気候変動か、社会システムの転換か?<4> by ローカル・フューチャーズ

2016年02月05日

辻 信一

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Climate change or system change? 
気候変動か、社会システムの転換か?
by ローカル・フューチャーズ


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2015年12月に合意された「パリ協定」についてどう考えるか、ローカリゼーション運動をけん引する『懐かしい未来』著者、ヘレナ・ノーバーグ=ホッジを先頭とする「ローカルフューチャー」が声明を発しました。ヘレナさんたちの「ビッグ・ピクチャー」論にもとづく視点はとても重要で、日本にも広げる必要があると思い、ナマケモノ有志で翻訳しました。辻信一さんの監修を経て、連載方式で紹介しています!
>>原文(英語)で読みたい方はこちら。
http://www.localfutures.org/after-paris-climate-change-or-system-change/

ともに国際的な「グローバルからローカルへ」運動を担う仲間として、そのリーダーたちから届いたこの宣言に学び、それをシェアし、これからの運動の指針としたい。辻信一


グローバルからローカルへの方向転換は、気候変動に対する最も効果的な答えであるだけではありません。同時に、私たちが直面している社会、環境、経済などの諸問題に応えるものでもあります。だからこそ、「ローカル・シフト」は、様々な分野にわたる多様な運動を横に繋ぐことができます。北と南、左と右、経済と環境、都会と田舎というふうに、これまで分断されてきた人々が連帯する。そうすれば、これまでよりずっと強力な運動が生まれるはずです。

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グローバルからローカルへの転換

気候変動という問題に効果的に対処するためには、政府が「グローバリゼーション」にお金をつぎ込むことをやめ、その代わりに、「ローカリゼーション」に力を注ぐことが重要になります。ローカリゼーション、あるいは「ローカル化」とは何か。それは、コミュニティー、地方、国がもっと自立して、それぞれの役割をよりよく果たせるように、経済を「脱集権化」するプロセスです。とはいえ、すべてのコミュニティーが完全に自立するべきだと言っているのではありません。ただ可能な限り、生産者と消費者の距離を縮め、地元の市場とますます独占的になっている世界市場との間のバランスをつくりだそう、というのです。具体的に言えば、もっとコミュニティー農園を、もっと直売所やファーマーズ・マーケットを、もっと地域に根ざした店を、もっと地域による地域のための融資や投資を、ということです。

私たちの提唱する「ローカリゼーション」とは、寒冷地に住む人々がオレンジやアボガドを食べられなくなるという意味ではありません。小麦やお米やミルクといった基本的な食料が、半径80キロ圏内で生産できるのに、わざわざ何千キロもの距離を旅することがないようにしようというのです。全ての長距離の取引を廃止しようというのではなく、ローカルへと方向性を変えることで、不必要な輸送を削減しよう、というのです。その方向転換によって、地域の経済を、そして国の経済を、しなやかさと多様性に富むものに変えることができるのです。結局のところ、何を生産し、何を貿易に頼るのかが地域ごとに違うのは当然です。
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ローカル化がよい連鎖をつくり出す

住民の基本的なニーズを地域内で生産する「地産地消」を促すことで、ローカル化は輸送・梱包・加工を減らし、同じ物が行ったり来たりするような無駄な貿易をなくしていくのです。そしてそれらすべてが炭素排出量を減らすことにも通じます。経済規模を地域へと縮小することで、ローカル化はグローバル企業や銀行の支配力を削ぎ、民主主義の衰退に歯止めをかけることができる。不必要で無駄な消費の原因である「経済成長至上主義」のプレッシャーを減らすことにもつながります。

また、ローカル化は“南”諸国の人々の生活の質を向上させるでしょう。そもそもこれらの国々における貧困とは何でしょうか。それは次のような連鎖の結果だったのです。何世紀にもおよぶ植民地主義→開発という名の新しい植民地主義→債務の増大→輸出のための生産→地域経済の解体。

このようなやり方を続けても、大多数の人々の暮らしは改善されません。必要なのは、自立、食料主権、そして資源をグローバル企業から守る権利を強化することです。また、“北”の先進諸国がたどってきたエネルギー政策をまねしようとしても、それで大多数の人々が恩恵をこうむることもないでしょう。先進国のようなエネルギー・インフラをこれから開発するコストを考えれば、むしろ分散型の再生可能エネルギー・インフラに投資した方が、より経済的だし、環境負荷も少なくてすみます。

“南”の人々にとって、自国にグローバル企業を迎え入れるのにどんな利点があるでしょう。地域の自然環境が汚染され、温室効果ガスの排出が増えて、気候変動が悪化するばかりです。

Photo: Audrey Woon

Photo: Audrey Woon


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変化のために手をつなごう

グローバルからローカルへの方向転換は、気候変動に対する最も効果的な答えであるだけではありません。同時に、私たちが直面している社会、環境、経済などの諸問題に応えるものでもあります。だからこそ、「ローカル・シフト」は、様々な分野にわたる多様な運動を横に繋ぐことができます。北と南、左と右、経済と環境、都会と田舎というふうに、これまで分断されてきた人々が連帯する。そうすれば、これまでよりずっと強力な運動が生まれるはずです。それはきっと、企業や銀行が支配する事実上の“世界政府”を覆すことさえできるはずです。

幸い、こうした方向への動きはすでに始まっています。例えば、ナオミ・クラインの著書『This Changes Everything (これですべてが変わる)』には、新自由主義経済政策がいかに気候変動問題と密接な関係にあるかが明らかにされています。多くの団体や活動家—―特に「ニュー・エコノミー・ムーブメント」に関わる人々―—は、これまでのシングル・イシューに集中するやり方を脱して、問題のホリスティックな構造をとらえた運動へと向かい始めています。中でも頼もしいのは、世界規模のローカリゼーション運動の登場です。ローカルフードを先頭にして、ローカル化を目指す運動は指数関数的に急増しています。変化の種はすでに蒔かれている。ですから、もし政府や自治体を動かして、貿易や融資の再規制に取り組ませることができれば、その種は成長し、花開き、さらに広がっていくでしょう。

今世界中で、政治に対する民衆からの圧力が強まっています。確かに、課題はあまりに大きく見えるかもしれない。しかしそれを成し遂げるのは、不可能ではありません。グローバル化を躍起になって進めているのは、世界人口の1%にも満たない人々—―グローバル市場で大儲けをしている人たち―—です。残りの99%には大転換の準備ができているのです。

これは単なる気候の話ではありません。私たちみんなの生活、健康、そして子どもたちの未来のことなのです。
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発想を転換しよう

では具体的に、グローバルからローカルヘのシフトのために何ができるでしょう? 特に大事なのは、横へとつながる思考法と行動を身につけることです。つまり、これまで様々な運動を隔てていた従来の境界線を越えて、より広くつながり合って、大きな連合体をつくり出す。そのために自分たち自身の発想を転換しなければなりません。

すべての社会問題や環境問題の背後には、グローバル経済という根本的な原因が横たわっています。あなたの主な関心が、気候変動であるか、動物福祉であるか、核兵器であるか、あるいは貧困や失業問題にあるかに関わらず、問題の本質は同じなのです。誰が問題を引き起こし、利益を得ているか、に変わりはありません。自然環境についてはどうでしょう。自然を守るために何ができるのか。ロバート・ケネディーも言ったように、そもそも経済成長を追い求める従来の経済には、“本当に大切な価値”が勘定に入れられていないのです。とすれば、これまでと全く違う種類の経済を私たちは育てていかなければなりません。無限の成長やほんの少数の利益を追い求める経済の代わりに、母なる地球とそこに暮らす全ての人々が健やかで幸せであるような、永続的な経済を。

●学び直しの運動
すぐに結果に結びつくような活動に取り組みたいと思うのは、自然なことです。でも、そこで深呼吸して、考えてみてください。私たちは世界の仕組みそのものを変えるような変革運動を創ろうとしているのです。そのためにはあなたの考えと共鳴する“クリティカル・マス”、つまり大転換を起すのに足る人々が必要なのです。そのためには私たち自身の学び直しが必要です。“経済”の名の下に何が起こっているのか、そしてそれに代わる“もう一つの経済”はどのようなものであるべきか。本、ウェブサイト、記事や論文、映像などを共有したり、勉強会を開いたりしながら、様々な関心をもつ人々がつながって、学びの輪を広げていくのです。

●抵抗
経済のグローバル化に抵抗する“大合唱”に、あなた自身の“歌声”をもって参加しましょう。様々な方法があります。嘆願書やキャンペーンに署名したり、メディアに投書したり、自分の選挙区から選ばれた政治家に意見やメッセージを送ったり…。例えば、こう主張するのです。自由貿易協定などを推進する政府に反対すべきこと、これ以上企業への規制を緩めないこと、そして無国籍化する企業を地場産業へと引き戻し、再び一国の法と税制の下に従わせること…。

●地域の再生
仲間と一緒に、コミュニティーのため、そして地球のためになる取り組みを始めましょう。特に大切なのが、「食」です。例えば、ファーマーズ・マーケットやマルシェなどの直売市場(いちば)、地域独自の食の協同組合、コミュニティー農園…。農耕とものづくりのための道具・器具を修理する場、作物の種子を保存し共有するためのシード・バンクなどを地域に立ち上げる。エネルギー自給や新しい地域財政を目指す動きを支援する。地元の自治体に公共の交通手段、自転車専用の道路やレーン、そして歩行者専用の道を作るよう、圧力をかけましょう。

●ローカリゼーションのための国際提携(IAL)
ローカリゼーションを世界的に展開する新しい国際ムーブメントに、あなたもぜひ参加してください。それは、真の発展のヴィジョンを目指す思想家や活動家たちの多文化ネットワークです。
http://www.localfutures.org/international- alliance-for-localization-member-sign-up/
さあ、共にこの世界を変えるために立ち上がりましょう。

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NPO「ローカル・フューチャー」について:
ローカル・フューチャーは、文化多様性と生物多様性の再生、そして、世界中の地域コミュニティーとそのローカル経済の強化のために活動しているNPO。それは、個別の分野ごとにバラバラだった従来の運動のやり方を超える包括的な運動を目指す。その軸は、私たちの暮らしを左右してきた根本的な仕組みを理解するための再教育にある。
www.localfutures.org
info★localfutures.org(★を@に変えて)

翻訳監修:辻信一
翻訳チーム:宇野真介、中久保慎一、和田彩子
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