「かたりべからす」あとがき ウチダゴウ

2014年12月08日

その他

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『かたりべからす』あとがき
ウチダゴウぼくは、何をするにも、みんなより少し時間のかかる子どもでした。
算数の応用問題は基本に立ち返らないとわからない。ひとつひとつ書きたいことを箇条書きにしてから作文を書く。一度風邪を引けば、数日寝込まないと治らない。大好きな女の子との別れをずるずると引きずる。そんな自分を変えたいという気持ちもあったし、そのための努力もしました。でも、あるとき、そういう営みから、一歩身を引きました。これはしかたのないこと。ぼくは、こういうぼくと生きなければならない。そう思ったんです。

しかたがないなあ、もう、と言いながら、ずっと一緒にやっていくこと。

社会も、世界も、人間も、どうしようもないことをたくさんやらかします。それらをひとつひとつ手で掬って見つめていると、どうしようもなく悲しくなってきます。こんなもの、いっそ、消えてしまえばいい。暴れたくなることもあります。

しかたがないなあ、もう。

ぼくはそんなとき、そう言って、そのどうしようもないものと付き合うことにします。どうしようもないものに背を向けたくなる自分のどうしようもなさとも、付き合うことにします。夕暮れの河川敷に座って、どうしようもなく、ただ過ごす。無理矢理励ましたりはしません。もう少し絶望していたい雰囲気なら、ちゃんと絶望します。
すると、ちょっとだけ不思議なことが起こります。さっきまで硬くて冷たくて憎らしかったどうしようもないものが、じわんと柔らかくなって温もりを放つのです。その温もりの、なんとまあ愛らしいこと。いいよいいよ、ゆっくりやろうぜ。お前もぼくもホントどうしようもないなあ。しかたがないなあ、もうしばらく、付き合ってやるよ。

社会も、世界も、人間も、どうしようもないことをたくさんやらかします。悲しくて、切なくて、悔しくて、虚しくて、やりきれない日々がつづきます。それでも、ぼくはもう少し、かれらと付き合うことにします。どうしようもないものに背を向けたくなる自分のどうしようもなさとも、もう少し付き合うことにします。どうしようもないものがじわんと放つあの温もりが、それを愛らしいと思えるぼくを、どうにも捨て切れないから。

しかたがないなあ、もう、と言いながら、ずっと一緒にやっていくこと。
どうです?みなさんも一緒に、しかたがないなあ、もう、でいきませんか。

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