コラム一覧

2014年08月15日

真なること・善きこと・美しきこと

辻 信一

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真なること・善きこと・美しきこと

byサティシュ・クマール(『リサージェンス』2014年5・6月号巻頭言より、翻訳:辻信一)

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わが「リサージェンス&エコロジスト」誌の目標は、真なること(Truth)、善きこと(Goodness)、美しさ(Beauty)を実践し、追求し、広めることです。古代ギリシャ文明の昔から続くこの真・善・美という三位一体こそが、本誌が拠って立つ土台と言えます。本誌に掲載する論文や評論、詩や絵画を選ぶ時、私たちは自問します。それは果たして真・善・美の基準をクリアしているか、と。それは真実を伝えているか。それは、読者たちに善をなすか。それはバランス感と調和を体現しているか、つまり、それは美しいか・・・。こう問いながら、私たちは真・善・美の基準にできるだけ寄り添おうとしているわけです。

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2014年07月07日

ポスト3・11 時代のためのヴァンダナ・シヴァ

辻 信一

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(DVDブック「ヴァンダナ・シヴァの いのちの種を抱きしめて」あとがき)

■ポスト3・11 時代のためのヴァンダナ・シヴァ
辻 信一

ヴァンダナ・シヴァという人物の存在そのものが、現代史の最重要事件の一つだとぼくは思っている。念願かなって、そのヴァンダナをこうしてDVDシリーズ「アジアの叡智」に迎えることができた。 彼女はここで、刻々と進行する危機の時代がぼくたちに突きつけている一連の深い問いに、明快な答えを出してくれている。

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 ぼくたち日本人はあの3・11東日本大震災とそれに続く福島原発事故で、人類が生存していくために、これだけは最低限必要だという条件 ―― 英語で言う ボトムライン ―― は何か、という問いをつきつけられたはずだ。そしてその答えは、幼い子どもをもつ親たちが震災後に抱いた祈りのような願いの中に表現されていたのだと思う。 「神さま、もう贅沢は言いません。どうかこの子に、汚れていないきれいな空気と水と食べものを与えてください」

 ボトムライン とは何よりもまずこの空気や水や食べもの。それらを求めて、多くの人々が放射能汚染地域からより安全な場所へと避難した。その一方で、高線量地域にいまだに幼い子どもたちを含む多くの人々が暮らし続けている。 想定外というそらぞらしい言葉が飛びかった。外部性という好都合な言葉をもつ現代経済学の専門家たちも、水や空気や土や太陽エネルギーや生物多様性といった生物の生存に欠かせないボトムラインを、そっくり想定外に置いていいことにしている。

今もなお流出し続ける大量の高濃度放射能汚染水も経済の指標には全く影響を与えない。置き場所もない放射性廃棄物を大量に抱えながら、その上にあれほどの事故を起こしながら、東京電力とそれを支える政財界は、いまだに、経済成長とグローバル競争のためには原発推進しかありえないと主張し続ける。水が汚染されて、ペットボトルの水が売れ、空気が汚れれば空気清浄機が売れる。それは経済にとってはいいニュースなのだ。

この国ばかりではない。世界中で、経済と政治を牛耳る人々にとってのボトムラインは、お金だ。彼らにとって自然も人間も資源にしかすぎず、お金という富を増やすための材料や道具にすぎない。 だから、日本の政財界のように、農・林・水産といった分野を、GDPの数字の上では取るに足らないものとして切り捨て、TPPなどを通じて、グローバル企業のための規制緩和と独占を推進しようとする。花咲かせ実をつける木ではなく、金のなる木に群がるのだ。

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アメリカ先住民の長老からこんな言葉が伝えられている。「人間が最後の木を伐る時、最後の川を汚す時、最後の魚を食べる時、人間はやっと気づくだろう、お金は食べられないということに」
この予言のような言葉が、ますます現実味を帯びる危機の時代にぼくたちは生きている。そしてそれは、人類がこの窮地を脱するための道を照らし出すヴァンダナ・シヴァの言葉が、ますます輝きを増す時代でもある。

ヴァンダナは、今世界に起こりつつある価値の大転換 ―― お金を中心とする世界観から、いのちを中心とする世界観へ ―― を代表する思想家だ。科学者として、活動家として、世界市場の制覇へとつき進むグローバル大企業にとっての、最も手ごわい宿敵だ。そして、かつては分断支配されていた世界中の被抑圧者たちを結びつけ、「もう一つの世界」へと導く指導者でもある。

この深まりゆく危機の時代に、ヴァンダナ・シヴァの言葉ほどぼくの耳に頼もしく響くものはない。 来るべき時代の創り手となる方々がその言葉にじっと耳を傾けてくれますように。

2014 年春

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2014年06月25日

GMか、それともGMのない世界か?ーー遺伝子組み換えは反進化である

辻 信一

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GMか、それともGMのない世界か?ーー遺伝子組み換えは反進化である
サティシュ・クマール
(『リサージェンス』2013年9-10月号より。翻訳:辻信一)

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最近のスピーチでイギリスの環境大臣オーウェン・パターソン氏は、農民たちに遺伝子組み換え(GM)種子を使った農業を推奨しました。我らが環境大臣は、モンサント社とともに、世界中が遺伝子組み換え食品を育てることこそが現代的であり、進歩や科学の名に値するというのです。
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2014年04月22日

スモール・イズ・ビッグ――小さいことこそが偉大なのだ ヴァンダナ・シヴァ

辻 信一
スモール・イズ・ビッグ――小さいことこそが偉大なのだ
ヴァンダナ・シヴァ
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(『Resurgence』2014年3月・4月号より:辻信一 訳)
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巨大主義(ジャイガンティズム)にとり憑かれたこの時代、我々は「ビッグ・イズ・ビッグ(大きいことが偉大だ)」という幻想の下に生きてきた。つまり、大きいことがより多くの生産を意味し、より強大な力を意味する、と。より広大な農場、大規模なダム、そして巨大な企業なしに、食料や水といった人類のニーズはまかなえないと、信じられてきた。事実、大企業はますます巨大化し、今ではたった5つの企業が種子と食物と水の供給元として世界に君臨している。

にもかかわらず、事実とは、生態学的にも、経済学的にも、政治学的にも、「スモール・イズ・ビッグ」、つまり小さいことこそが偉大なのである。
 まず生態学的には、一粒の小さな種の中に、大きな木の可能性が生きていることを、私たちは知っている。また同じ一粒に、何千、何万の種を生み出す力が潜んでいることを。その何千、何万粒のそれぞれが、また何千、何万を生み出す力を秘めていることを。「豊かさ」とはまさにこのことだ。だからインドの農民たちは種まきしながら、「この種が尽きませんように」と祈るのだ。
 しかし、豊かさの根源であるその種子を、巨大企業が知的所有権を通じて専有したり、ターミネーター技術によって次世代の種を生み出せないようにつくり変えたりする。種子をつくらない種子! 大企業の願いはこうだ、「この種が尽き、わが社の利益が尽きませんように」
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2014年03月04日

『弱さの思想~たそがれを抱きしめる』(辻信一+高橋源一郎、大月書店)はじめに

辻 信一

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はじめに

 本書のもとになったのは、ぼくと高橋源一郎さんとが共に務めている明治学院大学国際学部で、二〇一〇年から一三年にかけて行われた「弱さの研究」というささやかな共同研究である。ことのはじめは二〇〇九年の春、大学でのとあるパーティの場で隣り合わせたぼくたちのとりとめのない会話が、なぜか、あっという間に共同研究の話へと発展した。それまでは高橋さんと何か記憶に残るような会話を交わしたという記憶もないのだが。それにしても不思議な縁のありようだったとぼくには思えるのだ。自分が経験したばかりの個人的な危機を、興奮を抑えきれないというように―どちらかと言えば朗らかに―語る高橋さんの姿が忘れられない。
 その辺の事情については本文の中で、彼自身から語ってもらうことになる。ここでは、高橋さんとの共同研究を始める以前から、ぼくがどのようにして「弱さ」というテーマと自分なりにつき合ってきたか、そしてそれが、環境運動家としての、文化人類学者としてのぼくにとってどういう意味をもっていたか、振り返っておくことにしたい。
(さらに…)

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