんと、役員の辻信一さんがその事業構想について話し合いました。

■あたらしい事業を興していきたい

中村:この30年、フェアトレードといわれる仕事をやってきて、グローバリゼーションの恐ろしさを改めて感じています。世界で拡大している貧富の格差を小さくすることがフェアトレードの目標の一つですが、国際NGOオックスファムが今年1月、世界人口の半分にあたる36億7500万人の経済的に恵まれない人々の資産合計と、世界で最も裕福な8人の資産合計がほぼ同じだと発表しました。36億人の平均資産は1人約1万3000円で、8人の平均資産は約6兆円。実に4.6億倍にもなっています。

貧富の格差が過去にない極限状況に達しています。 このグロテスクな格差の拡大が日本も含めて世界に広がり、様々な社会問題や環境問題を悪化させています。これはつまり、いのちが軽視されている社会だということです。それを解決するために、有限会社ゆっくり堂を、辻さんや若い仲間たちと2003年に立ち上げました。分断されたつながりを、スロービジネスをツールに取り戻していきたい、という思いがあります。

辻:中村さんとはもう20年来の友人です。ぼくらは1999年にナマケモノ倶楽部というNGOを作りました。ナマケモノ倶楽部では、環境運動と文化運動とビジネスを三位一体として展開していくことを掲げたわけですが、発足当初から、いくつも社会的な起業を生み出してきました。コーヒー屋がつくったカフェ(カフェスロー)とかね。そして、ゆっくり堂は、運動を学問として深めていくための、メディア(出版)の役割を担うべく誕生しました。

中村:ナマケモノ倶楽部が、南米エクアドルの森を守るために地域の人たちとつながってコーヒーをフェアトレードで支えようとしたように、全国で取り組まれているいいことを応援していくようなビジネスを目指しました。

辻:まず、何をやったんだっけ?ゆっくり堂は?

中村:『ピースローソク』の出版です。坂本龍一さん、鶴見俊輔さん、大地を守る会の藤田和芳さん、旅人で俳人の金井重さんなどそうそうたる人の文章を掲載させていただいて、「100万人のキャンドルナイト」を立ち上げるにあたってビジネスでも応援しようと展開しました。

辻:ローソクもプロデュースしたよね。せっかく環境に配慮してキャンドルナイトをしているのに、石油由来のキャンドルじゃあ、本末転倒です。だから、ゆっくり堂は、昔からある蜜蝋ローソクや和ローソクを紹介していきました。

中村:それから「ハチドリの話」を小さな冊子にして出版した。

辻:ハチドリ! ぼくと中村さんがエクアドル先住民のゲストから直接聞いたんだよね。

中村:あれはヒットして、10万部くらい売れた。さらには大きな出版社でも出してもらえて、2011年の震災の後にもまた大きく取り上げられましたね。

辻:ワンガリ・マータイさんも気に入ってくれてね。彼女も世界各地で広めてくれた。絵を描いてくれたぼくらの仲間のマイケル・ニコルもカナダでこのお話を広めてくれたり。

中村:運動を担う人たちが、いいことをして、暮らしを成り立たせていく。その実験としてゆっくり堂はとてもいいモデルだと思うんです。キャンドルナイトという運動を応援するために、和ローソクや蜜蝋キャンドルを商品化した。本の出版を企画して、学びを広めていくお手伝いをした。そして、ゆっくり堂のスタッフたちが、そういったビジネスで暮らしを成り立たせていった。

辻:ここ数年、ゆっくり堂は休眠状態だったわけだけど、もう一度あたらしいビジネスを興して、学びを取り戻していく、ということですね。

中村:ワクワク感を一緒に共有して、自らも学び、自分の暮らしも成り立たせていきたい人たちに出会いたいですね。

■お寺を拠点にコミュニティを取り戻す

中村:今年春から善了寺にオフィスを移すことになりました。2007年に辻さんが成田住職と出会ったことがきっかけで、カフェ・デラ・テラという運動が立ち上がり、学生たちを巻き込みながら、学びと実践を深めていっています。

辻:お寺は全国に7万あるそうです。コンビニよりも多い。じゃあ、お寺っていう存在は何なのかということを考えていくと、今でいうカフェのような機能を持っていたのではないかと思ったんです。ローカルの拠点であり、人々にとってのスピリチュアル・センター。そして、お寺の敷地内には自然がより残されている。つまり、自然(Terra)と結びつくことができる場所。それで、カフェ・デラ・テラという運動を立ち上げ、お寺をカフェとしてもう一度取り戻していくことを住職や地元商店会、学生たちと取り組んでいます。

中村:ローカルとしてのお寺の役割。

辻:コミュニティの本質は、生きている人だけでなく、死んだ人も含まれると思うんです。お寺はまさに生きている人と亡くなられた人をつなぐ場所ですよね。そして、狭い意味でのお金のやりとりに左右されない。コミュニティにはお金以外の強いつながりがあるんです。さらに、コミュニティは競争原理で成り立っていない。家族がまさにそうですよね。

中村:成田住職と坊守のご夫妻は、お寺の敷地内にデイサービスも設けて、福祉にも取り組んでおられます。

辻:宗教法人としてデイサービスを始めたのは先駆的だったと思います。

中村:また、本堂や第二本堂を循環可能な素材をつかって改築し、エコロジカルなお堂を立てられました。

辻:これは3・11も大きく関係していて。あんなに大きな震災があって、建物をできるだけエコロジカルにしようという思いが強まりました。被災地を支援していこうと栗駒建材の木材を使ったり、本堂正面の壁には琵琶湖のヨシを使ったり、伝統工法の穴太衆(あのうしゅう)積みで石を積んだり。また、第二本堂の電気は100%ソーラー発電で賄っているんです。

中村:世界に誇るべきエコロジカルなお寺ですね。

辻:第二本堂である聞思堂をつくるときに、住職とぼくの中ではすでにカフェ構想がありました。だから、キッチンとか音響とかもカフェとして使えるよう設計されています。

中村:これから、ゆっくり堂と善了寺が協働して、聞思堂でカフェ事業をはじめとしたあたらしい事業を興そうとしています。茶「堂」、ゆっくり「堂」。どちらも堂を使っているしね。この素晴らしい本堂のことも一緒に発信していけたらと思います。

辻: かつては、村の入り口に「茶堂」と呼ばれるスペースがあり、入会地のような機能を持っていました。聞思堂には、現代の茶堂としてその役割を果たしていってほしい。コミュニティに根差し、生態系に根差し、ひとつのモデルを作っていけたら、日本社会にインパクトを与えられるのではと思っています。


■全国の応援したいものや運動をつなげていく

中村:ナマケモノ倶楽部は今年7月で18年目を迎えます。カフェ・デラ・テラも今年で10年目。遅々としているように見えるかもしれないけど、運動としては着実に育ってきていると思います。

辻:学生たちも、お寺でのムーブメントを通じて、いろいろ学ばせていただき、今、全国に散らばっています。とても豊かな時間を過ごすことができたと思います。カフェ・デラ・テラの目的は、それぞれの場所での自立を促すことだと思ってるんです。

中村:そうですね。

辻:今、そうやって学生たちが全国に散らばっていて。ゆっくり堂では全国に紹介したいものがいっぱいあるわけです。主流のメディアには乗らないけれど、おいしい、人に薦めたい、差し上げたいと思うモノたち。そういうものをゆっくり堂がビジネスとして広めていくことができたらなと。

中村:モデルをつくっていくということですね。ポテンシャルは十分あると思います。私は、いろんなビジネスの立ち上げにも関わってきましたが、今回の善了寺でのゆっくり堂プロジェクトは、1年あれば十分軌道に乗せることができると思っています。5年で10人は雇いたいですね。

辻:そうですか!

中村:各地で販売力がなくてうまく広めることができない人たちがいますよね。それをゆっくり堂がつないで、各地の取り組みをサポートしていきます。仏教の教えにも、サポート(支えていく)ことが大事とありますよね。

辻:今回、善了寺の成田住職をはじめ、役員会のみなさまにも温かいご支援をいただいて、起業支援をしていただいています。なんとか3か年計画で事業を軌道に乗せたいと思っています。事業内容を紹介してください。

中村:善了寺の聞思堂に、オーガニックなコーヒーやお茶が飲めて、スローな思想に触れることができるカフェを開きます。カフェでは各地の応援したいものを販売する直営店でもあります。それから、物販事業を展開します。日本各地や海外のローカルコミュニティでのいい取り組みを見つけ、商品化していきます。

辻:そうそう、カフェ・デラ・テラのもうひとつのコンセプトは、サティシュ・クマールが説く「3S」にインスピレーションを得た、お寺版3S=Soil(環境)、Spirituality(お寺)、Society(社会的なつながり)。この三位一体を実現していく会社でありたいですね。
別の言い方をすれば、お寺がこの三位一体を取り戻していくのを手伝うのが、ゆっくり堂のミッションでもある。

■やりがいを感じて自分のキャリアに活かしていく

辻:さて、今回、ゆっくり堂では求人という形で、有給スタッフを募集するわけですが、中村社長はどういう人材を求めていますか?

中村:まず、ナマケモノ倶楽部のコンセプトや、ゆっくり堂のミッションに共感してくれる人。これが大事です。

辻:そうですね。それから、ゆっくり堂ではやることが多彩ですから、予想していないことにも柔軟に対応できる人がいいですね。様々なハプニングや失敗も学びとしてとらえることができる人。

中村:今できないことがあってもいいと思うんです。仲間にいろんな人がいるので、そのサポートも得ながら、学んでいくという姿勢が大切ですね。まあ、料理好きでコーヒー好きなら大丈夫です。コーヒーの営業は、私と一緒に動くことで学べるでしょう。

辻:学ぶ気持ちが強い人。好奇心が旺盛な人。いろんな地域の食やモノを扱うことになると思うけど、それらを単なるモノとしてみるのではなく、そのどれをとっても一つひとつにストーリーがあることを理解し、一緒にそれを伝えていってくれる人。
たとえば、ウインドファーム社のコーヒー。そこで出会ったストーリーが社会をひとつひとつ、変えていくアイテムになりうるわけです。だから、その物語の意味に関心を持つ人、社会をちょっとずつ変えていこうという気持ちをもっている人。「学びたい」「学ぶぞ」「世の中をよくしていくために、自分には役割がある」と思える人に来てもらいたいです。

中村:こんなことをみなさんと一緒に話し合うために、ゆっくり堂役員会を「公開」で開くことにしました。人生を「後悔」しないために。(笑)

辻:これからの新しいスロービジネスの「航海」のために。(笑)

中村:4月17日、月曜日の夜に開催しますが、ゆっくり堂で働きたいという人だけでなく、ゆっくり堂を応援したい人、少ししか関われないけど、できることで協力したい(例えば、ネットでシェアしたり)という人、スロービジネスに興味があるという方も大歓迎です。

【ゆっくり堂のミッション】
グローバル経済がいのちの基盤である自然を破壊し、かつてない貧富の格差をはじめとする深刻な社会問題を生み出している現代社会において、私たち「ゆっくり堂」は、いのちを大切にする企業活動を通して、生態系と人と地域の幸せに寄与し、平和で公正で持続可能な世界の実現のために、燃える森に水を一滴ずつ落としてゆくあのハチドリのように、「私にできること」をしていきます。

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