原発事故・放射能に関して 若い人たちからの質問に答えて

2011年11月06日

中村 隆市

下記は中村隆市ブログ「風の便り」に書いた抜粋です。詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

今回の福島原発の事故は、放射能の放出量がよく分かっていません。

保安院は、大気中にチェルノブイリの15%以上を放出していると発表していますが、汚染水として地下や海に流れている量はよく分かっていません。

オーストリア政府は、チェルノブイリの20~50%くらいと推測しています。わかっているのは、福島原発は、まだ放出を続けているということです。私の推測では、今の政府のような対策が続けば、ガンや様々な病気が増え続けて、数十万人以上の被害者が出るのではないかと恐れています。チェルノブイリの被害者を私は100万人規模だと考えていますが、そうならないように、できることをやっていきたいと思っています。

ウィンドファームでは、福島や関東から避難してきた人たちを受け入れています。また、東北、関東には若い友人たちがたくさんいますし、その中には、幼い子どもがいる友人も多数います。そうした若い世代や中高生から、たくさんの質問や大人たちに対する「疑問」が届いています。 

「疑問」というのは、例えば、中高生からのこんな内容です。

Q,震災直後に、他の国や機関から、危ない、避難させたほうがいいという意見があったのに何故しなかったのですか?

Q,どうして、危ないとわかっていたのに何もしなかったの?

Q,放射能は、味もしないし見えないし臭いもしなくてわからない。だから、怖さの実感はあまりないけど、
 どうやって子ども達を守ろうとしているのかわからない。

Q,おとなは、子どもを守る気があるの?

Q,おとなは、子どもの将来をなんだと思ってるの?

Q,なんで、子ども達には嘘をついてはいけないと教えるのに、
 原発のことや放射能のことで、おとなは嘘をついたり誤摩化したりするの?

※これらの質問、疑問については、日本の大人全員が答えるべきだと思います。

今日は、質問の中で、早く返答した方がいいと思うことに答えたいと思います。
まず、以下の質問に対して、まとめて答えたいと思います。

Q,乳幼児がいる友だちが福島市に住んでいますが、住み続けて大丈夫ですか?

Q,友人たちが福島県にたくさん住んでいますが、どんなことに気をつけたらいいですか?

Q,年齢が若いほど放射能の影響が大きいと聞きましたが、十代の私たちが気をつけることは?

Q,食べ物や飲み物の放射能汚染が気になります。東京の食べ物は大丈夫ですか?

Q,福島の原発事故から7ヶ月が過ぎた今、中村さんが一番、重要だと思うことは何ですか?

A,まず、はじめに私は、取り返しがつかない原発事故をひき起こしてしまった大人の一人として、子どもたちや若い人たちに謝らなければいけないと思っています。その上で、私たち大人が今、やるべきことは、放射能に弱い子どもたち(胎児、乳幼児、児童、生徒)を放射能から守ることだと思っています。 

そのための基本は、「外部被ばく」と「内部被ばく」をできるだけ避けることです。
1、できるだけ、放射能汚染地から胎児、乳幼児、児童、生徒を遠ざけること
2、できるだけ、子どもと若い人は放射能汚染食品や飲み物を体内に入れないこと

この2つが放射能対策で最も重要なことだと思います。(中高年は、助ける側にまわりましょう。)

放射能汚染地から今すぐ移住できない場合、少しでも被曝量を少なくすることが重要です。例えば、冬休みや春休みなどに汚染の少ない所に住んで、汚染されていない食べ物をとることで、体内に入った放射性物質を減少させることができます。(もちろん、一番いい方法は、体内に放射性物質を入れないことです)チェルノブイリでは、ガンなどの病気になるまで何年も汚染地に住み続けた人たちも多かったので、日本では、同じ過ちを繰り返さないようにしてほしいと思っています。

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避難の目安は、年間1ミリシーベルト(1000μSv)以上の地域です。
群馬大学の早川由紀夫教授の放射能汚染地図が参考になります。

この地図の一番汚染が低い「0.125マイクロシーベルト」のエリアでも幼い子どもたちが住み続けることに不安を感じています。「0.25マイクロシーベルト以上」のエリアは胎児、乳幼児はなるべく早く避難した方がいいと私は考えています。

同様の考え方から、0.2マイクロシーベルト/時以下の地域で学校教育を受ける権利を求めている「ふくしま集団疎開裁判」に賛同しています。

残念ながら、今の政府には「子どもたちを最優先で守る」という姿勢がないので、市民が協力し合って、助け合って、子どもたちの被ばくを防ぐ必要があると思います。

チェルノブイリ原発事故を体験したウクライナの基準である「年間1ミリシーベルト」以上の放射能汚染地から今すぐ避難することが難しい場合でも、子どもたちに対して、より影響が大きい飲食による内部被曝だけでも避ける必要があります。

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★皆さんに知っておいてほしいことは、年齢によって放射能の影響(感受性)がまったく違うということです。ジョン.W.ゴフマン教授の「年齢別に見た1万人・シーベルト当たり発生するガン死者数」というグラフがありますが、「1万人・シーベルト」を説明すると、「1万人が1シーベルト被ばくする」あるいは、「10万人が0.1シーベルト(100ミリシーベルト)」あるいは、「100万人が0.01シーベルト(10ミリシーベルト)」被ばくすると何人がガンで死ぬかというグラフです。ビックリするほど年齢によって違いがあります。

例えば、30歳が0.1シーベルト(100ミリシーベルト)被ばくすると10万人のうち389人がガンで死ぬのに比べて、55歳では4.9人しか死なない。そして、0歳では、なんと1517人も亡くなる。つまり、0歳は55歳の309倍も多く亡くなることになります。ですから私は、特に10歳くらいまでの子どもたちには、できるだけ被曝を少なくしないといけないと考えています。

参考:中村隆市10/21ブログウクライナ「年間1ミリシーベルト以下」 山下教授「100ミリまで安全」

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★私(中村)の考え

チェルノブイリの医療支援(特に子どもたちの支援)に関わり、92年から何度もベラルーシやウクライナの病院に医療機器や薬を届けてきました。ベラルーシの放射能汚染が少ない地域に保養所(サナトリウム)をつくって、汚染のない食物を子どもたちに食べてもらう「転地療養」に取り組んだり、日本から寄贈した移動検診車で、日本人医師と放射能汚染地の病院を訪問して、現地の医師と共に検診活動もしてきました。そうした病院や放射能汚染地では、病気に苦しむ子どもたちをたくさん見てきました。そして、子どもを亡くした親たちの嘆きや悲しみにも接してきました。

また、お医者さんや研究者から様々な病気が増えているという話を聞き、データの一部をもらいました。原発事故以前と比べて、ガン、糖尿病、呼吸器系、消化器系の病気、血液の病気、先天性障害などがそれぞれ数倍に増えていました。

彼らはチェルノブイリ原発事故の影響は甲状腺ガンだけしか認めていないIAEA(国際原子力機関)などの国際機関に憤慨していました。

放射能で汚染された地域に住み続け、汚染された食物を食べ続けた子どもたちはほとんどが何らかの病気を抱えていました。ガンなどの大きな病気だけでなく、免疫力が低下し、あらゆる病気が増えていました。

ベラルーシで聞いた言葉が、今も心に残っています。「放射能というものは、その被害がすぐに現れないということ。見えない、臭わない、触れない、人間の五感で感じられないということ。そのため、放射能を軽く考えてしまって、被ばく量を多くしてしまった。放射能の本当の怖さは、数年たってから分かってくる」・・・この言葉を私たちは肝に銘じておく必要があると思います。

ウクライナ政府が法律で決めた「被曝量を年間1ミリシーベルト以下」にすること。つまり、日本の原発事故以前の基 準値1ミリシーベルトを超える地域の子どもたちが避難できるように政府や自治体はサポートするべきです。これは、福島県だけに限りません。

また、今後は、外部被曝だけでなく内部被曝が大きな問題になってきます。食物や飲み物を通して日本全国に放射能が広がっていきます。行政は、少なくとも子どもたちだけには、汚染のない食べ物を食べられるように徹底した対策を立てるべきです。

胎児、乳幼児、児童、生徒の健康、生命を守るためには、「疎開」「避難」「移住」先を確保したり、莫大な補償金が必要になってきます。しかし、どんな困難があろうとも最優先で守るべきは「子どもたちの命」です。

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Q,これから中村さんがやろうとしていること、若い世代に望むことなど聞かせて下さい。

A,ウィンドファームでは、これまでの「チェルノブイリ支援」から「フクシマ支援」に移行しているところです。福島から避難したくても避難できない人たちの内部被曝を少しでも減らすために、九州の野菜や米を福島に送る取り組みを進めていますが、その中で、放射能に最も弱い乳幼児を一人でも多く救うために、保育園、幼稚園に野菜や米を送って、園で給食に使ってもらうのと、園児のお母さんたちにも野菜を送ることを準備中です。また、関東からも九州の野菜を送ってほしいというお母さんたちの要望がきているので、それができる体制作りをすすめています。

原発の様々な問題を抱え、福島第一原発の取り返しのつかない大事故を起こしながら、「経済のためには、原発をやめるわけにはいかない」と発言する財界の幹部や政治家がたくさんいます。外国に原発を売っていく姿勢も変わっていません。彼らを見ていて、世の中の2つの流れがハッキリ見えてきました。一つの流れは、今まで通りに「自分たちの利益」だけを求め続ける人々。もう一つの流れは、自分の会社だけ、日本だけ、人間だけ、現代だけでなく「みんなの幸せ」を考える人々です。

質問をしてくれた若い人たちや若い世代が、「みんなの幸せ」を考えて、新しい社会をつくるという壮大な夢にチャレンジすることに私は期待しています。その夢は、人生をかけるだけの価値があると思います。そんな若い人たちの仲間に私も加わりたいと思っています。

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