私は楽天家である サティシュ・クマール(『リサージェンス』2013年11-12号より)

2014年01月23日

辻 信一

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resurgence誌の2013年11~12月号、編集主幹サティシュ・クーマルによる巻頭の文章。新年のために書かれたものではないが、ぼくには年頭にふさわしいものに思える。
危機が深まりゆく今、悲観主義の罠に陥ることなく、晴れやかな心で歩み始めたい。

辻信一

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私は楽天家である
サティシュ・クマール

歴史は次のことをはっきりと示しています。あらゆる大変革の背後には、新しい社会秩序のビジョンを実現するために献身的に活動する楽天家たちの一群があった、ということ。はじめは極端な考えだとか、取るに足らぬ運動だとか思われたものが、結局は主流の現実となっていったわけです。

例えば、奴隷制を終わらせるという考えは、当初あまりにも理想主義的だと見なされ、経済にも大きな打撃を与えるものとして否定されていた。でも、結局は希望と楽観が勝利したわけです。同じように、割とつい最近まで女性に投票権を与えたり、政治に参加させたりすることは無意味なことだと多くの男性が考えていました。しかし今はどうでしょう。多くの国の首班を女性が務めているばかりか、国会議員、大使、裁判官、会社のCEOなど、女性が社会における指導的な役割を果たすのは当たり前になっています。50年前には米国で黒人は投票することさえできなかったのに、今ではホワイトハイスに黒人の大統領がいます。

南アフリカで、アパルトヘイト制度に反対するだけで撃ち殺されたり投獄されたりしたのは、そんなに昔のことではありません。しかし今や、ネルソン・マンデラは希望を象徴する存在となり、その倫理的、政治的な偉大さによって世界中から尊敬を集めている。かつて「日が沈むことはない」とまで言われた大英帝国では、植民地主義への反対闘争にテロリズムのレッテルを貼ったものです。でも、ガンディーのような楽観主義者のおかげで、その帝国主義は過去の物語となりました。共産党、赤軍、そしてソビエトによる中央アジアや東ヨーロッパへの支配は不滅と言われましたが、ここでもまた、楽観主義が勝利をおさめました。ベルリンの壁は崩壊し、その権力は昔に比べればずっと分散化しました。こうした例を挙げればまだまだリストは長くなるでしょう。そのこと自体、思想と楽観主義がもつ力というものを示しているでしょう。そしてそれらが献身的な努力と行動に支えられた時には、人々の意識を変え、古いパラダイムを溶解し、より道徳的で公正な社会秩序の基礎を築くことも可能だということです。

ユートピアなどというものは存在しません。とはいえ、楽天主義者にとって地球とそこに暮らす人類とは、常に進化し続ける現象に他なりません。私たちはみな、変化のプロセスの一部なのです。もちろん、その変化がどの方に向かうかはわかりません。人類がより利己主義的な方向に進化することもあれば、より平等な方へ向かうこともありえます。我々は支配を学ぶこともできれば、参加し協力し合うことを学ぶこともできる。愛する能力を獲得することも、憎悪する能力を習得することも。

この潜在的な可能性を信じること、そして、よりよい方向を選択することが可能なのだと考えること自体が楽観主義なのです。一方、悲観主義とはこの潜在的な可能性を見失うことです。「貪欲でわがままで暴力的なのは人間の本性であり、どうすることもできない」と、悲観主義者は考えます。一方、楽観主義者によれば、人間の心には利他の種子が備わっています。貪欲の雑草がはびこるのを抑えながら、シェア(分かち合い)とケア(助け合い)の種を育てるのです。
産業による自然界の大規模な搾取と破壊は、歴史上、ごく最近の出来事に過ぎません。人間によってつくり出されたことは、人間によって変えることができるのです。ですから、ぜひ力を合わせて経済を、産業を、政治をデザインし直そうではありませんか。
(後略)

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